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第28話 魔王

説明回ー

 大部屋に戻る。あれ?俺のリュックは?布団の上に置いといたはずが、見つからない。代わりに髭ダルマがイビキをかいて寝ている。ぬぅ。蹴とばしてやろうか。


「やめとけ、そこはそいつの指定席だ。一泊だけの奴らの寝床は、あっちだ」


振り向けば嘆きの兄ちゃん。さっきぶりだな。つか酒臭い。酒なんて出てたか?


「大部屋でも連泊用と一泊用で寝床が違うんだよ。おまえだって、いつも寝てる寝床が、誰かに取られるのとか嫌だろ?」


 確かにそれは嫌だ。行きつけの飯屋で定位置の席が取られてると、がっかりするし。


「サンキュー、さすが情報屋」

「サンキューってなんだ?つか情報屋じゃねぇよ!」

「あれ?通じないのかな。ありがとうって意味だよ。ついでにもう一つ聞いてもいい?」

 

 結局一つどころか幾つも聞いてしまったが、ヤツは酔ってるせいか、渋々ながらもちゃんと教えてくれた。

 とりあえず地名。と言っても東の川がハルワケイレス川とか、隣町がべスマだとかこの辺の地名ぐらいだけどな。ヤツも「他所から来たんじゃな」といって快く教えてくれた。

 あとは、北の森が魔の森だとか、塩の平原があった山の名前が魔の山だとか。魔ばっかじゃねぇかと思ってたら理由があるそうだ。


「数百年前に、北にある魔王国との戦争がこの地であったんだ。当時北には山はなんぞなくて、むしろ海だったんだ。海って知ってるか?ものすごくでっかい水たまりで、すごくしょっぱいんだ。何?見たことある?ほー、アンタ西の方から来たんか。


 まぁいいや。山の話な。いや海か。でな、グアラティアと魔王国が、なにグアラティアって何だと?この国の名前に決まってるだろ。そんなことも知らないのか。あぁ、遠いとこから来たんだっけか。何だっけ?そうだった、戦争の話な。


 戦争つっても船同士のドンパチだけどな。こっちの船には勇者様が、向こうの船には四天王全員が乗ってたんだよ。初めは勇者様の方が優勢だったんだけど、四天王の一人がとんでもない土魔法で、海を山に変えちまったんだ。それでこっちの軍勢は壊滅。勇者様は行方不明。余波で津波まで発生して、この町も滅んだんだ。


 そしてその功績で、山を造った奴が魔王になったって話だ。だからあの山は魔王が造った山、つまり魔の山と呼ばれている」


 長々と話してたが、要は魔王があの山を造ったってことか。魔王すげぇな。ここんとこ、すげぇなが多い。俺すげぇな。ちなみに現在は魔王国とも和平が成立し、交流もあるそうだ。そういや門番に魔族でもないし、とか言われてたな。


「ついでに言うと、あの森は山ができた後すぐに木が生えてきた。さらに魔物まで出没するようになったから、魔王国の仕業じゃないのかって話だ。俺はあそこにダンジョンがあるせいだと思ってるけどな」


 それで魔の森と。しかし勇者と魔王か。さすがファンタジー。さすファンだ。絶対に関わりたくないな。


「ダンジョン?この辺にもダンジョンがあるのか?」

「お前、それぐらい知っとけよな。辺境の割にここが栄えているのはダンジョンがあるおかげだぞ」


 そういやフランさんも、近くにダンジョンがあるって言ってたな。さすファンアゲイン。


「へぇー、でダンジョンって何よ?」

「はぁ?バッカ、おめぇダンジョンはダンジョンに決まってるだろうが。ダンジョンの上にダンジョンはなく、ダンジョンの下にダンジョンはあるって格言聞いたことないのか?」


 それだとダンジョンの上にもダンジョンはあることになるんだが・・・。


「この意味はな、踏破したと思ったら、さらに別のダンジョンがあった。つまり油断するなってことだ」


 意外と為になる格言だったー。

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