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第377話 後始末

「5・4・3・2・1……終了だ」


 俺のカウントダウンに合わせ表示されていたウィンドウが消え去る。

 ウィンドウが生じされていた場所には、代わりにバックドアが現れた。


 バックドアの外観はメンテ前と変わらず、何事もなかったかのように平然していた。

 その様子にちょっとだけホッとした気分になるが、念のためにとドアを開き中を確認する。


「痛て!」


 頭に激痛が走る!

 すわ襲撃か?

 いや犯人は分かっている……飛空艇だ。


 バックドアの出入り口が、初期位置である倉庫の踊り場下に戻っていたのだ。

 それに気付かず、つい頭をぶつけてしまったのだ。

 すぐに移動するからと防具を身に着けていなかった迂闊な自分を呪う。

 油断大敵とは正にこの事か。


 いつもの場所にしておかないとなぁ、と思いつつもMPがないため後回しに。

 折角シャーロットが逸はやる気持ちを抑えてまで確保してくれたMPだ。

 こんな事で使い切って昏倒するのはマズかろう。


「修理は終わったようだ……痛て!」


 同じく頭装備をしている所を見た事のないシャーロットも頭をぶつける。

 俺が注意する前に入ってくるからだ。

 同じくシュリもぶつけていた。


 俺達の様子を見たアレク君は、頭上に注意しながら入って来る。

 ベルはその長身故、よくぶつけるのだろう。

 慣れた様子で頭上の危険を回避してみせた。

 クレア? アイツはそもそもぶつかるほど高くな……いえ、何でもないです。


 痛む頭を押さえつつ中に入ると、タンポポとタマコが出迎えてくれた。

 そういやコイツ等、メンテ中は何してたのだろうか。

 まさかコイツ等が船の修復をしてたとか?


 二人が船の外壁を修理している様子を思い浮かべる。

 タマコの枝みたいな手はともかく、タンポポなんか光の玉だし無理か。


「ショータ。中を見るのは出発してからにしないか?」


 タマコが枝をモップ代わりにして外壁を磨いている光景を思い浮かべていると、シャーロットからサッサと出発しろと催促が。

 そうだな。船の様子は飛んでる間にも確認できる。

 今は移動が優先だろう。


 一旦タンポポ達に別れを告げ、全員で外に出る。


「飛空艇召喚!!」


 意味も無く張り上げた呼び声に応えるかのように現れるダンデライオン号。

 朝日に輝く白銀の姿が目に眩しい。

 それでも元通りになったその雄姿にしばし見惚れていると、シャーロットから再度せっつかれた。

 ハイハイ、すぐ行きますよ。


 エレベーターで船内に搭乗すると、再び待ち構えていたタンポポたちの歓迎を受ける。

 よう、さっきぶり。


 早速、船を発進させる。

 向かう先はタナム……ではなくウルザラ村だ。

 さすがのシャーロットも、事前に言い含めていたせいか騒がなかった。


 とはいえ内心は焦っているのであろうシャーロットの為にも急いで船を飛ばす。

 そのせいか五分と掛からずウルザラ村の例の荒らされた畑付近に到着することが出来た。


 早朝に近い時間帯とはいえ、起きている人は多い。

 目立たぬようサッサと飛空艇を送還すると、クレア達に村長を呼んできてもらうよう頼む。

 これから見せるのは、出来れば村長一人だけに留めたいからだ。


 残った俺・シャーロット・シュリ・ハマルは荒らされた畑を耕す。

 ただ単に「ごめんなさい」するより、現状回復させた方が心証が良さそうな気がしたからだ。

 もっとも農具などないから魔法でだけどな。


 先ずは本来のサイズに戻ったハマルが、ゴロゴロ転がり荒れ果てた畑を平らにならす。

 正直やらなくてもいい作業ではあるが、本人(?)の反省を示す為である。


 そうやって均された地面に、シャーロットの指導の元、シュリが土魔法で畝を作っていく。

 その間に俺はジャガイモを半分に切って切り口に灰をまぶしておいた。

 放置されていたせいか、いい感じに芽が出ていたので、きっといい種芋になってくれるだろう。


 その種芋を三人で植えていく。

 なんとなく農作業体験をしているようで、ちょっと楽しくなってきた。

 なお、ハマルはその図体ゆえ畑には立ち入り禁止となっている。


「あとは水くれだな。ハマル、頼んだぞ」

「……」

「ハマル、頼むっスよ」

「キュー」


 俺の、というかシュリのお願いに快く応えるハマル。

 ハイドレイクのハマルは水魔法が使えるらしいので、植え付けではなく水まきを担当して貰ったのだ。

 その鳴き声と共に、水球が現れさらに爆発する。


 これは魔法を失敗したのではなく、ワザと爆発させることでスプリンクラーの様に水をまくためだ。

 本当は水球を回転させ、遠心力で広範囲に水まきしたかったのだが、そこは数をこなすことで誤魔化そう。


 植え付け、水まき、と来ていよいよ真打の登場である。

 そもそもこの計画は、シャーロットが植物を急成長させる魔法が使えるからこそ、実行されたのだ。


 シャーロットは畑の前に陣取ると、目をつぶり集中していく。


「――!!」


 彼女の声にならない掛け声に、反応したのは出来たばかりの畑だった。

 ぴょこぴょこと土から芽を出すジャガイモ達。

 俺達が見ている間にもグングン成長していく光景は、某ジ〇リ映画のワンシーンのようだ。


「傘でも上下にするべきっスかね?」


 シュリも同じ事を思ってたようだ。

 となると、コマに乗って森と化した木々の周りを飛ぶシーンを、代わりに飛空艇でやれいいのか?


 だがそんな危惧は不要だった。

 ある程度生育ったたところで、その生長が止まったからだ。


「これ以上は土地の力が無くなって、イモの味が落ちてしまう。この程度に留めておこう」

「土地の力?」

「あぁ……ハマルが転がる事である程度は補充はしたのだが、それでもな」

「でも結構育ったようだし、いいんじゃないのか」

「そうだな。あと数日もすれば収穫できる筈だ」


 あのゴロゴロにも、ちゃんと意味があったようだ。

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