表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
411/1407

第411話 フロード

「出来たっスよー。これは自信作っスー」


 シャーロットの代わりに自慢そうにしているのはシュリだ。


 実は彼女も魔法陣に関する知識はあったらしい。

 薬学大全の中には魔法陣を使った製薬方法もあり、魔法陣の制作だけならシャーロットとどっこいどっこいの実力の持ち主だったのだ。


 更に迷い人の彼女には、完成品のイメージが頭の中にある。

 目指すべき形を知っているほうが、知らないまま作るよりも遥かに有利なのは言うまでもないだろう。


 その結果、制作のメインとなったのはシュリであり、シャーロットとアレク君はサポートに回ったらしい。

 偉そうに自己申告したシャーロットさん、憐れなり。


 すこしションボリしているシャーロットはさておき、完成したブツをみる。


 ボードそのものは先程と変わりはない。

 切り出したままの板で、色塗りさえしていない。

 まぁペンキなんて気の利いたものはないし、仕方ないだろう。


 変化があったのはボードの両面だ。

 片方の面には、複雑な模様とその中心に六角柱がはめ込まれている。

 その模様も、よく見ればエジンソンが残したものと同じ模様だと分かる。

 なにせ見本が隣に置いたままだしな。

 これが浮遊石を稼働させるための魔法陣らしい。


 で、シュリの言ってる自信作の部分ってのが、その裏面に描かれた魔法陣の事だろう。

 丁度両足が乗るあたりに魔法陣が描かれ、その真ん中、ボードの中心部には黒い石がはめ込まれている。


「こっちの浮かせる部分は分かるけど、反対側のはなんなんだ?」

「コレはっスねー……なんと魔石で浮かせることが出来る様になったっスよ」

「?」

「だからー。こっちの魔法陣で魔石の魔力を浮遊石側に送ってるって構造っス」


 そういえばエジンソンは自身の魔力を注いで椅子を浮かせてたな。

 それがコイツの場合、魔石をその代用として使ってるって事か。


 でも単純に魔石を使った魔道具なら、俺が持ってるランタンの魔道具もそうだよな?

 というか、魔道具の大半が魔石を利用したものだろうし、それが自信作ってどういうことだ?


「あ、仰々しいことを言ってた割に大した事ないな、とか思ってるっスね?」

「まぁそうだな」

「ちっちっちー。甘い、甘い、激アマっスよ」

「?」

「この魔法陣はっスねー、なんと使用者の意思を読み取って、魔石からの魔力供給をコントロールしてるっスよ」

「それって他の魔道具でも一緒だろ?」

「違うっスよ。一般的なのはオンオフの切り替えぐらいで、出力の調整が出来たとしても、使う魔石を増やしたりするだけっスから、結構大雑把っスよ」

「これは違うのか?」

「薬を作る時は調整がシビアなものが多いっスからね。魔力の微妙なコントロールが要求される場合もあるっスよ」

「それがこの魔法陣ってことか」

「そうっス。単純に魔石から供給しただけだと、浮力の調整が効かないっスからね。この魔法陣を使って調整が効くようにしたっス」


 まぁ起動したとたんに大きく飛び上がるようでは危ないからな。


 俺は昔、ヘリコプターのラジコン(屋内用)を買った事がある。

 その時は、上昇の加減を間違えて何度も天井にぶつけたっけ。

 ぶつかっては墜落を繰り返しまくり、とうとうローター(羽根)が壊れて、結局それっきり遊ばなくなったという苦い思い出がある。


 あの時はラジコンが壊れただけで終わったが、今回のは人間が乗るのだ。

 安全を考えれば、この処置はありがたいだろう。 


「で、この部分に両足をのせて……あとは『浮け』とイメージすれば……この通りっス」


 ペタンと床についたままのボードが、シュリが両足をのせた途端に、少しづつだが浮き始める。

 それはあの映画さながらの光景だった。


「すげー、まさしくホバーボ〇ドだ」

「でしょー。ただ、まんまじゃ色々マズい気がするんで、あたしはフロート【float】するボード【board】でフロードって名付けてみたっス」

「フロードか。まぁ何でもいいや。早速乗らせて貰ってもいいか?」

「勿論っス……と言いたいとこっスが……」


 浮いていたフロードが次第に下がり、遂には床にペタンとついてしまう。


「電池、もとい魔石切れっす」

「えぇー!?」


 試運転として、シュリやシャーロットが散々乗りまくってたせいらしい。

 魔石自体はシャーロット提供らしいのだが、それでももう少し控えるべきだったんじゃないのか?


 ついでに言えば、燃費もかなり悪いそうだ。

 今使っているのはゴブリンの魔石らしいが、もって五分だという。

 つまりコイツ等はそれが分かる程度には遊んでいたようだ。


「じゃあ魔石を交換すれば……」

「残念っスけど……今のが最後っス」

「はぁ?!」


 マジかよ!?

 あそこまで期待を高めさせたのに、乗れないのかよ!?

 何とかならないのか?!


 期待を込めてアレク君を見る……目を逸らされた。

 まぁ持ってたとしても、試運転で徴収されてるか。


 ならばとクレア、ベルと見ていくが、誰も持っていない。

 もちろん俺も持ってない。

 ないない尽くしだが、最後の手段がないわけではない。


 魔石が無いなら魔力を使えばいい。

 元々は魔石なんて使わず、魔力で浮くんだからな。


 問題は、どれぐらいの速度でMPが消費されるかだ。

 かなり燃費が悪いみたいだから、俺程度のMPではちょっとしか乗れない可能性だってある。


 それでも俺は乗りたい。

 あの映画の様に、俺も遊びたい。

 そう決意し、シュリからフロードを受け取る。


 床に置いたフロードに足を乗せ、いざ! って時になってアレク君から待ったがかかった。

 なんだ? 魔石の予備でも隠し持ってたのか?


「いえ……魔石は持ってませんが、魔石にすることなら出来るかもしれません」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ