表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
487/1407

第487話 折り畳みテーブル

「なに? ショータってば折り畳みのテーブルが欲しいの?」

「ひょっとして持ってるのか?」

「持ってはいないけど、ベルなら作れるんじゃないかしら?」

「おお!」


 クレア達はウルザラ村出身。

 で、そのウルザラ村は林業中心の村であり、それゆえ樽などの木工製品も一部の家で作っている。

 実はベルの実家がその一部の家であり、彼女も簡単なものなら作れるらしい。

 以前買った創世神の木像だかも、その辺が影響しているのかね。


 チラッとベルを見ると、自分の名前が呼ばれたからだろう、丁度串焼きサンドを頬張ろうと大口を開けたところで一時停止している。

 さすがにその状態でお預けするのもアレなんで、先に食事を済ませることにした。 


「こんな感じのテーブルなんだけど作れるか?」

「……?」


 ガロンさん特製の串焼きサンドを堪能し終え、物足りない二人(シャーロットとベル)が世界一売れているカップ麺(しょうゆ味)を食べている間に、地面に俺の記憶にあるキャンプ用の折り畳みテーブルを描いてみる。

 絵心の無い俺でも、テーブルのアイソメ図(立体をナナメ上から見た絵)ぐらいは描けるのだ。


 その設計図とも呼べないただのイメージ図を、カップ麺をすすりながら眺めているベル。

 ちなみに麺をちゃんと啜れるのは俺、シュリ、ベルの三人だけで、シャーロットが時々むせながら啜れる程度で、クレアとアレク君に至ってはいまだモグモグ状態だ。


 ベルはジーっと折り畳みテーブルのイメージ図を眺めていたが、やがて力なくフルフルと首を横に振る。

 これは……ダメって事だろうか。


「……」

「この形状だと強度が足りてないらしいわ」

「……」

「ココとココ、あとこの辺に補強を入れれば何とかなるそうよ」

「……!」

「イスとテーブルが別々のモノは折り畳み式でもあるけど、一体型なんて初めて見た。是非作ってみたい! ってベルがこんなに意欲的なんて珍しいわね」


 どうやったら、あの「……!」がそんな長文になるのだろうか。

 毎度のことながら謎である。


「……!」

「ダメよ。いくら道具があったって、材料がないでしょ?」


 ベルが自分の荷物から大工道具らしき工具を取り出してくるのをいさめるクレア。

 いや、材料以前に移動してる途中なんだけど?

 たしかにバックドア内であれば、馬車の揺れの影響は無いし、一応ではあるが工房だって存在する。

 移動しながらでも十分加工は出来るだろう。


 でも、今すぐ作る必要はない。

 あくまで折り畳みテーブルは『あったらいいな』程度の代物であり、絶対に欲しいってワケではないのだ。


 地面に描かれたイメージ図を足でパッパッと消し、出発の準備にかかる。

 でないと休憩ポイント用として植えられたであろう木を、ベルが切り倒してしまいそうだからだ。

 なお、ベルがソレを諦めたのは、切り倒したばかりの生木でマトモな製品なんか出来ないと説得された為である。




 ガラガラと走るハマル号。

 御者は珍しいことに俺が務めている。

 まぁハマルは賢いし道なりに進むだけなので、偶にはと立候補した次第である。

 ぶっちゃけ、折角覚えた御者も、やってないと忘れそうだしな。


 なんとなく、こうして手綱を持って幌馬車を走らせていると、自分が西部劇に紛れ込んだ気になる。

 これで周りの風景が草原では無く荒野とかなら、もっと西部劇っぽくなるんだけどな。

 サボテンとかコロコロ転がってる草っぽいアレ(注:ダンブルウィードのこと)なんかあれば最高だろう。


 まぁ西部劇以前にファンタジーの世界に紛れ込んでるんだけどな。

 襲われるのもインディアンではなく、ゴブリンか狼の群れだろう。

 そのゴブリンはシャーロットの魔法でアッサリ蹴散らされていく。


 シャーロットは護衛だといって御者席に一緒に居るのだが、護衛というより俺が下手な操縦をしないか見張ってるのが正解だろう。

 時々、操縦に関してのアドバイスをくれる辺りが特に。


 そういえば、と少し気になってた事を尋ねてみる。

 先程、乗合馬車を襲う狼の群れを発見した彼女だが、どうやってソレを見つけたのか気になっていたのだ。

 あの時、シャーロットはバックドア内のリビングのコタツでゴロゴロしていた筈だ。

 なのに乗合馬車が襲われていたことを知る事が出来たのは、なにか秘密が有るに違いない。

 彼女の魔法やら能力に因るモノならともかく、飛空艇の機能であるなら俺も知っておきたい。


「その事か……」


 少し歯切れが悪い様子からすると、彼女の能力に因るモノなのだろうか。

 それだったら無理に聞いたりはしないのだが……。


「ちょっとな……タマコに芸を仕込んでみたのだ」

「芸?」

「あぁ……タマコにな、見張り台に居てもらって見張りをしてもらってたのだ。もしおかしなものを見つけたら、すぐ知らせるように言いつけてな」

「……」

「正直、私も不安だったのだが、見事タマコは期待に応えてくれたようだ」


 つまりお前は別の奴を身代わりにして、自分はのうのうとサボっていたと?


「サボっていたのではない! 部下に仕事を任せ、成果を自分の手柄にしたのだ!」


 それ、一番ダメな上司! あとタマコはお前の部下じゃねぇ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ