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第452話 唐辛子

 シュリは俺の手よりもピザの方が大事だとか。

 人にピザを取りに行かせたくせに、なんて態度だ。

 コイツの性根を改めさせるためにはタバスコが必要だ。


 だが、この世界にタバスコは存在しない。

 少なくともこの町では流通していないようだ。

 だったら作ってしまえばいいのだが、俺は作り方を知らない。

 というかタバスコの作り方なんて知ってる奴いるのか?


 唐辛子が必要なのは間違いない。

 酸味もあるから酢とかそんなのも必要だろう。

 だがそれだけだ。


 醤油は……なんか大豆と麹を使って熟成させていた。

 味噌も似たようなものだ。

 某アイドルが開拓している番組でも、たまに自家製醤油や味噌を作る時があったので、少しは覚えている。


 ラー油はどうだったかな。

 唐辛子と……あとはラー油というぐらいなんだから油か。

 なんかのマンガで、ラー油を作るシーンがあったが、大量の油で唐辛子を炒めてた気がする。


 でもタバスコって、普通買ってくるものだよな。

 自家製タバスコって見た事ない気がする。

 それとも俺が無知なだけで、巷では自家製タバスコにあふれているのだろうか?


「シュリはタバスコの作り方って知って……いや、なんでもない」

「タバスコっスか。全く知らないっスね」

「だろうな」


 少なくともココに無知な日本人(元)がいた。

 今の所、日本人がタバスコの製法を知らない率は百%だ。


「で、その『たばすこ』とやらは何のことだ?」

「うーん……簡単に言えば唐辛子……は通じるのかな? とにかく辛い調味料の事です」

「とうがらし……唐辛子か……あぁ、あのやたら辛いヤツの事か」

「知っているのか雷電?!」

「らいでん? 何のことだ?」

「いえ、ただのお約束です。それよりも唐辛子の事を」

「あ? あぁ、そうだな。アレは確か……王都の市場で見つけたはずだ」

「王都……ですか」

「あぁ。王都ってだけあって人が多い。人が多いって事は色んなモンが集まるからな」


 特に王都には金持ちも一杯いて、ソイツ等は珍しいものに目がない。

 当然、ソイツ等に売りつける品モンも珍しいものが集まってくる。

 その中に、その唐辛子ってヤツも混じってたんだろうな。

 ただ、辛すぎて売れなかったらしくってな。

 俺が見た時は市場で安売りしてたんだ。


 そうガロンさんは締めくくった。


「どこで手に入れたなんてのは聞いたんですか?」

「あーどこだったかな。こっちに来る前の事だし、よく覚えてねぇわ」

「そうですか」


 ガロンさんがマウルーに来る前となると、多分マデリーネさんと結婚する前。

 つまりマロンちゃんが生まれる前の話だ。

 おそらく十年以上昔の話だろう。

 そんな昔の事を急に言われても、覚えてないのは当然か。


 俺だって十年ぐらい前に行った旅行の、土産物屋で見つけたお菓子(萩〇月)の製造元なんて覚えていないしな。

 あ、一つだけ覚えてる製造元があった。

 実家への土産として買ったお菓子が、実は実家近くの工場で作ってたのがあったな。

 壮大なブーメランだな、と姉にからかわれたんで覚えている。


 と、話が逸れたな。

 とりあえず王都に行けば唐辛子が手に入る可能性はあるってことか。

 ただ、ガロンさんもそれっきり見ていないらしいから、今も手に入るかは不明だけどな。

 たぶん一度ぐらいは行くと思うから、その時忘れていなければ探してみよう。


「えー、唐辛子なんて要らないっスよー」

「なんだ? 辛いのはダメなクチか?」

「あんな辛いの、食べる人の気が知れないっス」

「俺もわざわざ食いたいとは思わないけどな」


 なんでも、彼女は青唐辛子を丸のまま食わされたことがあったそうだ。

 なんでそんなことに? と思ったが、


「シシトウだと思ったっス。あんときは悶絶したっス。つーかショータさんに食わされたっス」

「俺が? お前に?」

「そうっス。ひどい目にあったっス」


 らしい。

 とりあえず彼女が目覚めてからはそんな事はしていないので、おそらく小学生(アオイちゃん)の頃の話だろう。


 けど、そんなエピソード覚えていない。

 いくら小学生な俺でも、青唐辛子をシシトウだと言って、誰かに食わせるようなことはしていない筈だ。

 間違いなく冤罪か、彼女の記憶違いだろう。


 ん? いや待て。

 何か記憶に引っかかるものがあるな。

 アレは確か……家族でバーベキューをした時の事だ。

 あの時、俺は姉からシシトウも食べなさいと、取り皿に乗せられたっけ。

 当時、俺はシシトウの事を苦手なピーマンの仲間だと思ってたので、こっそり誰かにあげたような記憶がある。

 もしかしてそのシシトウが青唐辛子で、それを食べたのが彼女だったのだろうか?


「そうっス。忘れもしない小六の夏休みの話っス」

「えーっと……なんだ……ごめんなさい」

「今更謝られても遅いっス。ショータさんにも同じ目に合わせるッス」


 いや、俺は悪くない筈だ。

 そもそも悪いのは青唐辛子をシシトウだと偽った姉だ。

 彼女にこそ、その罰を与えるべきだろう。


「じゃあ、お姉さんをここへ連れてくるっス。出来なければ連帯責任でショータさんが食べるッス」

「なんで俺が連帯責任になるんだ?!」

「あの時、ショータさんが素直に食べてればよかったからっス」

「そしたら俺が辛いのダメになってただろうが!」

「知ったこっちゃないっス。さぁ、連れてくるか食べるか。どっちかにするッス」


 いや、どっちも無理だって。

【豆知識】タバスコの作り方【概略】


唐辛子を塩を混ぜ込みながらペーストにする。

そのまま樽に詰めて三年間熟成。

ビネガーを混ぜ、四週間かけて撹拌。

種とかをろ過して完成。


うん、自家製タバスコ作ってる人いなそう。

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