第32話 隈取
初めて人型のモンスターを殺す。もっと嫌悪感を抱くかと思ってたが、不思議と心は落ち着いたままだった。
背中から襲ったので、相手の顔を見ずに済んだせいだろうか。それとも異世界に来てどこか心が壊れてしまったのだろうか。ゴブリンの血が青かったから現実感がわかなかった。
ゴブリンの周辺には、見慣れない雑草が散らばってる。これを採りに人の住む町まで来たのかもしれない。この草は、誰かに届けるためのものだったのだろうか。
ゴブリンに止めを刺したとき、力が漲る感じがした。ひょっとして、これがレベルアップなのだろうか?確認のためステータスを開く。
名前:ショータ(20歳)
種族:人族(男)
職業:冒険者兼飛空艇船長
LV:2 (1)
HP:26/26 (18)
MP:18/18 (10)
SP:14/14 (10)
STR:5 (2)
VIT:3 (1)
DEX:7 (3)
AGI:4 (2)
INT:9 (5)
MND:6 (3)
LUC:吉 (思わぬ幸運あり)
スキル:言語理解Lv1 飛空艇召喚Lv2 槍術Lv1(new)
称号:迷い人
付与:威圧の隈取(相手から目を逸らされる)
やった、LVが上がってる。ステータスの横のカッコは前の数字だろう。ほぼ倍だな。元が低かったともいうが。思わぬ幸運ってさっきのことかな。
先程いい感じの攻撃が出せたのは、槍術が生えたからか。いやあの攻撃が出せたから、槍術がLv1になったのかもしれない。
さて問題は付与だ。いつの間についたんだろう。今まで目を逸らされてたのは、こいつの効果か。俺のイケメンパワーが発揮されてたわけではないようだ。
受付嬢が言ってたクマとは隈取のことだったのか。え?顔に隈取?隈取ってあれだろ?歌舞伎役者が顔に描いてるアレだろ?俺、あの隈取して、今まで過ごしてたってこと?効果がなくても目を逸らされるよ。
しばらく羞恥心に悶える。穴があったら入りたい時って、こんなときだろう。この隈取、消えるんだろうな。一生このままだったら、世捨て人になるしかない。
だが恥ずかしいことを我慢すれば、この効果は使えるだろう。目を逸らされるということは、戦いにおいて非常に有効だ。試しにコッコゥと正面から戦ってみたが、時々俺から目を逸らし、致命的なスキをさらしていた。
ボーラとこの隈取があれば、コッコゥは敵じゃない。槍捌きも、ちょっと上手くなって来た気がする。これは次の獲物に向かう時が来たのかもしれない。
でもその前に、このコッコゥとゴブリンを何とかしないとな。5羽ともなるとかなり重い。さっさと納品しよう。
だけどゴブリンってどうすりゃいいんだ?このまま持ってくのか?魔石がどうとか言ってた覚えがあるけど、どこにあるんだ?抉り出すの?こいつから?俺が?
無理無理無理。金にならなくてもいいから、このまま置いてこう。コッコゥはニワトリだと思い込めたし、血抜きだけだったから、なんとかなったけど、ゴブリンは無理。すまん名もなきゴブリンよ。成仏してくれ。




