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第275話 新たな味わい

 切り分けたコッコゥの塩釜焼きを皆に配っていく。

 こうやって獲物を分配することで、家長の威厳を保っているんだとか。

 家長っつーか船長の威厳か。

 獲物の切り分けが船長の威厳に繋がるかは謎だがな。


 胸肉は俺、クレア、アレク君に。

 両腿はシャーロットとベルが持っていった。

 というか、ナイフとフォークでモモ肉の切り分けとか俺には無理。

 せいぜい手で胴体部から切り離すのが手一杯だった。


 ニワトリよりも一回りはデカいコッコゥ。

 そのモモ肉ともなれば、クレアの顔位はある。

 そんな特大モモ肉に、手掴みで齧り付く美女二人。

 実にシュールではあるが、当の二人は幸せそうな顔で食べている。


 おっと、二人に見惚れている場合じゃない。

 俺も食べるとしよう。


 自分の皿に取り分けた胸肉を、優雅に振るったナイフとフォークで一口大に切り分ける。

 それは当然の事だろう。

 なぜなら俺は手掴みで食べるよな蛮族ではないのだからな。


 切り分けた肉を優雅な仕草で頬張り、じっくりとその味を堪能する。

 これも当たり前のことである。

 とにかく腹一杯食えればいい様な野蛮人とは違うのだ。


 まぁ原始人二人の事は、この際放っておこう。

 それよりも、料理と向き合うことが大切だ。


 一般にトリの胸肉というのは、モモ肉に比べ脂が少なく、ともすればパサついた食感すら感じることもある。

 だがそんな胸肉も、塩釜を使って上手に蒸し焼きにしたことで、しっとりとした食感になった。

 脂が少なく淡白な味わいだが、逆にそれがアレク君特製のブレンドハーブによくマッチしている。


 だがやっぱり脂も食べたい。

 そんな思いに応えるのがコッコゥの尻の部分、いわゆるボンジリだ。

 この部位はとにかく脂がノリノリなのだ。

 ただ尻の先っちょ部分にしかなく、俺達三人で切り分けると一口分ぐらいしかない。

 そんな希少部位をじっくりと味わっていく。


 おっと、メインの塩釜焼き以外に、スープの事も忘れてはいけない。

 昼食の時から作り始めていたチキンスープ。

 トリガラや胸肉をベースに、野菜がたっぷり入っている。

 同じコッコゥでも、塩釜焼きとスープでは味が全然違う。

 むしろ同じ食材を使う事で、味にハーモニーが生まれているのだ。


 ……うん、俺には詩人の才能だけでなく、食レポの才能も無い様だ。

 まぁとにかく全部美味かったです。




 食事が終われば、当然のごとく全員で風呂場に向かう。

 何度も一緒に入ったことで感覚がマヒしてきたのか、あるいは湯浴み着のお陰か。

 誰一人混浴の事を騒ぐこともなく、全員で湯船に浸かる。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 誰もが湯船の先にある光景に見惚れている。

 窓、いや風防障壁の先にある星々の輝き。

 半月となった月。

 それらが水平線を隔てて鏡写しになる光景。


 日中の青、夕焼けの赤、そして夜空の黒。

 天空の鏡は、またも姿を変え、俺達にその魅力を見せつけてくれたようだ。


「ショータ……ここに連れて来てくれてありがとう」

「あぁ、俺もお前にこの景色を見せることが出来て嬉しかった」


 普段の俺では到底出て来そうにない台詞も、自然と口にできる。

 それだけの力が、この星空にはあった。


 よし、この状況ならヤれる!

 といいたいところだが、流石にお邪魔虫(三人)の居る前で……って、いない?


「クレア達なら、ベルがのぼせたといって出て行ったぞ」

「そうなのか?」


 どうやら星空が織り成す一大スペクタクルに俺が見惚れている間に、ベルがのぼせていたらしい。

 アレク君とクレアも、その看護の為風呂から上がっていった。

 つまり、この場には俺とシャーロットの二人っきり。

 これは覚悟を決める他ないだろう。


「シャロ」

「な、なんだ急に?!」


 シャーロットの肩を掴み、彼女と正対する。

 彼女の顔を正面から見据える。

 改めてみるが、やはり美人である。

 こんな美人と一緒のパーティーを組めているだけで、一生分の運を使い切ってそうだ。


 あれ? 仮に今告白するとするよな?

 上手く行けば、そのまま朝チュンコースすら可能だろうが、逆の場合は?

 告白玉砕パターンだと、気まずくね?

 町中なら別々に行動できるが、飛空艇内じゃ明日までは一緒のままだ。


 彼女の反応を見る限り、脈はあるだろう。

 それとも異性と感じていないからこその、混浴なのか?

 となると告白して玉砕した場合、この混浴も無しか?


 ……よし、保留だ。

 いつかはするだろうけど、もうちょっと勝算が見えてからの方がいい。

 これがゲームとかなら、セーブしてから告白すればいいが、そんなものは当然ない。

 昔付き合った彼女も、かなり軽いノリでの付き合い初めだった。

 こんな風に、一大決心してからの告白なんてしたことない。


 ゲームではないとはいえ、好感度的なものはあるはず。

 ただそれが見えないだけだ。

 今はその好感度を積み上げ続けるべきだろう。

 そうすれば、もしかしたら彼女の方から……


「……どうしたんだ? 急に人の肩を掴んだと思ったら、黙ったままで……」

「あー、いや……あれだ。シャロにはコイツが見えるのかなぁって」


 そう言って俺の周りをフヨフヨしているタンポポを指さす。

 全員スルーしているので、多分見えていないんだろうけど、一応確認だ。

 というか、タンポポの存在を教えておかないと、見えない空間に話しかける危ない人だと思われてしまいそうだ。

 シャーロットは俺の示す空間を見つめ……

五十万字越え!!

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