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第31話 クマ

 宿を出て、急いで冒険者ギルドへ向かう。より良い依頼を受けたければ早い時間に行くといい。そうアドバイスをもらってた気がする。贋金を掴ませたかもしれないシャーロットから、逃げたわけではない。


 ギルドの中は混みあっていた。考えることは同じらしく、依頼の掲示板の前には人だかりで、依頼が碌に見えない。

 特にそこのお前、お前だよ。ただでさえデカい図体なのに、暑苦しそうな金属鎧着て、背中に重そうな大剣なんぞ背負いやがって、掲示板が見えないだろうが。その恰好は俺への当てつけか!

 周りの視線もソイツに集まってるせいか、近くにいる俺まで周りから見られてる気がする。でも視線の感じる方へ振り向いても、誰も見てないんだよな。自意識過剰なのかな?


 しばらく掲示板の前をウロウロしてたら、人がまばらになってきた。やっと落ち着いて依頼が見られる。昨日は美人が横にいて、そっちの方に気が取られてたからな。

 お、コッコゥの依頼がある。常設依頼にもあるのになんでだろ?まぁいいか、今日もコッコゥにしようか。昨日寝ながら思いついたアイデアもあるし。依頼票を剥がして、受付に並ぶ。ピークの時間が過ぎたせいか、すぐに順番が来た。あ、昨日の受付嬢だ。目は逸らされなかった。大分泳いでたけど。


「おはようございます、この依頼の受付をお願いします」

「かしこまりました、ギルド証の提示をお願いします。…ハイ確認できました。ショータ様、コッコゥ5羽よろしくお願いします」

「あの、常設依頼があるのに、なんでこの依頼があるんですか?」

「常設だといつ手に入るかわからないからです。依頼主は明かせませんが、至急必要になったそうです」


 へー、そんなパターンもあるんだ。


「あの……ショータ様。そのお顔、大丈夫ですか?」


 ぐ、また顔か。さっきといい、どこかおかしいのだろうか?


「あの、そんなにひどいですか?」

「ええと、そうですね。ちょっと心配になります」


 マジか!? 俺の顔って、他の人が心配になるレベルなの?!


「いえ、お顔そのものではなく、お顔のクマが……」

「クマ?」


 クマって、そんな餌に俺がつられクマーのクマ?いや熊のこと?


「あの…特に目の周りが…」


 熊が目の周りに?あぁ隈のことか。睡眠が足りてなかったのかな?雑魚寝だったしな。繊細な俺には耐えきれなかったようだ。


「大丈夫だ。問題ない」


 今夜は飛空艇で寝るとしよう。そうだ、いっそ寝室を開放してみるか。きっといい夢が見られそうな気がする。


「そうですか。早く消えるといいですね」


 受付嬢に礼を言ってギルドを後にする。


 ギルドを後にした俺は、さっそくコッコゥを倒すべく北門へを向かう。門番にギルド証を見せた時も、目を逸らされた。よっぽど酷いクマのようだ。


 草原に出る。ここからは命懸けだ。装備のベルトを締めなおす。そうだ、昨日のアイデアを早速やってみよう。




 はい、やってみました。これはいいね。ヒトの生み出した究極の武器だ。いいすぎだな。せいぜい『これはいいものだ』程度だな。

 石を二つヒモで結び、振り回してから投げる。そう、ボーラだ。多少外れてもヒモが上手いこと相手に絡み、そのまま動きを封じる。そのスキに槍でブスッっと。

 TVで見たのを思い出して真似してみたが、思いのほかよかった。何よりも安上がりなのがいい。外して無くなっても、悔しくないし。


 コッコゥを倒した後、ナムナムと手を合わせる。自分で命を奪っておいて、と思うが気分的なものだ。この『異世界アルカナ』で生きてく以上、命を奪い合うことは必然のことかもしれない。

 けど、そのことに慣れて何も感じなくなるのは間違ってる気がする。お祈りの仕方はいい加減だ。大体、この世界の宗教もわからんしな。自己満足のために祈るだけだ。


 二羽目、三羽目と順調に狩っていく。4羽目では調子に乗り、勢いよく振り回した結果、見当違いの方に飛んで行ってしまった。


 だがそれは想定内のこと。なんせ初めて使うんだ、こんなことは十分起こる。今までが良すぎたぐらいだ。落ち着いて盾を構え、攻撃をさばく。なんだかコッコゥにまで目を逸らされてるような。気にしすぎか?まぁ昨日も含めて9羽目ともなれば、多少は慣れてきたせいかもしれない。ある意味初心者には最適な獲物といえよう。


 盾で押し返してコッコゥのバランスを崩し、そのスキめがけて素早く槍を突き出す。お?今のよくね?ゲームでいうならクリティカルヒット!ってかんじだ。

 あっさり絶命するコッコゥ。ナムナムと手を合わせた後、さっきのおさらいする。うーん、なんか違う。ひねりが甘いのかな?


 おっといかん。ボーラを回収しなくては。確かこっちに投げたよな?


 ガサガサガサッ!


 物音がする。何かがもがいてるようだ。盾を構え、慎重に近づく。

 いた。緑色の肌、小さな体、手には棍棒を持っていたようだが手放して、ボーラを外そうともがいている。ゴブリンだ。

 ボーラを外すのに必死で、こちらには全く気が付いていないようだ。背後から近づき槍を突き出す。昨日からこんな勝ち方ばっかだな。

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