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第472話 レトルトカレーは手料理と言えるのだろうか?

「クラン名を決めるのはいいけど、その前に夕食の時間じゃないのか?」

「もうそんな時間?」

「多分な」


 さっきまで呑気にオレンジの房のスジ取りしていたアレク君が、ソワソワし始めているからな。

 きっと夕食の準備に行きたくて仕方ないんだろう。


「そう……ならクラン名を決めるのは夕食の後ね」

「ハイハイ。なら、それまでに一人一つぐらいはクラン名を出せるように考えておいてくれ。もちろんアレク君もな」

「そうね。分かったわ」

「面白そうっス。いい名前を考えるっスよ」

……(コクコク)

「ボクも考えておくんですか?」

「当然」


 よし、これでパーティー名を決めた時のような事にはならないだろう。

 ……ならないよな? 若干一名、返事をしないヤツが居るけど、大丈夫だよな?


 ヤツは戦力外としても、五人いるんだ。

 三人寄れば文殊の知恵というし、更に二人ほど多いんだから1.6文殊の知恵だ。

 きっと、いい感じな名前が出てくるだろう。




 食堂へ向かうと、丁度白飯が炊けた所だった。

 ふむ……いい機会だし、ガロンさんにもアレを試食してもらうべきだろうか?

 アレなら他の料理があっても邪魔にはならないだろうし。


「アレか……確かにいいかもしれんな」

「でも、こっちので再現できるっスかね?」

「分からん。とりあえず完成品はあるわけだし、口頭だけよりはマシな筈だ」


 ガロンさんなら俺のフワッとした説明でも、油淋鶏やピラフなどを作って見せた実績があるからな。

 完成品があるなら、なおさらだろう。


「と、いう事でもう一回、船に行ってくるな」

「ふむ……ならば私の力が必要だろう?」

「勿論あたしも行くっスよ」


 だろうと思ったよ。

 もっとも、補充自体は俺がやる必要も無い。

 MP要員がいるなら任せてしまうのもいいだろう。


「なに? また向こうに戻るの?」

「あぁ、ちょっと忘れ物を取りにな」

「ふーん……」


 ガロンさん一家にはバックドアの事はバレているので、その辺の壁に呼び出したのだが、掃除道具を持ったクレアのヤツに見つかってしまった。

 ひょっとして彼女も付いて来たいのだろうか?

 だが生憎と、この船はバイト中の奴は入る事が出来ないんだよ。

 素直に諦めて、大人しく宿の掃除をしてるんだな。


 アレの入手は問題なく完了した。

 強いて言えば、併せて補充したカップ麺(しょうゆ味)をシュリとシャーロットにも奪われたぐらいか。

 まぁその程度なら必要経費だろう。


 再び宿に一人で戻る。

 シャーロット達はついでだからと、風呂に入っていくそうだ。

 くっ、アレを届ける必要が無ければ、俺も一緒に入ったのに。

 奴ら、それを見越して付いてきたという事か。

 

 厨房へ戻ると、ガロンさんとアレク君が忙しそうに動き回っている。

 そんな二人の手を、こんな事で止めるのもどうなんだ?

 別に急ぎではないし、二人の手が空いてる時にでも、改めて頼むべきではないのか?


 そうだ、そうしよう。

 そして空いたこの時間を使い、俺も身綺麗にするべきではないのか?

 具体的に言えば、風呂に入ってスッキリするべきではないのか?

 そう結論付け、厨房を後にする。


 ……筈が、踵を返そうとしたところでガロンさんに肩を掴まれる。


「なぁ、ショータ。オメェ、何かイイもん、持ってんじゃねぇか?」

「な、何のことですか?」

「前にも言っただろう? 俺のスキルがビンビンに反応してんだよ。オメェの手が持つ、その銀色のブツにな」


 ちぃいぃぃ。

 ガロンさんにはソレが有ったんだった。

 初めて会った時も、懐に入れてた塩に反応してたな。

 そのスキルであれば、コイツにだって十分反応するだろう。


 掴まれた肩はガッチリ掴まれており、振り解くのは難しい。

 さすがは俺を一撃で沈めたガロンさんだ。

 引退したとはいえ、その力は健在といった所か。


 更には反対側の肩をアレク君に掴まれる。

 語らずともその目は「絶対に逃がしませんよ」と言っている。

 彼にもガロンさんが持つスキルが備わっているのだろうか?


「いえ、強いて言うなら勘ですかね」


 勘ですか。まるでマルクさんみたいだな。

 それともこっちの世界じゃ普通の事なんだろうか。

 いや、俺だって結構勘に頼ってるか。


「そんな事はどうでもいいんだよ。それより、その手のブツの方が大事だ」

「そうでした。ショータさん」

「ハイハイ。分かった分かった。逃げないからその手を放してくれ」


 観念のホールドアップ。

 そして掲げられた俺の手から奪われていく銀色のパック。

 さっそく開けようとする二人だが、手間取っているようだ。

 まぁレトルトのパックなんて、この世界には無いだろうしな。


「あー、その脇のところにある切れ込みから開けられますよ」

「ん? おぉ、これか」

「あと、触ってて分かると思いますけど、中身は液状なんで開けるときは注意してくださいね」

「お? おお。分かってる分かってる」


 その割には慌てボウルを取りに行ってますよね?

 俺が忠告しなかったら、中身をぶちまけてましたよね?


 おっと、そんな事より、もっと大事なことを言っとかないと。


「ガロンさん。そのまま開けても構いませんが、ソレはお湯で温めてからの方が美味しくなりますよ」

「……どういうことだ?」

「その袋はですね、湯煎といって袋ごとお湯で温めてから食べるんですよ」

「ほう……変わった調理方法だな」

「調理……まぁ一応調理と言うんですかね」


 レトルトのカレーを湯煎する事を調理と呼んでいいのだろうか?

 俺的には、カップ麺にお湯を注ぐ、冷凍食品をレンジでチンするのと並んで調理と呼べない料理なんだけどな。

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