第34話 串焼きサンド
思わず立ち去ってしまったが、本来の目的を思いだし行列に並ぶ。焼き手はおっちゃんと、身代わりで焼いてた人の二人体制になっていた。むしろ身代わりの人がメインで焼いている。
なぜ誰も何も言わないんだろうか?これが異世界の常識なのか?いつか俺も身代わりに店番をする時が来るのだろうか?そういや武器屋で品出しさせられてたな。
待ってるうちに、他の人と目が合うようになった。隈取の効果が切れたのかな?ステータスを確認したら、確かに付与の項目がなくなっていた。
よかったというべきか、戦闘では有効だったんだから残念だったというべきか。下手をすれば世捨て人になってたところだったから、よかったというべきだろう。
あ、そうだ、仮面に模様を描けば、戦闘の時にだけ被ればいいじゃん。いや、だめだ。模様がわからん。消える前に鏡で見とくんだった。次があったら鏡を見よう。無い方がいいけどな。
やっと順番が来た。あれ?値段が書いてある。しかも値上ってる。昨日は一本大銅貨1枚だったのに、今日は大銅貨1枚と銅貨5枚-なげぇ、大銅貨1.5枚でいいや―になってる。塩の分値上げしたのか。それでもこんなに混んでるんだから、妥当な値段なんだろう。
「お、さっきのニィチャン……だよな?もう持ってきてくれたのか?」
「いや、塩はまだだ。そもそも俺は串焼きを買いに来たんだよ」
「おぅ、そうだったんか。早く言えよ。何本だい?」
「二本くれ。あとついでにこのパンを半分に切って、ちょっと焼いてもらっていいか?で、焼けた串焼きを二本ともパンに挟んでくれ」
向こうも頼み事したんだ、こっちも頼んでみる。パンが2個あったから、それぞれに挟んでもらおう。
「は?このパンを?串焼きを挟めと? まぁ大した手間じゃないからいいけどよ」
おっちゃんは怪訝そうにしながらも、パンを受け取り焼き始める。この様子だとサンドイッチってまだないのか?たしかサンドイッチって、カードゲーム中に片手で食べられるようにって出来たんだっけ。具材をパンで挟むだけなんだから、誰か思いついてそうだけどな。
「ほい、お待たせ。こんな食べ方もあるんだな」
代金を支払い、串焼きサンドを受け取る。親切にも持ち帰り用の葉っぱで包んでくれた。二本だから大銅貨3枚出そうとしたら、こんなに繁盛したのも、ニィチャンのおかげだから2枚でいいと言われた。これも思わぬ幸運?
2つある串焼きサンドのうち一つを食べながら通りを歩く。もう一個は夕食用かな。飛空艇に泊まるだろうし。
しかしこれ、サンドっていうかバーガーだな。パンを上下に切って串焼きを挟んだせいか、ハンバーガーっぽくなってしまった。
でも串焼きの脂がパンに染みてていい感じだ。贅沢を言えばレタス系のシャキシャキ感が欲しいところだ。八百屋にあったかな?
しかし塩加減がいい。さすが俺の塩だ。ちがうな、おっちゃんの腕がいいんだろう。塩に反応した調理スキルは伊達じゃなかったようだ。
なんだか、みんなに見られてるような…。隈取は消えたよな?ステータスを確認したけど異常はなかった。自意識過剰と思い、逃げるように歩く。
「あいつが食ってるのは何だ?」「知らね、でも例の串焼き屋の方から来たような?」「例の串焼き屋?」「知らないのか?評判になってるだろ?急に味が変わったって」「じゃあ、そこの新作メニュー?」「かもしれないな」「行ってみるか?」「行ってみるか」
おっちゃん「パンで挟みたがる奴ら多すぎ!」