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第403話 金庫室

 行商人に未練はないかと聞かれれば、多分NOだろう。

 といっても金儲けとか商売に興味がある訳ではない。


 行商人ってのは要は個人経営者だ。

 個人とはいえ経営者、即ち社長だ。

 しがないサラリーマンだった俺では到底かなわぬ地位である。


 とはいえ俺がなりたかったのは飛行機のパイロットであり社長ではない。

 更に言えば、今の身分はパイロットどころか飛空艇の船長である。

 おそらく、というより絶対に元の世界では就く事の出来ない職業だろう。


「ショータ。変な顔をしてないで、サッサと荷物をまとめろ」

「あ、あぁ分かってる」


 レアな職業に就けた優越感に浸っていると、シャーロットが出発を告げて来た。

 慌ててマジックバッグから出したままの私物を仕舞い始める。

 なんせ塩を売るのに、中身を全部出してたからな。


 武具の類いだけでなく、着替えやらランタンやら戦利品やらが入れっぱなしだったのだ。

 ランタンとかの直ぐ使う小物はともかく、着替えとか人形作りに使った鉄串は飛空艇に仕舞うべきか。

 同じような機会がある度にマジックバッグの中身を空にするのも手間だしな。


 着替えとかの衣類は脱衣所にある棚に。

 鉄串や手入れ道具一式は工房に。

 カップ麺やパックご飯などの保存食はミニキッチンの戸棚に。

 あと十五枚の大金貨は、解放したっきり入ってもいなかった金庫室に仕舞うことにした。


 なお、この金庫室。

 部屋に入ってみると六角形の石柱がポツンとあるだけだった。

 イメージとしては某大佐が天空の城を操作していた石柱に近いだろうか?

 てっきり銀行にあるようなデカい頑丈そうな扉があると思ったのに、期待外れもいい所である。


 というか、どうやって使えばいいんだ?

 大佐は青い石をかざして操作していたが、もちろんそんな石は持っていない。

 とりあえず手をのせてみる。





 あーこれ、躁舵輪と同じなのか。

 触った途端、使い方が頭に入って来たので、早速『収納口』とやらを呼び出してみる。

 すると、目の前に真っ黒なウィンドウが現れたが、驚きはしない。

 このウィンドウこそが『収納口』だからだ。


 黒いウィンドウに大金貨を一枚近づけると、すり抜けることなく吸い込まれる。

 続けて残りの大金貨もジャラジャラジャラーと入れていくが、先程と同じ様に、下に落ちることなくウィンドウに吸い込まれていった。

 入れ終わった後は『収納口』を閉じれば収納は完了だ。


 閉じた収納口の代わりに、白いウィンドウが現れる。

 これは仕舞っている中身を示しているらしい。

 ウィンドウ内には大金貨が連続写真の様にズラズラと十五枚並んでいる。

 どうやら一個一個、個別に保存しているようだ。


 それと中身の画像だけで、名前は出ていない。

 これが出来れば簡単な鑑定も出来たのにな。

 残念ではあるが、保存が一番の目的なのだから仕方ない。


 次に入れた中身を出す『取出口』を呼び出す……前に取り出す対象を選ぶのか。

 パソコンでファイルを選ぶ要領で選べるようだが、とりあえず一枚だけでいいか。

 表示されている大金貨のうち、一番初めの一枚を選ぶ。


『MP1を消費し選択した対象を取り出しますか? MP55/55』


 ぬぅ……入れるのはタダだが、取り出すのにMPが必要なのか。

 ATMみたいだが、とりあえずNOにする。


 次に十五枚全部を選択してみるが、要求されるMPは1のままだった。

 取り出す数に比例するのではなく、一回ごとに取られるだけのようだ。


 ちなみに金庫の容量の上限は、重量ではなく個数らしい。

 今は全部で百個までしか入れることが出来ないが、拡張も可能だった。


 MP1だったので倍の二百個まで増やし、さらに倍の四百個もMP2で可能らしい。

 とはいえ二百個もあれば十分だろうし、さらに増やせるって事だけ覚えておけばいいだろう。

 それに十五枚の大金貨も袋の中に入れてしまえば、一つとしてカウントされるみたいだしな。


 容量を拡張したついでに、他の部分も拡張可能か試してみる。

 一番期待しているのは、時間停止か。

 これがあれば、生鮮食品を箱詰めして仕舞っておけるし。


 が、ない。

 拡張しようにも、そんな項目は無かった。

 ガイドフェアリーのタンポポにも聞いてみるが、「カクチョウ デキナイ」を繰り返すだけだった。


 まぁいいか。

 サイズや重量関係なく収納できるだけでも十分だしな。


 後は……他のヤツも金庫室の機能を使えるのかを試してもらった。


 俺だけしか使えないのか?

 誰でも使えるのか?

 出し入れに制限があるのか?

 他の人が収納した物でも取り出せるのか?


 副船長であるシャーロットは、収納も取出しも俺と同じように出来た。

 ただ、収納した物は、入れた本人しか確認も取り出しも出来なかった。

 船長権限で見るだけでも出来るんじゃないかと思ってたけど、その辺は無理のようだ。


 で、飛空艇に登録されていないシュリの場合。

 収納するのにもMPが要求されたが、それ以外は俺達と変わらない仕様らしい。


 あぁそうそう。

 金庫容量の上限を増やすことが出来るのは俺だけのようだ。

 俺だけ二百個、四百個と増やせるのに対し、シャーロット達は百個のままだった。

 まぁ袋や箱にあらかじめ入れておけば、そこまで必要って訳でもない。

 その辺は大した事ではないだろう。


 そもそも、この機能は俺が飛空艇かバックドアを呼び出していないと使えない。

 そこまで頻繁に使う機能でもないだろう。

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