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第360話 ハイドレイク

 ランドレイクというモンスターがいる。

 以前、馬車を引くトカゲがいるといったが、そのトカゲの事だ。

 いや正しくは馬車をのせるといった方がいいのかな。


 ランドレイクの背中に荷台をのせ、普通の馬車では通れないような悪路を走破するらしい。

 まともな道がない場所や、山岳地帯、さらにはダンジョン内など需要は多い。


 そんなランドレイクが牽くドレイク車が、ベスマの町からマウルーへ向かう途中、何者かに襲われたのが一週間ぐらい前にあったと、村長が話していたらしい(クレア談)。


 幸いというかは微妙だが、乗っていた御者は軽傷で荷物もマジックバッグに入れていたので人的被害はない。

 一番の被害は、驚いたランドレイクが、そのまま逃げてしまったことだろう。


 とはいえランドレイクは大人しいモンスターであり、足が速いだけで人を襲ったりはしない。

 御者も逃げられたことには嘆いていたが、逃げたとしてもせいぜい別の人間に捕まるか、魔物にでも食われるだろうと、特に探さなかったらしい。

 そのランドレイク自体、まだ子供で安かったってのも、諦めた理由のようだ。


 ちなみに成長したランドレイクは、馬の五倍ぐらいはするという。

 なので子供の頃に購入し、育てていくらしい。


 で、その逃げたランドレイクだが、ソイツは予想を裏切り生き延びることが出来た。

 その辺の草を食って飢えをしのぎ川の水で喉を潤したが、敵に対しては逃げる事しか出来なかった。


 逃げて、逃げて、逃げまくった。

 時にはその足で、時には森に隠れ、時には水に潜んだ。


 その途中、何が原因かは本人も覚えていないのだが、姿を消せるようになったらしい。

 そう、彼(?)はランドレイクからハイドレイクに進化したのだ。


 そんな話を本人(?)から聞き出した。

 通訳は例によってムツゴ〇ウなシャーロットさんである。

 元とはいえ魔王様には、大抵の魔物の言葉が分かるようだ。


 まぁ、本人(?)との意思疎通よりも、シャーロットから聞き出すほうが苦労したがな。

 だってアイツ、一人で「ウンウン、お前も苦労したんだなぁ」と納得しているだけで、俺達に全く話さなかったからな。

 国のトップだったとはいえ、組織に属していたなら「報・連・相」ぐらい身に着けて欲しいものだ。





 ハイドレイク。

 ランドレイクの進化先の一つであり、その名の通り隠れることに特化した能力を持つ。

 コイツは進化したてで『光学迷彩』のスキルしか持っていないが、さらに成長すれば『隠密』なども手に入れるという。


 これだけ聞くと、隠れるのに特化しただけのモンスターだな、としか思わない。

 だがコイツの真価は、騎乗している者にもその効果が及ぶことにある。

 隠密系のスキルを持たない者であっても、その恩恵にあずかれるのだ。


 例えば行商人。

 道中の身の安全は自身の武力か護衛を雇う事でしか保証できない。

 だが、商人が武芸を学んだところでタカが知れてるし、剣を振るうぐらいなら銭勘定していたいだろう。

 護衛は護衛で、腕が良いものほど大抵料金がかかるので、費用対効果がいいとは言いにくい。


 そこでハイドレイクの登場だ。

 その背にのせた者もろとも姿を消せるなら、街道の一騎掛けすら可能になる。

 まぁドラゴンなどには見破られるらしいが、だったら護衛を雇ってても一緒だろう。

  

 例えば軍関係。

 悪路をも走破し、さらに隠密性まで兼ね備えているのだ。

 斥候役には最適だろう。


 臆病な性格ゆえ戦争などには使いにくいらしいが、その能力だけでも価値は計り知れない。

 実際、魔王国の軍隊にはハイドレイクで構成された隠密部隊があるという。


 例えば冒険者のポーター。

 重い荷物だろうとものともしない、更には馬車ではいけないような場所にも連れていける。


 いざ戦闘になっても、馬車の場合は馬と荷台の両方を守る必要があるが、ハイドレイクなら勝手に隠れてくれる。

 まぁ、逃げないように手綱を固定するのに苦労するそうだが、それでも馬車よりはマシだろう。


 と、長々とハイドレイクの事を語ったが、要は高く売れるって事だけ分かればいい。

 なお、不思議な事に、人に飼われたランドレイクは、決してハイドレイクに進化しないそうだ。

 ついでに言えば、未だに進化条件が分かっておらず、自然発生する個体を捕獲する以外に手に入れる方法がないって事もな。


 しかも捕獲できたとしても、大抵は既に成長し完全に野生化している。

 そのため、人に慣らすところからのスタートなので、手間がかかるという。





 さて、それを踏まえて落とし穴に落ちた白トカゲを眺める。


 先程までは穴から出ようと暴れていたが、シャーロットの説得(物理も含む)により大人しくなっている。

 その時、念のためにと鑑定もしたらしい。


 ハイドレイクだと思って捕獲したら全くの別物でした、ではシャレにならないからな。

 もちろん本物だった。


「で……結局、コイツはどうすればいいんだ?」

ランドレイク……走るのが速いぞ。

ハイドレイク……隠れるのが上手いぞ。

サンドレイク……砂地に強いぞ。

アンドレイク……餡子が美味しいぞ。

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