表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
481/1407

第481話 馬車具屋にて

「うーん……ウチじゃぁドレイク種用の馬車は扱ってないねぇ」

「そうですか」


 馬車を扱う馬車具屋さんに到着し、ハマルが背負えそうなドレイク種用の馬車があるか聞いてみたのだが、返って来た答えは予想通りのものだった。

 まぁダメ元で聞いてみただけだしな。

 在庫があっても値段が高いらしいので、買うかどうかは微妙な所だっただろう。


 ランドレイク自体この町では見かけないせいか、ドレイク種用の馬車は特注扱いになり、注文を受けてから作り始めるそうだ。

 当然、普通の馬車に比べると割高になるらしい。


 ただ作り手の手間としては、普通の馬車には車輪やら車軸やら必要なのに、ドレイク種用はその辺が要らない。

 せいぜいランドレイクの身体に固定するため、長いベルトが必要なぐらいか。

 なので生産数が同じぐらいなら、ドレイク種用の方が安くできるそうだ。

 たぶんドレイク車が多い町なら、ずっと安く手に入るそうだ。


 って、そんな事言われても、「じゃあそっちで買います」とはならないんじゃね?

 だって馬車が欲しいのは今スグであって、どっかの町にまで買い付けに行く時間などない。

 移動する手間や時間、費用を考えれば、普通の馬車に落ち着くと思う。


「だよね。じゃあ普通の馬車、見ます?」


 ここでNOと言える人っているのか?

 あぁドレイク車じゃないと通れないような道を行く人は、NOになるのか。

 もちろん俺達はYES。

 移動手段の誤魔化し用に買うだけだしね。


 店の裏手にある工房っぽい場所に案内されると、そこには一台の幌馬車が置いてあった。

 サイズとしてはギルドで借りた幌馬車と同程度。

 ただしこの馬車にはギルドのモノとは大きく異なる点がある。


「お、気付いたみたいだね。そうだよ、この馬車には板バネが使われているんだ」


 おーサスペンションだよ。サスペンション。

 俺の知ってるスプリングタイプとは違うけど、板バネだって立派なサスペンション機構だ。

 この馬車ならケツの痛みから解放される事、間違いなしだな。


「ただねぇ……その分、割高になるんだよ……」


 確かに高い。

 普通の馬車が二台買える、とまではいかないけど、それでも「普通のでいいんじゃないかな」と思う程度には高い。

 購入に足るだけの金はあるが、言い訳用としてみると宝の持ち腐れな気もする。


 かといって、これを機に馬車での旅に切り替える事も無いだろう。

 板バネ付きで多少は快適になったとしても、飛空艇の利便性や乗り心地を超える事などないからな。


 そもそも、バックドア内に籠っていれば板バネが有ろうと無かろうと関係ない。

 せいぜい、御者台に居るヤツの快適性が増す程度で、それならクッションなりをケツに敷けばいい。

 なんならフロードを使ったっていいぐらいだ。

 浮遊石を使ったホ〇ーボードもどきのフロードなら、ケツの痛みとは無縁でいられるだろう。

 魔石を消費するのが難点だが、それだって飛空艇の機能で充電――いや充魔か?――出来るしな。

 つまりワザワザ高い金出して板バネ付きの馬車を買う必要が無いのだ。


「ではどうする? ざっと見たところ、この店には他の馬車の在庫は無さそうだぞ?」

「そうなんだよなぁ……」


 工房には板バネ付き馬車が置かれているが、逆に言えばそれしか置いていない。

 それとも高価な板バネ付きだけここに置いて、他の完成品は別の場所に保管しているのだろうか?


 一応、聞いてみた。

 すると俺の予想通り、ノーマル馬車は倉庫に置いてあるらしい。

 最新モデルだけを店頭に置き、集客と技術力のアピールをしていたようだ。


「それでも高いなぁ」


 ノーマルな幌馬車(新車)でも金貨十枚。おおよそランペーロ五頭分だ。

 ポンと買うには高い。

 やはり中古かレンタルで済ませた方がいいのだろうか。


「そこで私の出番です」


 うぉ、ビックリした!

 一緒に付いて来た割りに、全く話に加わってなかったメルタさんが急にしゃしゃり出て来たぞ。


「しゃしゃり出たとは失礼な……馬車の購入にお悩み中のようでしたから、私から名案を提示させて頂こうかと」


 この人、自分で名案とか断言しちゃってるよ……どっかの乗り物に変形する総司令官の「私にいい考えがある」並みに怪しそうだ。


「ショータ様の世界には、変わった生き物がいるんですね」


 だから人のモノローグを読まないでいただけませんかね?


「すみません、ショータ様は分かり易いので、つい……」

「……そ、それより名案っていうのは?」

「ハイ。当ギルドでも、そろそろ馬車の買い替えの時期になってまして、その手配を私が務めることになっております」

「ハァ……」


 敏腕受付嬢ともなると、馬車の買い替えまで担当するようだ。


「その際、古くなった馬車は将来有望なパーティーに――」

「あげてるんですか?」

「いえ、格安で販売しております」


 有料かー。

 要はあれだろ? 古くなった馬車を、ギルドの新人パーティーに売りつけ、というか下取りに出してるって事だろ?

 って事は、今回のそのパーティーってのが俺達って事か?


「えぇ左様です。今なら何と、金貨二十枚で購入できますよ?」

「金貨二枚! そりゃ安い!」

「いえ、二十枚です。ショータ様、お耳が悪いようでしたら、腕の良い治療師を紹介しましょうか?」


 ワザとだよ! 真顔で突っ込んで来るなよ!

 大体、金貨二十枚って、普通に板バネ付き買った方が安いわ!


「二枚も二十枚も、大して変わらないでしょうに……」


 桁が一つ違うのは、十分大した事あると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ