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第504話 シャーロットvsバオムヴォレ

 モッさんと雑談しているとシャーロット達が戻って来る。

 戻って来た時、俺だけじゃなくモッさんまでいる事は予想済みだったのか、特に反応は無かった。

 せいぜいアレク君あたりがビクッってしたぐらいか。


 とにかくごく普通に合流を果たした。

 モッさんもお花摘みの言い訳には特に疑問を持った様子もなく、懸念していたバックドアの事はバレていない様だ。


「で、モッさんはいつまで付いてくるつもりだ?」

「おいおい、ここまで来てそりゃねぇだろ?」


 まぁ確かに、ここまで来たら乗り掛かった舟ってヤツだろう。

 だが舟にだって人数制限はある。

 そう、ここは「悪いなの〇太。このゲーム、三人までなんだ」をするチャンスだ。

 というか、マジでモッさんがいるとバックドアが使えなくて不便なのだ。

 先程のトイレタイムでその事を実感した。


 なので是非ともモッさんにはお帰り頂きたく。

 とはいえモッさんが「はいそうですか」と素直に帰るとも思えない。

 多少は世話になった手前、追い立てるように返すのも気まずい。

 なんとか穏便に帰ってもらいたいものだが、どうしたものやら。


 置き去り作戦は先程やって失敗した。

 バックドアで用足しなどせず、もっと離れていれば追って来れなかったかもしれないのは今更か。

 いや、これでもソコソコ引き離した後、バックドアを出したつもりだ。

 たぶんモッさんもアレク君みたいに追跡術が使えるようだ。

 一度やってしまった以上、モッさんにも警戒されているだろうし、やるだけ無駄だろう。


 カスターニエが出現したことを報告するため、モッさんには村に戻ってもらう、というのも弱い。

 モッさんが一人で戻る必要は無い筈だし、討伐も完了しているため重要度は低いからだ。


 実は若木の探索は建前で、本当はひとつなぎの大秘宝を探しているんだ、とでも言ってみるか?

 むしろそっちの方が興味を持たれそうか。

 モッさんが「海賊王に俺はなる!」とか言い出したら、そのまま海に流そう。


 特に名案が浮かぶこともなく、再びモッさんがバオムヴォレを見つけ出す。


「ふむ……今回は私に任せてもらおうか」

「お、いいぜ。やってみろ」


 シャーロットが巾着袋を片手にしゃしゃり出る。

 何をするつもりだ? と問い質すまでもない。

 モッさんの戦い方に興味を持ち、自分もやってみたくなっただけだろう。


 だがシャーロットが近づいた途端、雪が降り積もったように白かったバオムヴォレが、一瞬にしてその雪を落とす。

 それはまるで身ぐるみ全部渡すので見逃してください、と言わんばかりの光景だった。

 さすがは元魔王様、といった所か。


 シャーロットしてもどうしたらいいのか戸惑っていたようだが、それがバオムヴォレには「もっと寄こせ」に見えたのだろうか。

 モリモリと雪のような綿を実らせては落とすを繰り返すようになった。

 それはまるでATMから貯金を全額引き出してまで命乞いするいじめられっ子のごとき光景だった。


 やがて力が尽きたのか、綿を実らせることが出来なくなるバオムヴォレ。

 戸惑ったままのシャーロットは一歩も動けない。

 その姿に「まだまだ出せるだろ?」とでも感じたのか、今度は根っこの部分がウネウネと動き始める。


「おい、嬢ちゃん。アレはヤベェ。すぐに戻ってこい!」


 モッさんの焦ったような指示が飛ぶ。

 ようやく、どうするべきかを理解したシャーロットは、すぐさま俺達のところに戻って来た。


「モッさん、アレってそんなにヤバいのか?」

「あぁ、アレはバオムヴォレの最後の手段ともいうべき……『とうそう』だ」

「闘争? 本気の戦闘モードにでもなるのか?」

「いや、逃げる方の『逃走』だ。滅多に移動しない筈のバオムヴォレが、ああやって逃げ出すってことは、死ぬ寸前まで追い詰められてる時だ。これ以上追い詰めたらマジで死ぬ……もちろんバオムヴォレの方がな」


 見つめただけで死ぬ寸前まで追い詰めたのか。

 シャーロットさん、やり過ぎ!

 まぁ、本人としては特に考えず、ただ近付いただけなんだろうけどな。

 事情を聴いて何故かショックを受けてるし。


 ちなみにバオムヴォレが落とした綿はモッさんが手早く回収してくれた。

 助かりはするが、感謝はしない。

 なぜなら綿を回収する際、モッさんは自身のマジックバッグで回収していたのを、俺の概観視はバッチリ捉えていたのだ。

 綿はかなりの量があるとはいえ、自身のマジックバッグを使う理由にはならない。

 きっと何割かはちょろまかしているに違いない。

 シャーロットはその辺は結構大雑把な所があるので、気付いても気に留めないだろうがな。

 いや、いまだショックから立ち直れていないシャーロットは、気付いてもいない可能性すらありそうだ。


 回収した綿をシャーロットに渡したモッさんは、更なる獲物を求め森の奥へと進む。

 案内が的確なのか、さほど歩かずとも次のバオムヴォレを見つけると、何故か一人づつタイマンさせられた。

 ショックから立ち直ったシャーロット曰く「これは防御の訓練に良さそうだ」らしい。

 なぜ実戦中に訓練する必要があるのか問い詰めてみたい。

 しかも矢面に立たされる俺達を見て、羨ましそうな顔までしている。

 そんなに羨ましなら、俺と代わってもいいんだぜ?

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