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第321話 赤くは塗り替えません

「じゃあ飛べるだけ飛んでみて、ダメだったら野営ってことでいいな?」

「まぁその辺が無難な所でしょうね」

「そうっスね~」

……(コクコク)

「じゃあボクは夕食の準備を……」

「……ショータ。訓練するのは夜間飛行だけでいいのか?」


 くっ、シャーロットめ……触れて欲しくないから黙ってたのに、気付いてやがったか。

 だが他のみんなはまだあの事に気付いていない。

 ここは俺も気付いていないフリをして素っと惚けよう。


「……何のことだ?」

「飛竜から逃げた時の事を忘れたわけではあるまい? あの時この船はどうやって逃げた?」

「飛竜? 確かあの時は船が急に動き出して……それで気が付いたらショータが訳の分からない事を言ってたわね」


 やっぱり気付いてたか。

 確かにブースターを使えば日没前に着くことも可能だろう。だが……


「アレは危険すぎる。あの時は緊急事態だったし、音速まで超えるとは思ってなかった」

「音速? まさかこの船、音速まで出せるっスか?」


 イマイチ話について来れないシュリに、飛竜に襲われた時の事をザッっと教えてやる。

 迷い人の彼女なら音速を超えることの恐ろしさは分かっているだろう。

 実際「音速ってマジっすか……」と戦慄していたし。


 そう、それだけ音速の壁はヤバいのだ。

 これでも一時パイロットを夢見た事があるだけに、その事は良く分かっている。

 戦闘機なら普通に超えるし、普通の旅客機も音速に近い速度で飛んでいる。


 音速、つまり一秒で三百m以上進むのだ。

 それだけ瞬間的な判断力も必要だし、その為の厳しい訓練だってある。


「そんな速度で飛ぶんだぞ? 俺には無理だ」

「だからこそ、訓練するべきではないのか?」

「……ダメだ。もしやるとしても、俺だけでやる」

「……そうか」


 あの時助かったのはタダの偶然で、一歩間違えれば地上に激突して死んでた。

 あれしか手が無かった訳だし、飛竜に捕まればどのみち全滅してだろう、ってのはタダの逃げだ。

 俺一人がドジ踏んで死ぬのは自業自得で諦めがつくが、それに他の奴らを巻き込むのは無責任すぎる。

 せめてフライトシミュレーターでもあればな……後でタンポポに確認してみるか。


「それにあの時みたいな急加速に耐えられるのか?」

「そうか……それもあったな」


 あの急加速こそ、俺がブースターを使いたくない最大の理由だ。

 せめてもう少しゆっくり加速してくれればまだマシなんだけど、あれ程のGは何度も味わいたくない。

 先程あった戦闘機の訓練の中には、意識が飛ぶほどの急加速に耐える訓練もあるそうだし、旅客機が音速に近い速度で飛んでいても、客が耐えられるのはゆっくりとした加速だからだ。


 つーか、あのブースターって、ゼロか百しかないのか?

 いきなりフルスロットルだと、人員もそうだが船内に置いてある家具とかが倒れて危険だろうに。

 それとも家具とかは固定されてるから大丈夫なのか?

 まぁ魔法がある世界だし、その辺は飛空艇の不思議パワーで何とかしてるのかね。


「まぁとにかく、ブースターによる飛行は無しだ」

「分かった。だが通常の飛行速度はもう少し上げられるのではないのか?」

「……まぁそれ位はなんとかなるか」


 飛空艇の操縦にも多少は慣れて来たし、今なら操縦アシストもある。

 これまでは自動車程度で飛ばしていたが、新幹線ぐらいまでは出せるだろう。

 つまり通常の三倍……これはダンデライオン号に角でも付けるべきか?

 いや、あれは指揮官だから付けてるんだったか。


「それでも今からじゃ着くのは日没頃だろうな」

「そうか……そう言う事らしいが、どうする?」

「日没頃ですか……それなら夜は実家の家族に会えますね」

「そうだな」


 アレク君達にとっては数週間ぶりの帰省だし積もる話もあるだろう。

 それに家族同士なら調査依頼の件も聞きやすい。

 夜の内にある程度情報を仕入れておけば、翌朝動きやすくもなる。


「そのためにも、もっと早く着かないとだな」

「あぁ、任せたぞ」

「おう……って、シャーロット。お前も操縦……いや、何でもない」


 コイツに操縦を任せたら、それこそ重大事故になりそうだ。

 しんどいがここは俺が頑張るとしよう。


 当面の方針が決まったところで、各々目的の場所へ向かう。


 アレク君達は厨房で夕食の仕込み。

 皮から作るらしいし数もあるから三人に頑張ってもらおう。


 なお、「日没頃には着くんだし、村でご馳走になればいいのでは?」と聞いてみたけど、「急に行ったって用意してる訳ないでしょ」だった。

 そういえば、さっきそんな事も言ってたな。


 どっちにしろ自分達の分は自分達で用意するなら、ココの厨房の方が楽ってことか。


 で、残った俺達は操縦室行きだ。

 俺とシャーロットで操縦。勿論俺がメインだ。

 シャーロットが担当の時は、俺と操縦アシストの二人(?)体制で彼女をサポートする。

 シュリは正直やれることはないので遊んでいてもいいのだが、一人だけブラブラしてるのも気まずいらしく、俺達と一緒に居るそうだ。





 って結局、夜間飛行の話はどうなった?!

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