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第424話 火山は見つかったけど

「これか?」


 ようやくそれっぽい場所が見つかったせいか、つい声に出てしまった。

 検索機能でもあればよかったのだが、なぜか付いていないため、手作業でそれっぽい所を探す羽目になってしまったのだ。

 これなら今朝使った205号室の睡眠学習(世界)の方が早かっただろう。


 睡眠学習のことは探している途中で気付いたのだが、ここまで手間をかけたからと半ば意地になっていたことと、これから205号室を使おうとした場合、そのまま205号室が今夜の宿泊先になるのは避けたかったためである。


 どうせ今夜の寝室はシャーロットが使う予定だろってのは関係ない。

 アイツが寝室を使おうとも、俺が使えない理由にはならない。

 彼女との同衾なんて今更だしな。


 更に言えば「シャーロットに使って貰いたい」とは言ったが、「シャーロットしか使わせない」なんて一言も言ってない。

 かなり強引な屁理屈ではあるけどな。

 まぁダメって言われたら、大人しく205号室を使うとしよう。




 それより火山の確認だ。

 火口っぽい地形に加え、木々などなく山肌がむき出しのまま。

 いかにもザ・火山って感じの山だ。


 場所は……ここが確かウルザラ村だろ……となるともっと南になるのかな?

 マウルーの脇を流れてるハルなんとか川と合流する別の川の水源っぽい。

 水源があって火山があるなら、温泉がある可能性は高い。

 行ってみる価値はあると思う。


 ルートとしてはハルなんとか川を下って合流した後、今度はその川を遡上していけば辿り着けるようだ。

 縮尺ないから、どのぐらい離れてるのかが良く分からないけどな。


 ただ気になるのは、近くに村っぽい建物がないことか。

 伝説の秘湯的な理由で近くに家屋が無いならいいのだが、そもそも人が入れない温泉では行く意味がない。

 熱すぎたり、火山ガスが充満した死の山とかの理由で利用できない可能性はある。

 その辺は実際に行く前に、ギルドで情報を仕入れてみるか。


 そうなると陸路のルートも確認しないとだな。

 だって、ギルドでその山の情報を聞くのに、


「ココにある山の情報をください」

「分かりました。これです」


 と、なるはずがない。普通は、


「ココにある山の情報をください」

「なんでその山の情報が必要なんですか?」


 となるだろう。更には


「どうして、そこに山があると知ってるんですか?」


 ともなる。

 近隣ならともかく、遠く離れた地域の情報など、おいそれと手に入れるモノではない。

 もし俺がギルド職員なら、どうやってその情報を手に入れたのかぐらいは確認するだろう。


 もちろん飛空艇の地図機能の事など言える筈もないから、別のルートでその情報を仕入れた事にしなくてはならない。

 今回はウルザラ村で聞いたって事にするつもりだ。


「ただなぁ……ギルドに情報があるか自体が怪しいんだよなぁ……」

「なにが怪しいっスか?」

「シュリか。随分早かったな」

「あまり長湯はしない方っスから。それより、さっきの話っス。なにが怪しいっスか?」

「何って温泉の情報があるのか、だよ。」


 あの時、メルタさんが広げて見せてくれた地図には、ハル川は描かれていたが、それが他の川と合流している所までは描かれていなかった。

 単純にあの地図では描き切れてなかっただけなのか。

 あるいはソコから先の地域情報が無いのか。


 前者ならともかく、後者の場合は聞くだけ無駄というか、聞いたら藪蛇になりかねない。

 一応、先程の言い訳はあるけど、それもどこまで通用するかは分からないしな。


「だったら、いきなりこの山の事を聞くんじゃなくて、温泉がある場所を聞いてみるのはどうっスか?」

「出てくると思うか?」

「それは知らないっス。でも、情報があれば教えてくれるはずっスよ」


 それもそうか。

 温泉の情報なんて、秘匿されるとも思えない。

 ギルドに情報があるならそれで出てくるだろうし、無いなら改めて火山の情報を尋ねればいい。


「まぁなんにせよ、戻ってからだな」

「っスね。でもショータさんの事だから、そのまま現地に行くのかと思ったっスよ」

「確実にあるって分かってれば行ったかもな。でも今のところ、あるかどうかも分からない状態だし、それで皆を付き合わせるもな」

「そこは大丈夫だと思うっスけどね」


 調査依頼の期限はまだ先だ。

 時間調整ついでに、その場所へ行ってみてもいいのだが、行った先が空振りってのはなぁ。

 例えるなら花見に行ったのに咲いてなかったりとか、そんな感じ。


 一人で行ったならともかく、会社の同僚とかとだと気まずさが半端ない。

 特に俺が言い出しっぺだとなおさらだ。

 あんな思いは、もう二度と味わいたくない。


 事前の準備は大事。

 これは世界を超えても通じる常識である。


 火山の位置を確認し終えた俺達は、操縦室を出るとそれぞれの寝床へ向かう。

 シュリは今日も202号室で魔法の特訓らしい。


「じゃあ、お休みー」

「はい、お休みっスー、ってあれ? なんでエレベーターに乗り込んでるっスか?」

「何でって、寝室で寝るから?」

「……寝れるといいっスね」

「?」


 シュリはちょっと呆れたような顔をした後、そんな事を言った。

 もしかしてシャーロットが寝かせてくれないような事をしてくるのだろうか?

 ちょっと期待しつつ、寝室のドアを開ける。


「……」俺

「……」シャーロット

「……」クレア

「……」ベル


 多いよ!

 さすがのキングサイズのベッドでも四人は無理だよ!

 当然、追い出されたよ!

 あの無言の圧力には勝てなかったよ!

 あのヤロウ。俺が来ることを見越して、先にベッドを一杯にしてやがったよ!


 仕方ないので204号室で不貞寝した。


 なお、鎧の手入れを眠りにつく直前に思い出し、慌ててやっといた。

 準備が大事とか言って、危うく鎧をダメにするところだった。

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