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第460話 基本パック

 基本パック。

 召喚勇者にデフォルトで付与される『言語理解・鑑定・アイテムボックス・成長補正』の四つのスキルの詰め合わせを総称して『基本パック』と呼ぶらしい。

 シュリ達四人だけでなく、過去に召喚された勇者全員に漏れなく付いていたという。

 この他に個々で選んだ所謂チートスキルまであるんだから、召喚勇者というのは羨ましい限りである。

 もっとも、呼ばれた先が国の奴隷みたいなものだから、代わりたいとは思わないけどな。


 言語理解と鑑定はまあいいだろう。

 俺の言語理解やシャーロットの鑑定と変わらないしな。

 それよりアイテムボックスと成長補正だ。


 アイテムボックスはマジックバッグのスキルバージョンだな。

 ただマジックバッグは性能が変化しないのに対し、アイテムボックスはスキル扱いになるので、使っていくうちに成長するのがポイントか。

 しかも使い方によって成長の仕方も変わるんだとか。


 例えば容量。

 初期だと小学生のランドセル程度だったのが、成長させると貨物のコンテナ並みになり、容量に特化して成長させた場合は無制限になったんだとか。


 例えば内部時間。

 初期は俺のマジックバッグ同様、外と同じ様に流れるが、成長によって内部時間の進み方が遅くなり、やがて時間停止にまで至るという。

 内部時間停止が最終進化かと思いきや、さらに成長させると個別に早めたり遅らせたりといった時間設定まで出来るんだとか。

 要は氷ジョッキに入れたビールが時間停止でいつまでも冷えたままだったり、早め過ぎてて融けたりするってことだな。


 例えば温度。

 初期は外気温と同じだが、成長すれば氷点下だろうが百度以上だろうが思いのままになる。

 冷凍食品は作り放題だし、内部を適温状態に設定して水を入れておけばいつでも風呂が楽しめる。

 過去には数千度まで上げられるようにしたツワモノもいたらしい。

 なんでそんな温度に? と思ったが、鍛冶用の炉として使ってたそうだ。

 好きな温度に設定できるなら、そんな使い方もアリなのかね。


 とまぁアイテムボックスの特徴を挙げてみたが、正直どうでもいい。

 へーそうなんだ、と鼻ホジしたい気分だ。


 だって俺は貰ってないしな。


 成長補正?

 レベルアップした時にステータスが一般人よりも大幅に上がるんだって。

 実に勇者っぽいスキルだけど、どうでもいいね。


 もちろん俺は持ってない。


 シュリが懇切丁寧に基本パックの説明をしてくれたが、マジでどうでもいい。

 むしろそんな説明しなくていいよって感じだ。

 いい加減、俺とお前は立場が違うんだと気付け。





 シュリの説明を聞き流しながら、森の中を進む。

 今日は斥候役のクレアが十分索敵できているらしく、これまで戦闘はない。

 ただ目的が目的だけに、そろそろターゲットを見つけておきたい。


 クレアもそれが分かっているのか、キョロキョロとあたりを見回している。

 ……ゴブリンを探してるんだよな?

 帰り道を探してるわけじゃ無いよな?


「……!」

「ん? 急に立ち止まって、どうしたっスか?」


 シュリの後ろを歩いていたベルが立ち止まる。

 ちなみに隊列はクレア、俺、シュリ、ベルの順だ。

 概観視持ちの俺が前を、音に敏感なベルが後ろを警戒している。


「ベルが何か見つけたみたいね」

……(コクコク)


 ベルが示す先を見てみるが、変わった様子はないように見える。

 だが、何かあるのだろう。クレアも戻って来てその場所を中心に何やら探っている。


(なぁ、わかるか?)

(サッパリっス)


 良かった。

 ダメな子は俺だけじゃなかった。


「近くにいるみたいね。足跡がまだ新しいわ」


 俺にはタダの森の地面にしか見えないが、ゴブリン絶対殺すマンなクレアには分かるようだ。


「……」

「そうね。ここに罠を仕掛けましょう。ショータ、コッコゥを出して」

「了解」


 マジックバッグに仕舞ったままのコッコゥを渡すと、ベルが近くに木にコッコゥを吊るす。

 ここで血抜きをして匂いをまき散らし、おびき寄せるようだ。


 その間にクレアとシュリの二人は魔法で穴を掘っている。

 人一人入れそうな縦穴が、あっという間に出来上がる。

 シャーロットが作ったような、薄い部分を残すやり方は出来なかったようだ。

 とはいえ、あんなの俺が人力で掘ったら一時間以上はかかるだろう。

 魔法サマサマである。


「なにボケっと見てんのよ。落とし穴に良さそうな枝を探してくるのよ」

「へいへい」


 魔法すげーと感心してたら怒られた。

 まぁ穴だけ掘ってもフタが無ければバレバレだしな。

 いくらゴブリンが低能とはいえ、ミエミエの穴には落ちないだろう。


 フタに丁度良さそうな枝はすぐに見つかった。

 人の手が入っていないような森だからすぐに見つかるか不安だったが、案外あるもんなんだな。

 何本か持って落とし穴の所に戻る。


「もうちょっと太い枝は無かったの?」

「あったけど、要るのか?」

「尖った方を穴の底に立てとけば、落ちても直ぐに動けないでしょ?」

「なるほどな」


 バラエティー番組でよく見る落とし穴と違い、殺傷するのが目的なんだから、中に杭を設置して攻撃力を上げるのか。

 凶悪ではあるが、これが正しい落とし穴の姿だよな。

 どっかのモンスターをハンターするゲームだと、落とし穴は拘束するだけで、そのもの自体にダメージは無いみたいだけど。


 逆茂木(尖った杭)を底に設置し、枝葉を使って周りの地面と同じになるようにカモフラージュする。

 クレアとベルは作り慣れているらしく、パッと見どこが落とし穴か分からないレベルだ。


「あとは血抜きをして、おびき寄せるだけよ」

「了解」


 落とし穴から少しは慣れた場所にベニヤ板を寝かせると、そこにバックドアを呼び出す。

 この中で見張っていれば、そうそう見つからないだろう。

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