表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
492/1407

第492話 同行拒否

「なぁー、一緒にいこうぜ? な? な?」

「だから、嫌だって言ってんだろ! お前はお前の仕事をすればいいだろうが!」

「それが終わっちまったから言ってるんだよー。このまま戻ったんじゃ物足りなくってさー」

「知らんがな! 素直に帰って、新しい仕事を見つければいいだろ」

「戻ってもトレントの若木みたいな面白そうな依頼。簡単には出てこないんだよー」


 うぜぇ! 酔っ払いほどタチの悪い人種はいないとは正にこの事だ。

 断って断ってもしつこく一緒にいこうとしたがる。

 トレントの若木探索のドコに、ヤツの琴線に触れる要素があったというのだろうか?


 謎ではあるが、かといって同行を許可する訳にもいかない。

 部外者のコイツが一緒に来る事になれば、飛空艇やバックドアは使えない。

 ガロンさん達とコイツでは信用度は天と地ほどあるからだ。

 一度世話になったとはいえ、ほぼ初対面の奴の目の前で使う程、考え無しではないのだ。


「俺は役に立つぜー? 嬢ちゃんにバオムヴォレの事は話しちまったが、聞くのと見るのじゃ大違いだからな。実際行った事のあるヤツの案内があった方がいいと思うぜ?」


 うっ……確かにそれは正論だ。

 場所を聞いただけでキチンと辿り着けるのか? と聞かれれば怪しいだろう。

 これから行く森は初めて行く森であり、当然土地勘など無い。

 しかも案内する奴がシャーロットでは不安しかない。


「だ、だがモトルナサンにだって仲間がいるだろ? ソイツ等はどうする気だ?」


 そうだ。パーティーを組んでいるなら仲間だっている筈。

 仕事は終わってるとしても、勝手に離れるわけにはいかないだろう。

 これならコイツも諦める筈だ。


 逆にパーティーごと一緒にいくとか言い出したら、人数が多すぎるとか言って断ればいい。

 この森の歩きやすさは分からないが、十人近い団体が行動するのに向いているとも思えないからな。


「仲間? あぁ、それなら大丈夫。俺はソロなんで、仲間の心配はいらない。安心してくれ」

「なんだ、ボッチか」

「ボッチ? 一人ボッチの事か。ちげーよ。俺様は一匹狼なんだよ」

「言い方が違うだけだろ」

「ちげぇねぇ」


 少し遠くを見るような目でコップをあおるモトルナサン。

 昔の仲間の事でも思い出しているのだろうか。


 ふと、俺もいつか一人ボッチなり、シャーロット達の事をこんな風に思い出したりする日が来るのだろうか。

 そんな未来予想図をモトルナサンの中に見てしまう。


「まぁ俺の事はどうでもいいじゃねぇか。それより明日はいつ頃出発するんだ? おススメは夜明け前だな。バオムヴォレ共も寝てる場合が多い。ただ夜行性の魔物が現れるときがあるから注意は必要だ」

「朝早いのはなぁ……って、なんでそんな話になる? お前とは一緒にいかないって言ってるだろ」

「ちっ、バレたか。まぁ他にも手はある」


 どうすべ? コイツ、何が何でも付いてくるつもりっぽい。

 かといって同行を許してバックドアを封印するのもイヤだ。

 あの快適空間を知ってしまった以上、使わないなんであり得ない。


 ……ヤルか?


 おそらくコイツの事だから、明日出発する俺達の後を付いてくるだろう。

 堂々とかコッソリとかは分からんが、付いてくる事だけは間違いない。

 となると、やはりバックドアを見られるリスクが発生する。

 であれば採るべき選択肢は一つだけ。


 コイツが来れないようにしてしまえばいい。


 バオムヴォレの生息範囲がどの程度なのかは知らないが、後を付けられることなく森に入ってしまえば、追って来れないだろう。

 つまりそれまでコイツを足止めできる何かがあればいいワケだ。


 一番手っ取り早いのは、キュッと絞めて埋めてしまえばいい。

 これなら二度と追って来れない。

 というか来れるほうが怖い。

 いや、アンデッドとか居るような世界だと、埋めただけでは安心できないのか?

 となると燃やすか?


 ……も、モチロン冗談だよ?

 いくらウザいからって、さすがにそれはやり過ぎだ。

 人の命が軽い世界だとはいえ、俺までソレに染まりたいとは思わない。


 となれば第二案。ふんじばって見つからない所へしまっちゃう。

 いささか乱暴だが、アンデッドになるよりはマシだろう。

 まぁ多少恨みは買うかもしれないが、背に腹は代えられないしな。


 ……が、それを実行するには色々と準備が足りていない。

 ふんじばる為のロープとかが無いし、しまっとく場所もない。

 第一、ソロでバオムヴォレと戦えるようなヤツを、俺一人で縛り上げられるとも思えない。

 酔っ払いとはいえ相手は格上。襲い掛かったところで返り討ちにあうのがオチだろう。


 ハァ……これだけはやりたくなかったんだが、他に手はない以上、やらざるを得ない。

 幸い、と言っていいかは分からんが、金ならある。

 いくらでも、って程でもないがコイツを酔い潰せるぐらいは大丈夫だろう。

 俺の奢りだと酒を振る舞い、酔い潰し、寝坊させ、さらに二日酔いまで付ければ、俺達の後を付けようなんで思わない筈だ。


 俺の懐が痛むことになるが、コイツが付いて来なくなるのでハッピー。

 コイツは付いて行けなくなるが、その代わりタダ酒がのめるのでハッピー。

 win-winってやつだ。

 それとも三方一両損かな? 二人しかいないけど。


 一つ誤算があったとすれば、俺が「この前の礼として酒を奢るよ」といった途端、今度はコイツが「今日は俺の奢りだ! ジャンジャン飲んでくれ」とか言い出した事か。

 シャーロットのオハジキ無双で盛り上がってた食堂内は、これで一気に最高潮になった。

 さっそく樽を持ち出してくるヤツまでいたほどだ。


 ヤツは「俺の会計を立て替えてくれんだろ?」と、いけしゃあしゃあとしているが、どうしてくれよう?

 とりあえず一発殴っておくか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ