第33話 塩を売る
ギルドに戻り、コッコゥの納品を済ます。報酬は銀貨4枚だった。本来の報酬は銀貨3枚と大銅貨5枚だったけど、血抜きによる評価アップ銀貨4枚になった。これで所持金は銀貨7枚と大銅貨2枚。なおゴブリンは魔石のみの買取で大銅貨8枚。心臓の中にあるそうだ。
大抵の魔物は、心臓部か魔力の集中してる所に魔石を持ってるから、覚えておくといいよと教わった。魔力の集中してる所ってどこだよ。
ギルドを出る。すでに太陽は中天に差し掛かっている。昼飯にしするか。昨日買ったパンを取り出す。だがカッチカチのパンだけだと侘しい。そうだ、昨日の串焼きを間に挟んで食べよう。
大通りから路地に入る。確かこっちだったよな?とウロウロすると、あの匂いが漂ってきた。
あったあった。あの串焼き屋だ。げ、混んでるじゃん。別のとこにするか、と来た道を戻ろうとしたとき、串焼き屋のおっちゃんがこっちを向いた。そして目を逸らされた。でもまた見た。
「おい、そこの隈取のニィチャン。ちょっと待ってくれ!」
おいおい、客も串焼きも放り出して来たぞ。いいのかよ。おっちゃんもそれに気付いたのか、並んでた客の一人に焼かせ始める。頼まれた客も慣れた手さばきで焼き始めた。
「大分人相が変わっちゃいるが、昨日のニィチャンだろ?頼みがあるんだ。ちょっとこっちに来てくれ」
強引に店の裏手に連れ込まれる。
「なぁあの塩、もっと持ってないか?もし持ってたら是非売ってくれ」
聞けばあの塩を使って串焼きを焼いたら、美味いと評判になり行列ができるほどになったそうだ。仕込んでおいたコッコゥの在庫が無くなり、慌ててギルドに発注したとか。あの依頼はおっちゃんが出したのか。
「なぁ頼むよ。昨日の量じゃすぐになくなっちまう。あの味を知っちまったら今までの塩なんか、月とスッポンだ。頼む!売ってくれ!」
スッポンいるのか。それとも言語理解が異世界のことわざを、日本のことわざに上手いことあてはめてるだけか。
うーむ飛空艇に戻れば甕に入れたのがあるし、足りなければ塩の平原まで取りに行けばいい。でも出所を知られるのはなぁ。このやり取りだけでも、勘のいい人なら気が付くだろうし。
「ええっと、売るのは構わないのですが条件があります」
「おう、なんだ?さすがに娘はやれないぞ」
俺だって塩でお宅の娘さんをもらいたくはないよ。美人だったら……いやそれでもだめだよ。
「俺も遠慮しと「なんだと?!うちの娘がいらないってのか?!」き……そうじゃないです、塩とお宅の娘さんを交換すること自体が間違ってるからです」
「なら、そういえよ。で、条件ってのはなんだよ」
「塩の出所が俺だ、ってことを秘密にしてもらうことです。その条件でよければお売りしますよ」
「なんだそんなことか。じゃあ飛び込みの行商人から買ったことにするよ。それでいいか?」
「了解です。今手元にはないので、明日でもいいですか?」
「うーん、明日かぁ。なんとか持たせてみるよ。でも出来れば早めに来てくれよ」
「わかりました、明日これぐらいの甕で持ってきますよ」
「おお、それだけあれば、しばらくは持つな。じゃあ頼んだぞ」
「はい、では明日」
そういって俺はおっちゃんと別れた。




