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第488話 テオガー到着

「見えてきたな」

「あぁ、あれがテオガーの村だろう」


 休憩を一度挟み更に馬車でひた走ること数時間。

 日が傾き始めた頃にはテオガーの村が見えてきたことで、ようやく人間の生活圏に戻ってこれたと、安堵のため息をつく。


 というか、正直馬車の旅をなめてた。

 あれほど頻繁にモンスターって現れるものなんだな。

 なるべく相手をしないように走っていたが、アレを一々相手していたら日が暮れても村には辿り着けなかっただろう。


 まぁ相手していたのはシャーロット達、遠隔攻撃が出来る奴等だけで、俺とアレク君は御者とその護衛しかしてなかったけどな。

 しかもアイツ等だけで蹴散らして、残りは通りすぎてたものだから、俺が出来ることはたまたま馬車に近付いてきた奴を盾で押し返す程度だった。


 一応、シャーロットの魔法で作った石を投げてはみたのだが、投げた石のサイズが野球ボール程度だったせいか、怯みはしてもダメージにはなっていないようだった。

 かといってベルが投げてたようなハンドボールサイズでは、ダメージ以前の問題で、当てることすら儘ならなかった。

 いや、正直に言おう。届くことすらなかったのだ。


 これは早急に飛び道具を手に入れるべきだろう。

 一番の理想はやはり銃だろうか?

 だがモデルガンレベルの知識しかない俺に、銃を作ることなど出来はしない。

 リボルバーぐらいなら何となくわかるが、肝心の火薬がサッパリだ。

 火『薬』というぐらいだから、シュリに聞けば分かるのだろうか?


 なにせ彼女は『薬学大全』というチートスキルの持ち主。

 その効果はありとあらゆる薬の作り方がわかるという、まさしくチート(イカサマ)なスキルなのだ。


「いくらショータさんでも、それだけは教えられないッス」

「そ、そうか」


 シュリの返事はバッサリだった。

 テオガーの村に近づいた辺りでアレク君と御者を交代した俺は、バックドアのリビングで寛いでいたシュリに火薬関係のことを聞いてみた結果が、先の返答であった。


「確かにあたしのスキルなら黒色火薬だろうと無煙火薬だろうと作り方ぐらいヨユーで分かるッスよ。でも、それを教えた結果、この世界がどうなっていくと思います? 魔物達だけに使うと、誰が保証できます? 人と人とで争ってるような連中に、近代兵器を与えたらどうなるか、なんて分かりきってるでしょ?」

「お、おう。そうだな。俺が悪かった。銃のことは忘れます。それでよろしいでしょうか?」

「すまないッスね。ショータさんにも譲れない何かがあるように、あたしにも譲れない何かがあるッスよ」


 俺が飛空艇にこだわるように、彼女も薬に関しては並々ならぬ思いがあるようだ。


「あっでも、病気やケガを治すクスリのレシピなら、いくらでも教えるッスよ」

「そうだな。機会があったら頼む」

「了解ッスー」


 ということで、ショータ君パワーアップ計画は初手で頓挫したワケだが、俺は諦めたりしない。

 シュリの協力が得られなかったため、近代兵器無双は諦めざるを得なかったが、まだ俺には魔法が残っている。


 そうだよ。せっかくファンタジーな世界にいるのに、なぜ近代兵器を使う必要がある?

 魔法のある世界なんだから、攻撃魔法を覚える方がずっと簡単だろうし、なによりカッコいい。

 いつか俺もカイザーフェ()ックス的な魔法を使ってみたいものだ。

 いや、せめてその前段階である「〆ラではない。〆ラゾーマだ」ぐらいはなんとか。


 シュリが「ショータさん。それ、逆ッス」とか言ってるが、何が逆なんだろうか?

 あぁ、そうか。男なら前段階程度で満足するのではなく、カイザーフェ()ックスを習得して見せろと、そう言いたいわけか。


「そうじゃないッス……気付いていないなら、どうでもいいッス」


 そうじゃない……そうか、むしろカイザーフェ()ックスを越える魔法を目指せってことか!?


 だがカイザーを越えるとなると、名前を何にするかが問題か。

 カイザーが確か皇帝とかそんな意味だったからな……となるとそれ以上の名前を冠さなくてはなるまい。


 皇帝の上……神様ぐらいしか思い付かないな。

 となると、俺の最強魔法は『ゴッドフェ()ックス』?

 なんかどっかの科学忍者隊が使ってそうだな。


 かといって『ゴッドバード』だとムー大陸ッポイしなぁ。

 いっそ『邪○炎殺黒龍波』は……ナシだな。

 さすがにそれはない。

 俺は中二病は卒業しているのだ。


 飛空艇は中二病じゃないのかって?

 違う違う。飛空艇はロマンに決まってるだろ?

 丸いサングラスをかけた飛行艇乗りだって、ロマンを求めてたしな。

 そういうことだ。


「ロマンは分かったッスから、さっさとバックドアをしまって宿に行くッスよ。でないとショータさんだけバックドアでの宿泊ッス」

「あぁ、分かった。すぐ行く」


 まぁ正直、村の宿レベルで俺の飛空艇の設備に敵うはずはないんだけどな。

 どうせアイツ等も、結局はバックドアに泊まるんだろうし。


「それは否定できないッス」

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