表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
319/1407

第319話 船内をフラフラ

 飛空艇は順調に進んでいく。

 心配していた飛竜の襲撃もなく、長閑のどかな昼過ぎの空を優雅に飛んでいく。

 長閑すぎてちょっとうたた寝してしまった程だ。

 我ながら緊張感がないなー、と反省する。

 それもこれもフカフカのシートと自動操縦のせいだ、と責任転嫁しておこう。


 いつの間にか掛けられていた毛布を手に、俺だけが取り残されていた操縦室から出る。

 寝てたならともかく、起きてるのに一人ボッチは寂しいからな。


 誰かいないかなぁ、と船内をフラフラ歩く。

 船視点から船内マップを見ればすぐに会えるだろうが、それはそれで味気ない。

 偶然出会うのがおもむきというものである。





 勘に任せまずは大浴場へ向かう……誰もいない。

 浴槽にお湯はなく、サウナも使われた様子がない。

 無論、脱衣所にあるマッサージチェアにも誰もいなかった。


 おかしい……スーパー風呂人ふろんちゅ3なシャーロットなら、確実にいると思ってたのに。

 無人、無湯の浴槽で一人ガックリとする俺。


 その時、背後でガラガラガラと扉の開く音がする。

 誰かが入って来た!


 現在この船には俺以外に五人の女性(一部両方あり)が乗っており、その誰もが美人、美少女である(一部両方ry)。

 そして入浴に際し、全裸もしくは湯浴み着を着用して入るのは当たり前の事。

 つまり振り返ればパラダイスな光景(一部ry)が待っているのだ。


 そう結論付けた俺は、素早くはあるがガッツキ過ぎないよう振り返る。

 その視線の先には――






 なぜか枝で己の体を隠そうとするタマコが居た。

 って、お前は基本全裸だろうが……なぜ無駄に色っぽい感じで隠そうとする。

 入浴時には全てをさらけ出しているシャーロットに見習わせてやりたいぐらいの色っぽさだ。

 アイツのは眼福っちゃ眼福なんだが、ああも恥じらいもなく入られると、こっちが遠慮してしまう。


「……もしかして風呂に入りに来たのか?」


 タマコのモサっとした葉っぱが縦に揺れる。

 たぶん頷いているのだろう。

 植物のくせに入浴の習慣があるの? それとも根っこから水分を吸収するため?

 トレントの生態の謎が深まった気もするが、この船で面倒見ると決めた以上、コイツの世話は俺の義務だ。


『MP4でお湯張りしますか? MP45/55』


 仮眠が良かったのか、朝方半分以下まで減らしてた筈のMPがここまで回復している。

 これなら十分だな、とYESボタンをムニュッとする。

 そういえば、二週間近くダンデライオン号で入浴してるが、いつもはシャーロットがお湯張りをやっているから、何気に俺がお湯張りするのは初めてだ。


 妙な感慨に浸る間もなく、一瞬にして浴槽にお湯が張られ、ライオンからはドバドバとお湯が流れ出す。

 その様子を確認したタマコは、キチンと掛け湯をしてから湯船へと入っていく。

 その洗練された入浴マナーに、タマコの爪の垢でも煎じてシャーロットに飲ませてやりたいほどである。

 いっそ、爪の垢の代わりに葉っぱを煎じてみるか?


 そんなタマコの活用方法に頭を捻らせてしまうのも、眼前の光景が『一本の樹が風呂に入っている』というシュールな光景のせいだろう。

 そんな光景から逃げるように大浴場を後にした俺はそのままリビングへ向かう。

 タマコはもうしばらく入浴していくらしい。


 果たしてリビングには全員が揃っていた。

 ミカン代わりのオレンジを食べつつ、コタツでグダっているようだ。


 俺はコタツの一番奥、短手方向の所謂お誕生日席が丁度空いていたのでそこに座る。

 だが流石に六人もコタツに入ったうえ、各々が好き勝手に足を延ばすとギュウギュウになってしまう。

 これはこれでコタツの醍醐味なんだけど、さっきから俺の脚を蹴ってくる奴がいるんだよな。

 誰とは言わないが、頭にクが付くお前の事だよ。


 何食わぬ顔でゲシゲシ蹴ってきやがって……俺が女性に蹴られて喜ぶような性癖の持ち主だったら「いいぞ、もっとやれ」とでも言うんだろうが、お生憎様。

 俺は至ってノーマルだからな。

 むしろやられたことはやり返す派だ。


 とりあえずゲシゲシ蹴り付けるクレアの足首を掴む。

 急に足首を掴まれたクレアが騒ぎ始めるがもう遅い。

 このまま足の裏をくすぐろうがつねろうが思いのままだ。


 俺の悪そうな笑顔に一抹の不安を感じたクレアは、先程まで騒いでいたのを一変させると急にしおらしく謝ってきた。

 うんうん、そうだねーと頷いて見せるが、勿論足首を解放することはない。

 既に判決は下されており、あとは刑を執行するだけなのだ。


「~~~~!!」


 クレアが声にならない悲鳴を上げる。

 指の付け根から土踏まず、更にはかかとの裏までグリグリとしてやる。

 姉のマッサージをしていた俺にとって、足ツボマッサージは当然習得しているからな。

 遠慮なく施術されるといいぞ。


 クレアはあまりの痛みにジタバタもがくが、その足首が解放されることはない。

 むしろ反対側の足をつかんで、再度マッサージをしてやる。

 暴れる足を掴むのも、姉の時に散々やってるからな。


 しばらくグリグリしてやっていたが、やがてクレアがぐったりして来たのでマッサージを終了してやる。

 これだけ見せしめにやっとけば、これからも蹴られることは無いだろう。


 とはいえ狭くて足が当たるのも事実だ。

 何とかならないかね……


『MP1を消費して「機能:掘り炬燵」を開放しますか? MP41/55』


 勿論開放しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ