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第368話 泉へ戻ろう

「うーん……結構、派手にやられたようだな」

「ヤバそうっスか?」


 船視点上には損傷状況が表示されている。

 それによれば、強化外壁は強化と付くだけあってメタルイーターの浸食にも耐えていたようだが、通常の外壁はかなりヤバい状況だった。


 さすがに穴までは開いていなかったが、一番浸食の酷い場所の損耗率は八割を超えており、あのままでは時間の問題だっただろう事がうかがえる。

 そう思えば、一先ずの時間稼ぎにと展開した強化外壁ではあったが、それなりの効果はあったようだ。


「正直分からん。今の所、強化外壁で守られてるけど、出来れば早めに地上へ戻りたかったんだがな……」

「もう五分はとっくに過ぎてるっスよね」

「あぁ……とはいえ、あいつ等の気持ちも分かる。まぁ、もう少しだけ待ってやるさ」


 念のためにと、アラームは十分で鳴るようにセットしている。

 まぁ、あと三分で鳴る予定だけどな。

 それまでは俺達もこの絶景を楽しむとしよう。





「おーい、そろそろ降下するぞー」

『も、もう少し。あともう一アカリだけ』

「分かったー、とでも言うと思ったか?」


 シャーロットのたわ言など右から左へと聞き流し、飛空艇をユックリと降下させる。

 動き始めた飛空艇に、見張り台からブーブー言われたが当然無視。

 いっそ急降下させて、スカイダイビング気分でも味わわせてやろうか?


「ショータさん。なんか変な事考えてないっスか?」

「な、なにもかんがえてないですよ?」

「そうっスか……急降下させてスカイダイビングだーとか考えてる顔してたっス」

「そ、そんなことする訳ないだろう」

「そうっスよね。疑ってすまなかったっス」


 その後も、急降下させようかと考える度にシュリからジト目で見られ諦めるを繰り返し、ようやく元の森の上空に戻ってこれたのは、夕方になり始めた頃だった。


 依頼されていた、森の異変の調査。

 その真相がハイドレイク(ハマル)メタルイーター(スライム)るものだと判明はした。


 だったら大手を振って村に戻ってもいい筈なのだが、そこはそれ。

 一応、森に入って調査すると言った手前、日帰りで戻ってきてしまうのは外聞的によろしくない。


 俺としては「外聞も何も実際判明したんだからいいじゃん」と主張したが、シャーロットやクレアによって却下された。


「ショータ。人は必ずしも真実を知りたいわけでは無い。大抵は、知りたいことを知りたがるのだ」

「森が安全だと、早く分かった方がいいんじゃないのか?」

「それはもちろんだとも。だがそれは、私達がちゃんと森で調査しただろうと、彼らが思える程度の期間が必要だ」

「少なくとも、日帰り程度じゃ納得しない、って事か」


 スピード解決も善し悪しなのか。

 まぁ、物的証拠だったメタルイーターの氷漬けは、遥か上空でバラまいてしまったしな。

 村の住人であるクレア達から説明してもらい、更にハマルを見せれば納得してもらえるだろうが、それでも日帰りよりは一泊の方がいいそうだ。


 まぁ村に戻ったところで、寝る場所はバックドアだしな。

 そう思えば、森での一夜も大して変わらないだろう。





 飛空艇を泉上空に停止させると、エレベーターを使って地上へと戻る。

 この泉周辺は飛空艇が降下できる程広くは無かったが、召喚距離を延長していたおかげか、森よりも高い場所を指定すれば召喚可能だった。

 昇り降りもエレベーターなら関係ないしな。


 泉のほとりに全員が降り立ったことを確認すると、上空に停泊したままの飛空艇を送還する。

 出したままでは、また外敵に襲われる可能性があるからな。

 だったら出し入れできるという利点は、最大限に生かすべきだろう。


「だいぶ水が減ったな」

「そうですね……ここの水源は泉の底からの湧き水なんですが、これでは暫くは水場として使えないでしょう」


 ハマルとメタルイーターが入っていた分、水が溢れてしまったからな。

 ソイツ等がいなくなり、残った分といえば俺のヒザ程度しか残っていない。

 この泉が元の水量を取り戻すには、何日もかかるだろう。


「まぁ、バックドアがあれば関係ないけどな」

「そうっスよね。衣食住のうち、住環境は完璧っスよね」

「はっはっはっ。食環境もアレク君がいれば問題ないぞ」

「任せてください! 今夜も美味しい食事を作らせてもらいますよ」


 アレク君が気合を入れる。

 彼としても飛空艇の厨房設備で腕を振るうのが楽しくなって来たらしい。

 このまま専属コックとして引き込みたいところだが……


「なによ……そんなに睨まなくたって、感謝ぐらいしてるわよ」

「そうではないんだが……」


 クレアは絶対ウンと言わないだろうな。

 かといって、彼女達のパーティーとは目標が違うので、じゃあ一つのパーティーに、とはいかないだろう。

 選挙の度に合流だ解散だと騒ぐ政治家とは違うのだ。


 クレア達はどちらかというと討伐を主体とした依頼をしたいらしい。

 それに対し、俺達というかシャーロットは採取や配達など、討伐以外の依頼をメインにしたいという。

 ここ何回かは一緒に行動しているが、いつかは別れる時が来るだろう。


 ……まぁその辺は、その時が来たら考えよう。

 シャーロットにしろクレア達にしろ、そのうち心変わりするかもしれないしな。

 案外、ずっと一緒の未来だってありうるのだ。


「どうした? 壁の準備はとっくに出来ているぞ?」

「あぁ、スマン。ちょっと考え事してた」


 そんな事を考えているうちに、シャーロットがバックドア用の壁を用意してくれてた。

 泉からはそこそこ離れているし、ここなら外敵にも見つかりにくそうだ。

 早速、用意された土壁にバックドアを召喚する。


「バックドア、オープン!!」


 ………………

 …………

 ……


 あれ? 何で出てこない?

 ちょっとカッコつけて声に出してしまった手前、出ませんでしたでは格好がつかないんですけど。


 あ、いや、ドアは出てこなかったけど、なんかウィンドウが土壁に出たな。

 えーと、なになに……


『ただいまメンテナンス中です

 終了までお待ちください

 終了予定まで 23:56:34』


「え?」


 え?

18/01/31

外装→外壁

強化外装→強化外壁

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