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第402話 情報料と使い道

「ほう……あの山にか……」

「あぁ。見渡す限りの塩だった。お前も機会があれば行ってみるといい」

「お、いいな。自分で使う分は自分で手に入れるとするか」


 パイさん。乗り気なのはいいですが、料理長が職場放棄するのは周りが大変迷惑すると思います。

 せめて転移陣が設置されてからにしてください。

 セルジュさんの気苦労を思い、やんわりと釘を刺しておく。


 あとシャーロット。なぜお前が偉そうに自慢する?

 お前が見つけた訳じゃないだろ?

 いや、お前が作った山だったか。

 じゃあ自慢していいのか?


「ところでショータ。この情報の報酬の件だが、本当にあの条件でいいのか?」

「えぇ。シャーロットにも相談しましたけど、こっちには定期的に来れるか分かりませんし、それならもっと役に立つことに使うべきだと思います」

「そうか。お前さんがいいなら、そうさせてもらうぜ」


 塩の平原の情報料は金貨百枚。

 パイさんから貰う訳だが、パイさんもパイさんでこの情報を国に売るそうだ。

 まぁ元四天王とはいえ、今は一個人だ。

 転移陣の設置とかを考えれば、当然の選択だろう。


 ただパイさんの場合、情報を売って終わりではなく、定期的な収入にするつもりらしい。

 具体的には塩の売り上げの何パーセントかをロイヤリティとして貰う予定とのこと。

 夢の不労所得である。


 そんな条件でいいのかと思うが、パイさん本人が自信満々にしているので俺からは何も言えない。

 せいぜい捕らぬ狸にならない事を祈ろう。


 本当は俺も同じ条件で収入を得る事が出来るらしいのだが、そうなると金を受け取りに定期的にここへ来る必要がある。

 移動そのものは飛空艇を使えば大した事無い。


 強いて言えば、シャーロットがこの国を避けてる様子なのがネックになるぐらいか。

 だったら俺一人で受け取りに来ればいいのだが、それでも頻繁に来るとその移動手段を疑われる。

 そんな心配をするぐらいなら、今回限りでドーンと貰っておくことにしたのだ。


 ただそうなるとパイさんだけが儲かることになる。

 数パーセントとはいえ、あの埋蔵量だ。

 最終的にはとんでもない額になる事だろう。


 さすがにそれは心苦しいらしく、俺達にも分け前を渡そうとしてくれたが、そうなるとさっきの話に逆戻りだ。

 そこで俺はその分け前を寄付に回してもらうことにした。

 この国にも孤児院や医療施設はあるらしいからな。

 俺個人が大金を持て余すよりも、ずっとマシな使い道だろう。


 なお銀行口座への振り込みとかは出来ない。

 銀行はあっても、預けたところでしか引き出せないそうだ。


「ただ、このダテナオトって名前だが、このままでいいのか?」

「えぇ。俺の国じゃ、この手の寄付をするときは、みんなこの名前を使ってるんで」


 嘘です。

 ちょっと虎仮面に憧れただけです。

 そんな嘘にパイさんは気付くことなく、「そんな事もあるか」と納得しているようだった。


 ちなみに匿名希望とか名前を明かさないってのは駄目らしい。

 世間一般にはともかく、国とのやり取りが絡むのでパイさんだけでなく情報提供者()の名前も必要らしい。

 まぁどこも誰とも知れない奴に金を支払うのも難しいのだろう。

 でも偽名は大丈夫のザル仕様。

 それでいいのか魔王国。





「じゃあ情報料の金貨百枚だ。かさばるんで大金貨にしてある。確認してくれ」

「ひーふーみー……はい、確かに」


 これは新月亭からの報酬ではなく、パイさん個人からのものだ。

 金貨百枚もの大金をポンと用意できるとは流石である。

 もっとも、今回のですっからかんらしいが。


 なんでも急に入荷した食材を手に入れるために、こうして持ち歩いているそうだ。

 札束を持ち歩き、即金で買い付けしていた社長がいたと昔テレビで見た覚えがあるが、それと同じ感覚だろう。

 その社長は何度も強盗被害にあったらしいが、パイさんなら返り討ちにしそうである。


 そして俺の手元には大金貨が十五枚。金貨にして百五十枚だ。

 今までの収入を合わせれば二百枚近い。

 一気に大金持ちである。


 いっそ、冒険者やめて行商人にクラスチェンジするか?

 そんな考えが頭によぎる。


 ……いや、ダメか。

 俺が行商人になってしまえば、シャーロットとのパーティーは解散になる。

 アイツは冒険者をやりたいらしいし、そうなれば一緒にはいられないだろう。


 同じ理由で、アレク君達とも別れることになる。

 シュリは飛空艇目当てで俺についてくるかもしれないが、半々といった所だろう。


 最悪、俺を守るのはLV7の俺自身だけとなる。

 ただでさえ(Lv7)(飛空艇)背負()ってる状態なのに、(大金)まで付いてるのだ。

 行商を始めて三日目ぐらいで、その辺の川に浮いる未来しか思い描けない。

 それならこうして偶に行商する程度で十分だろう。 

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