第477話 クラン名の決め方
他の五人に意見を出させることで、俺の分を有耶無耶にしようとしたのだが、そんな小細工なんてお見通しよ! と言わんばかりにクレアのツッコミが入った。
だが俺だって、ボーっと五人の案を聞いていたわけでは無い。
五人分の案を聞いていれば、少しは思いつくものもある。
まぁ実際にはシャーロットを除いた四人分だけどな!
とにかく、時間稼ぎをしたことで思いついたのだ。
いや、思いだしたというべきだろうか。
あれはそう、シャーロットとのパーティーをギルドに申請した時の事だ。
あの時、パーティーに名前が必要と言われ、色々なパーティー名を出した。
最終的には『パレシャード』に決まった訳だが、没になった案の中にはクラン名に使っても良さそうなものもあった。
ただ俺の一押しとしては、やはり『シャーロット★団』だろう。
俺達五人の師匠であるシャーロットを前面に押し出した、師弟愛溢れるクラン名である。
もちろん名乗りの際には、六人揃って★っと右目に横ピースである。
もしくはシャーロットだけで横ピースも可。
その場合、残りの五人はシャーロットの両サイドに侍り、手をヒラヒラーっとさせると、一層彼女の魅力()が増すことだろう。
更にはギルドでも、受付のメルタさんに横ピースをやって頂く所存である。
いいとsh……ゲフンゲフン、もといベテランな彼女ならば、きっとノリノリでやってもらえるはずだ。
それを切っ掛けに、町いや国全体に★旋風が巻き起こり、やがて全ての挨拶に★が入るように……なったら、それはそれで嫌だなぁ。
そんな妄想はおくびにも出さず、俺は『白銀の旅団』を提案してみる。
決して『シャーロット★団』を思い出した瞬間、横にいるシャーロットが剥いていたオレンジをうっかり握りつぶしたからではない。
彼女がその気になれば俺のタマも同じ運命になるな、とか思ってもいない。
あぁ、いないとも。
一応クレアの要望にも沿っていたせいか、反応は悪くなかったとだけ記しておく。
さて、それぞれの意見が出そろった訳だが、この後どうやって絞り込んでいくかね。
多数決にしたのでは、既に二票獲得している『エチゴヤ』が優勢になってしまう。
かといって腕尽くでは野蛮すぎるし、そもそもリビングで暴れられても困る。
やはりここは五人でジャンケンだろうか?
いっそ全部混ぜて『エチゴヤソーマシュタ白銀黄昏旅団』とか?
めちゃめちゃ語呂悪いな。
なんというかこう……どれも悪くはないのだ。
よし、コレだ! って気になるものがないだけで、正直どれがクラン名となってもいい気もする。
ぶっちゃけクラン名の変更自体は、さほど面倒でも無いらしいしな。
ある程度名前が売れたあたりで変更すると、周りが混乱するってだけだ。
要は芸能人が改名するようなもんだろう。
そうだな。もうちょっと気楽に考えよう。
気に入らなければ変更は出来る訳だし、一生に一度の決断って訳でもない。
なんならダーツで決めてもいい位だ。
『MP1を消費し、「機能:ダーツ」を開放しますか? MP55/55』
……いや、モノホンのダーツに用はない。
よくテレビで見かけるような、クルクル回るボードのやつで十分なのだ。
贅沢を言えば、真ん中にタワシと書かれていればなお良い。
いや良くない。
万が一、ダーツの矢がタワシに当たってしまったら、クラン名が『タワシ』になってしまう。
ギルドで呼び出される時、「ショータ様ー、クラン『タワシ』のショータ様はいらっしゃいますかー」とか呼ばれるのだ。
さすがにそれは勘弁である。
というか、ダーツは出てくるのか。
望んだらテレビとかも出てくるのだろうか?
電子レンジや冷蔵庫があるだけに、ちょっと期待が高まる。
一応テレビが出るか、コッソリ試してみるが、残念ながらハズレだった。
まぁ出て来たとしても放送局がないんじゃ、砂嵐しか映らないだろうけど。
あ、砂嵐ってのは電波を受信していない状態の事ね。
ラジオとかでいう、ザーッとノイズしか聞こえない状態の事だ。
祖母が愛用していたテレビがアナログだったせいか、つい砂嵐と言ってしまった。
今時、砂嵐は無いわな。せめて電波を受信できません、ぐらいにしとこう。
なぜクラン名を決めている最中に、テレビの砂嵐の事を考えているだろうか。
それもこれも突然ダーツが開放できると提示して来たダンデれもん様が悪い。
「おい、ショータ。聞いてるのか? お前の番だぞ?」
「あ? あぁ……って、なんだこれ?」
「なんだって、クラン名を決めるアミダクジだろう?」
「え? アミダクジで決めるのか?」
「だからそう言ってるだろう。一体何を聞いてたんだ?」
なぜかアミダでクラン名を決めることになってた件について。
とはいえ今の状況では、問い質したくても出来ない。
そんな事を聞いてしまえば、俺が余計なことをずっと考えていたことが露呈してしまうからだ。
とりあえず適当に横棒を書きまくり、ついでにワープゾーンも何ヵ所か書き足すと、シャーロットへ紙を返す。
受け取ったシャーロットは四本ある縦棒の内の一つを選ぶ。
どうやら何の案も出さなかった彼女が決めるらしい。
まぁ五人の師匠である彼女が決めたなら、誰も文句は出ないか。
シャーロットの細い指がアミダクジを辿る。
「おい、ショータ。この印は何だ?」
「あぁ、それはワープゾーン。この場合は同じ印の所まで飛べばいい」
「ほぼスタートに戻るんだが?」
「あぁ、そうだ。よかったな。スタートして直後に入らなくて」
「……まぁいい。とにかく同じ印に飛べばいいんだな?」
「あぁ」
再びシャーロットの指が動き始める。
アミダクジを辿り、時にワープゾーンで飛ばされ、また新たな道に向かう。
「おい、ショータ。どうやってもゴールに辿り着かないぞ?」
どうやらワープゾーンを作り過ぎてたらしい。
まぁ四本の縦棒それぞれに作ってれば、そうなるわな。
19/02/07
更にはギルドでも、受付のメルタさんにも横ピースをやってう所存である。
更にはギルドでも、受付のメルタさんに横ピースをやって頂く所存である。
誤字報告に感謝。




