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第461話 オペレーション・ピットフォール(二回目)

「来たわね」


 クレアの言葉通り、見張り台のスクリーンには三匹のゴブリンが表示されている。

 音は拾えていないが、迷わずこちらに向かって来ている。

 俺達に気付いたのではなく、吊るしたコッコゥを見つけたのだろう。


 特に警戒する様子もなく、ノコノコと落とし穴の手前までやってくるゴブ共。

 併せて俺達も、いつでも飛び出せるように構える。


 が、最後の一歩を踏み出さない。

 あと一歩踏み出せば落とし穴にかかるというのに。

 まさか気付かれた?


「うーん……気付かれたのとは違うみたいね。たぶん、森のド真ん中に吊るされているのを不審に思ってるだけじゃないかしら」


 さすがゴブリン絶対殺すマン。

 奴らの挙動もバッチリ分かるようだ。


「で、どうする?」

「様子見ね。奴らが諦めて引き返すようなら、その背後をつきましょう」

「了解」


 おびき寄せるという目的は達成されているんだ。

 あとはいかにスマートに勝つかってだけだ。


 理想は一撃必殺。

 反撃を貰わないってのも大事だが、大きな音を出して余計な敵を呼び込むのは避けたい。

 雑魚とはいえ、群れれば厄介だろうからな。


 いつでも飛び出せるように武器を構えながら、スクリーン越しのゴブリンを観察する。


 ゴブリン共は太ったデカブツと心なしか小ズルそうなチビ、それと下っ端そうなヤツだ。

 俺は心の中でデブ・チビ・下っ端と勝手に名付ける。


 三匹で何やら話し合ってる所を見ると、奴らはあからさまに怪しいコッコゥに警戒しているようだが、諦める様子はなく、落とし穴の手前で何やら話し合ってる。


 いい加減、サッサと来いよ、そして落ちろよ、と心の中で悪態をつく。

 いっそ背後から近付いて、背中を押してやろうか?

 って、背中押すぐらいなら、そのまま槍で突き刺すべきか。


 見守ると言ったクレアも、奴らのもたもた具合に痺れを切らし始めている。

 たぶん、誰かがGOをかければ、そのまま突撃するだろう痺れ具合だ。

 よっぽどお漏らしの恨みは深いらしい。


「もう面倒だから、一気にやっちまうか?」

「そうね……いや、待って。動き出したわ」


 見ればデブに殴られた下っ端が、渋々といった感じでコッコゥに向かっていき……そのまま吊るされたコッコゥに手を伸ばす。


 ……アレ? 落ちない? もしかして失敗?


 間違いなく下っ端は落とし穴の真上にいるのに落ちない。

 なぜだ?


「ショータ。枝は枯れてるのを使ったわよね?」

「……枯れ枝じゃないとマズかった?」

「生木だと、しなりのせいで結構もつのよ」

「マジか……すまん」

「あたしも確認しなかったし、仕方ないわ」


 落とし穴ってのは奥が深いんだな。穴だけに。


 幸いというかなんというか、吊ってあるコッコゥの位置は、長身のベルにとっては丁度いい高さだが、背の低いゴブリンにとってはかなり高かった様で、ヤツが手を伸ばしても届かない。

 だが、それも時間の問題だろう。

 多少なりとも知恵があれば、すぐに取られてしまう筈だ。


 落とし穴作戦は失敗か……と諦め突撃しようとした瞬間、下っ端の姿が消える。

 いや、チビの姿もない。

 何が起きたんだ?


「チャンスよ! 落ちてないデカブツから倒すわよ!」


 良く分からんが、三人が見張り台内のドア(・・・・・・・)から飛び出していく。

 俺も遅れじとドアから飛び出し、デブに槍を突きたてる。


 当のデブゴブリンは突然消えた二人と突然現れた俺達に戸惑ったのか、無防備な姿を晒したままだった。

 クレアとシュリのエアハンマーで体勢を崩されたところに、俺の槍が突き刺さる。

 そこでようやく敵襲だと気づき、反撃しようとしたところにベルの斧がその脳天をかち割った。


 飛び散る血しぶきと脳漿に、思わず目を逸らしてしまった俺は悪くない。

 グロ映像を間近で見させんなよ!

 覚悟してても、アップはきついんだよ!


 とはいえ、俺の精神的ダメージ以外にダメージは無く、強いて言えば返り血で汚れたぐらいと、完全勝利だった。

 ちなみにチビと下っ端は仲良く落とし穴にはまっている所を、クレアとシュリにトドメを刺された(俺の槍で)。

 でも、なんでコイツ等、揃って落ちたんだ?


「そりゃ、二人で落とし穴の上に乗っかったからっスよ。流石に二匹分の体重は支えきれなかったようっスね」

「……ま、結果オーライだな」


 デブがチビに命令して、下っ端と二人(?)で取らせようとしたらしい。

 その結果、二匹まとめて落とせたのはラッキーだった。

 きっとステータス(お告げ)には「一石二鳥」とでも表示されていたことだろう。


「あんなのは偶然なんだからね? 次はちゃんと枯れ枝を使うのよ?」

「あぁ、分かってる」


 反省だけならサルでも出来る。

 今度は間違いなく、一匹でも落ちるような枝を選ぶとしよう。


 再び落とし穴をセットし、血抜きが終わったコッコゥも交換する。

 更に別のゴブリンが掛かるかは微妙な気もするが、クレアには勝算があるらしい。

 まぁ闇雲に森を歩くよりは、ここで待ち伏せする方が楽だろう。


 全員出た事で消えてしまったバックドアを再度呼び出す。

 行先は先程と同じ見張り台だ。

 各部屋へ直接行けるようになったので、見張り台と出入口を繋げていたのだが、中々いい気がする。


 見張り台で外の様子は確認できるし、何故か現れたドアによって、直接外に出られる。

 これにより、先程のような不意打ちもしやすくなっている。

 ゴブリンもまさか地面にドアが転がってて、しかも中に人が居るとも思うまい。


 まさにチート(イカサマ)である。

 卑怯と言われようと、身の安全は大事。

 勝てば官軍なのだ。

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