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第395話 魔の山の秘密

 広々した風呂を堪能し、そろそろ上がろうかね。

 そう思って他の連中にも声をかけてみたが、同意したのはアレク君ぐらいだった。


 みんな長湯だなぁと思ったのだが、シュリの教えた半身浴を実践するらしい。

 だが半身浴か……なんなら俺も参加しようかと考えたのだが、さっさと出て行けオーラが漂って来た。

 半身浴となると肩まで湯に浸かる全身浴と違って、ずっと上半身は出たままだからな。

 湯浴み着を着用しているとはいえ、また違った気恥ずかしさがあるらしい。


 むろん空気の読める俺は当然居座ろうとしたが、アレク君に手を引かれ強制退去となってしまう。

 これからは女の子だけの時間ですよ、らしい。

 アレク君も半分は女の子だと思うのだが、彼は不参加らしい。

 むしろ参加しない事で、男の子アピールしているようだ。


 それはいいとして、約二名ほど女の子と称するには少々年がいってると思うのだが、その辺はいいのだろうか?

 いや女性はいくつになっても女の子だったか。

 いい年したはずの姉が、ぬいぐるみに顔をうずめているシーンを思い出し、そう納得する。

 納得しましたのでお二人共、お願いですからその桶は下ろしてください。

 あなた方に全力投球されると、俺が必死(必ず死ぬ)になりますので、ハイ。


 あぁ、ちなみにクレアよ。

 半身浴にバブルスライムさんの育成効果は無いからな。

 シュリのロケットさんは本人の資質に依るものだから諦めろ。


 あとタマコはそもそも半身浴しかしてないだろ。

 え? 沈めた桶に乗っかって、根っこの部分を半分漬ける?

 ま、まぁ転ばないよう注意するように。


 それと湯船にワインを持ち込まないように。

 そもそも飲酒してる奴が入浴するのはマズいんだからな?

 せめてそれ位は自重しろ。






 風呂から出てしまえば、あとはいつもの日課を残すのみだ。

 碌に使ってないとはいえ、日々の手入れは肝心だからな。

 アレク君と一緒に工房で手入れをしている最中だ。


「ショータさん。飛空艇って凄いですね」

「なんだ急に」

「だって魔王国ですよ? 魔の山の先にボク達はいるんですよ?」

「まぁそうだな」

「そうだなって……」

「別に飛空艇じゃなくても、トンネルがあるから一週間ぐらいで来られるらしいし、大した事じゃないだろ」

「ボク達の村からだと十日以上かかります。それをたった一日ですよ? 十分大した事です」


 そう言われればそうか。

 朝、ウルザラ村を出発したのに、夕方前には魔の山を超えタナムに到着していたのだ。

 十日は掛かる道のりを約半日で到達できたのだから、かなり速いのだろう。

 飛空艇のデタラメっぷりは機能だけではないってことだ。


「でも、それなら他の飛空艇だって出来るんじゃないか? ダンデライオン号が凄い訳じゃないだろ」

「違いますよ。魔の山の上空辺りは飛空艇も飛べないと云われています」

「え? 飛べないの?」

「えぇ、なんでもあの辺の上空は魔素が薄いらしくて、飛空艇どころか飛行できるモンスターも近寄らないらしいですよ」

「道理であの辺では飛行モンスターに襲われなかった訳だ……」


 俺のダンデライオン号が問題なかったのは、例の太陽石とやらのおかげなのだろう。

 船内に魔素を生み出す機関があるからこそ、魔素の薄い筈の魔の山上空も問題なく飛べていたってことか。

 後でシャーロットに教えてもらったのだが、シュリのいたあたりが山を造った魔法の中心だったらしく、あの辺一体の魔素を根こそぎ使ったせいで、あの辺一体の魔素は薄いままらしい。


 というか、魔素が薄いと空も飛べなくなるのか。

 だからこそ魔の山上空は飛空艇や飛行モンスターを使った航路からは外され、五百年もの間だれも塩の平原の存在に気付かなかった訳だ。

 改めてダンデライオン号の異常さを思い知るとともに、運用方法に制限がかかることに気付く。


 だって魔の山だけが飛行不可能エリアとは限らないだろ?

 似たような場所はもっとあってもおかしくない。

 そんな魔素の薄い場所でも飛べる飛空艇ともなれば、利用価値はもっと跳ね上がるだろう。

 

 召喚云々はさておき、全身ミスリルだけでも十分ヤバそうなのに、更に太陽石による魔素の供給力まで加わってしまえば、どう頑張っても内緒にしておくしかない。

 親しい人ぐらいならともかく、誰彼構わず言いふらすのだけは絶対にしてはならない。

 今までも気をつけてはいたが、一層注意することを頭のノートにメモった。


「とりあえず、魔の山上空を飛んだことは秘密にしておくか」

「そうですね。大きく迂回したって事にしておいた方がいいと思います」


 アレク君の話じゃ魔の山上空の魔素が薄いってのは、知ってる人なら知ってるレベルらしい。

 それってどの程度の奴らが知ってるんだ?

 飛空艇に興味があるような人間ぐらい?

 俺達の中じゃ、アレク君とシャーロットだけで、クレアやベルは知らないようだ。


 あれ? そうなると、アレク君は魔の山に行ったら墜落するって思ってたのか?

 なのによく塩採りに付き合ってくれたな。


「え? 墜落するかもしれなかったんですか?」

「だって魔素が無ければ飛べないんだろ?」

「以前にも行った事があるって聞いてたので、きっと大丈夫だと思ってました」

「そ、そうか……」


 キラキラした目でそう断言される。

 ダンデライオン号が落ちるなんて百パーセント無いと思っている目だ。

 その信頼の眼差しが痛い。

 アレク君の期待を裏切らないよう、飛空艇の安全運転を心掛けることを心のノートに書き止めた。

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