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第333話 トロール 再戦

 翌朝、俺は一人いつもの居室201で目が覚めた。

 夜中とかに逆夜這いされるようなイベントは起こらなかった。


 やはり、あの時「クジ引きなんぞ関係ねぇ!」と寝室に特攻するべきだったか。

 LV1のシュリはともかく、どう頑張ってもシャーロットに叩き出される未来しか想像できなかったが、時には無謀だと分かっていても突き進む勇気が必要だったか。


 だが収穫が無かった訳でもない。

 その為に他にも部屋があるのに、わざわざこの部屋を選んだのだからな。


 その収穫とは槍の修練だ。


 最近、真っ当に槍を使っていない、いや戦闘そのものをしていないと感じていた。

 先日、塩の平原に行く前にコッコゥは狩っていたし、その前のランペーロ狩りでも道中で遭遇したゴブリンの退治はしてはいる。


 ただし、それらはパーティーでの戦闘であり、余裕を持って対処していた。

 勿論、それが悪い事だとは思わない。

 安全マージンは十分に取るべきだし、怪我や死亡する危険のある強敵なんてまっぴらごめんである。


 そう言った意味ではシャーロットとの練習試合は有意義ではあったのだが、アレは格上過ぎて遊ばれてる感が半端ない。

 師匠からの手ほどきである以上、それも当然と言える。


 ……言えるのだが、少しは悔しい気持ちもある。

 やっぱ、負けっぱなしってのはイヤなんだよ。

 勝った負けたを繰り返し、切磋琢磨していく。

 それが練習試合ってものじゃないかな。


 そこで思い出したのが飛空艇の機能の一つ『機能:睡眠学習(戦闘)』だ。

 調査依頼での実戦に備えるためにも、コイツを使うことにしたのだ。






 夢の中では槍の素振りから始まり、コッコゥとのバトル、そしてトロール戦まで到達する事が出来た。

 前回に比べ多少の上達はしているが、なまっていると感じた部分もある。


 最近、タイマンでの戦闘をしていたかったせいか、コッコゥの突進をキチンと捌くことが出来なかった。

 アレク君達との共闘での俺は、いわゆるアタッカーのポジションだったので、相手の攻撃を受けたりしてなかったのが裏目に出たようだ。


 とっさにベルの盾使いを思い出しながら突進を受け止めてみたのだが、踏ん張りがきかずに吹き飛ばされる始末だった。

 これはいかんと、すぐにコッコゥステージをクリアするのをやめ、とにかく防御に専念することにした。


 時に躱し、時にいなし。突進を受け止めるべく踏ん張ってみたり、逆に押し返してみたり。

 その都度、勝手に身体が動く練習モードのおかげで感覚が分かり易かった。

 そして、すぐに自分で動いて防御する実践モードに切り替わるので、感覚を忘れないうちに練習することで、多少は上手くなった気になれた。


 少しだけ盾の使い方を知ったところでコッコゥステージをクリアした。

 学んだことを発揮するように、突進を盾で押し返すとそのまま槍を突き刺すと、コッコゥは煙となって消えた。


 その煙は大きくなると、やがてトロールとなる。

 前回は空が黒くなった後、コイツに叩き潰されて終了したのだが、空は紫のままだ。

 つまり、まだまだ時間はある。


 あの時はギリギリ、いやシャーロットの援護がなければ負けていただろう。

 そんな奴を相手にどれだけ戦えるようになったのか。

 その答えを得るために、トロールに挑んでいった。


 トロールが振り下ろす棍棒を盾で受け流し、その反動も利用して槍を繰り出す。

 思ったよりも深く突き刺さったが、抜けない程ではない。

 盾を押し付けるようにして槍を抜くと、一旦距離を取る。


 よし、十分戦えている。

 さっきの練習の成果か、棍棒にもちゃんと盾で対処できた。

 槍の攻撃も、片手の割にはちゃんと攻撃になっていた。

 夢のせいか、概観視を使っていても頭が痛くならない。


 苦戦したせいか強敵だったイメージのトロールだが、それほどでもなく感じるのは俺が強くなっているからか。

 レベルやスキルも上がっているし、朝練もやっている。

 努力の成果が実を結んでいるってことか。


 と己惚れたところでトロールが振り回した腕にアッサリ吹き飛ばされる。

 まぁそうは問屋が卸さないよな。

 転がったまま反省していると、そこにトロールの足の裏が降って来た。


「そぉおい!!」


 おいおい、コッコゥの時は追撃とか無かったのに、トロールだとやってくるのか。

 ゴロゴロと転がり奴の踏みつけを躱す。

 なんとか起き上がるが、トロールは踏みつけた姿勢のままだ。


 罠か?

 先程の反省を踏まえ、警戒しながら槍を構えるが、トロールはそのまま定位置へ戻っていった。


 なるほど……追撃はしてくるが、一回だけって事か。

 妙なところで練習っぽさを出してくる。


 だがそれがありがたい。

 追撃も無いような温さでは練習にならないが、容赦なく攻め立てられるのも困るからな。

 そんなのはシャーロット一人で十分だ。


 そんな感じで一進一退の攻防、あるいは泥仕合を繰り広げていたが、どうにか勝利することが出来た。

 勝因は痛みを感じなかった身体だな。

 吹っ飛ばされようが何しようが、衝撃だけで傷もつかず装備も壊れなかった。

 それに対し、トロールはダメージが蓄積され、次第に動きも鈍くなっていった。

 なんて不公平な……とも思うが、練習ってそんなもんだよな。


 初期状態とは雲泥の差となった棍棒の振り下ろしを、概観視を使うこともなく躱し、そのまま槍をトロールの胸に突き刺す。

 それがトドメとなったらしく、トロールは煙となって消えた。


 やがて空は黒く染まり、『TIME OVER』の文字が現れ、さらにはピピピ……というアラーム音まで鳴り響く。

 まぁそうだよな。流石に時間をかけすぎた。


 トロールだった煙は別の形――あれはランペーロだな――に変わると、猛突進して来た。

 思わず盾を構えそうになるが、身体はピクリとも動かない。

 異世界転生すら出来そうな衝撃で跳ね飛ばされた俺は、そのまま目覚ましのアラームが鳴る音を聞いた。


 そうか……睡眠学習に目覚まし機能を組み合わせると、朝の目覚めがアレになるのか。

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