表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
268/1407

第268話 塩洲

 眼下の水鏡に白銀の身体を映しながら、ゆったりと飛空艇は進む。

 目指すは水が無い部分、いわゆる洲……いや塩洲だ。

 上空からだと、水鏡に映った雲なのか塩洲なのか、見分けがつきにくいけどな。

 飛空艇が映り込まなければ塩洲だろう。


 ポツンポツンと小さな塩洲は見つかるが、どれも小さい。

 一番大きかった塩洲でも四畳半程度だ。

 これでは乾いた塩は期待できない。

 思っていた以上に、昨日の雨量は多かった様だ。


 降下できそうな塩洲が見つからないまま、船は次第に塩の平原の外縁部から中央部へと移動していく。

 これはMP10を使ってでも、地図で確認した方が早かったか……そんな後悔が頭をよぎる。


 一旦、船を停止させると、船視点を解除しシートにもたれかかる。

 ゆっくり飛ばしているとはいえ、探索と操縦の同時進行は、やはり負担が大きい。

 シャーロット達にも探索を手伝ってもらうべきか。

 そういえば結構な時間飛んでいるが、まだ風呂にいるのかね。


 船内マップを確認すると、光点は展望デッキに三つ、こちらに向かってくる光点が一つ。

 こちらに向かってくるのはシャーロットだな。

 何故か彼女の光点だけは色が変わっており、更に『シャーロット』と光点の上に名前まで付けられていたためである。

 何故というか、彼女を副船長にしたからか。

 多分、船長である俺も船内マップで見ると、『ショータ』と表示されてそうだ。


「丁度いい場所は見つからない様だな」

「そうだな……難航しているよ……船だけに」

「そう思って三人は展望デッキに行ってもらった」


 ドアが開くと同時にシャーロットがそんなことを聞いてきたので、つい軽口で返す……が、スルー。

 どうやら言語理解の適用外だった為、彼女には通じなかったようだ……適用外だったんだよ!

 スルーといえば、タンポポの存在もスルーされている。

 今も俺の周りをフヨフヨしているのに、誰も聞いて来ない所を見ると、俺にしか見えない妖精さんのようだ。


「操縦に探索と大変だっただろう……私が代わるからショウはゆっくり休むといい」


 そういって躁舵輪を握るシャーロット。

 じゃあ、頼む……とでも返すと思ったか?

 コンニャロウ、優しい言葉と態度でカモフラージュしてるが、単に操縦したいだけだろ。

 探索なら見張り台でも出来る訳だしな。


 ただ正直操縦と探索の両立も大変だったのも事実だ。

 ここは彼女の優しさ(?)に甘えさせてもらおう。


「わかった。なら俺は探索を担当しよう。シャロはそのまま操縦を頼む」

「あぁ、任せておけ」


 いや、任せるのはお前じゃなく操縦アシストさんです。

 あと探索と見せかけて、シャーロットさんの後姿を見ているだけです。


 乾かさずに来たせいか、珍しくアップされた髪。

 そこから覗く、ほっそいうなじ。

 湯上りのせいか、少しだけ赤く染まった褐色の肌。

 なにより、後姿のはずなのに左右からチラ見しているスライムさん(着衣)。

 眼福です。


 勿論直接ガン見するような馬鹿な真似はしない。

 船視点から船内情報、更には船内カメラでシャーロットの姿態を観察するのだ。

 お、このカメラ。視点移動も可能らしい(MP1)。

 ならば真上からの映像に切り替え、あの魅惑の谷間を……


 ――ピカッ!


「ぎゃー! 目がー! 目がー!」


 突然カメラの前に、シャーロットが放ったであろう『フラッシュグレネード』が生み出された。

 船視点越しとはいえ、その光量は圧倒的だ。

 たまらずシートから転げ落ち、ゴロゴロと床を転がり回る。

 気分はどこぞの大佐(二回目)である。


「どうした? 外を探索していたら太陽でも直視したのか?」

「おまっ……いや、そうだな。その通りだ」


 いけしゃあしゃあとシャーロットがのたまう。

 思わず抗議の声を上げそうになったが、どう弁護しても悪いのは俺だった。

 シャーロットにしてみれば、親切心で操縦を交代したのに、その相手から視姦されるとか、たまったものじゃないだろう。

 彼女が本気になれば、ワイルド・ボアやクロゲワ・ギューですら一刀両断される。

 ならば、ただ眩しいだけの『フラッシュグレネード』だった分だけマシといえよう。




 心を入れ替えた俺は、真面目に塩洲の探索を続けるが、やはり成果はあがらない。

 シャーロットもアチコチ蛇行するように移動して、探索を助けてくれてたんだけどな。

 諦めてMP10を支払うか……。


「うわっ!」


 そんな俺の弱気を叱咤するかのように、飛空艇が急旋回する。

 船視点まま振り回されたせいで、気持ち悪……ん? あれは……?


「ショータ、大丈夫か? スマン、どうやら何かを避けるために急に舵が切られたようだ」

「そうか……いや、俺の方は大丈夫だ。それより展望デッキの三人の方を確認しないと」


 操縦室にいた俺達は、ちょっと驚いた程度で済んだが、展望デッキからでは万が一があり得る。

 慌てて船内カメラで展望デッキを確認する。


「……いない」

「いない? まさか?!」

「……振り落とされたのか?」


 水面スレスレな超低空飛行しているとはいえ、それでもその高さは数十メートルはある。

 そんな展望デッキから落とされたりしたら……

そろそろ「レギュラーキャラを殺しにかかる作者」タグが必要かもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ