第254話 提案
「ねぇ……塩の在処ってどこなの?」
クレアが湯船に浸かりながら聞いてくる。
ここはいつもの大浴場。
例によって風呂に入りたい女性陣に対し、俺が採った対応は『混浴』だ。
どうせシャーロットには開放してる訳だしな。
同じ条件、つまり俺も一緒に入るのでよければ、入っていいことにした。
俺は女性陣と混浴出来てハッピー。
クレア達も身綺麗に出来てハッピー。
まさにwin-winってヤツだな。
強いて言えば、アレク君が割を食ったことか。
彼だけは風呂人に目覚めたばかりのせいか、風呂よりも羞恥心の方が勝っているようで、後で入ります、といって譲らなかった。
まぁクレアが強制的に連れ込んだけどな。
曰く、「沸かし直してもらうのも手間でしょ」だそうだ。
多分シャーロットの魔法でお湯張りしてる、とでも勘違いしているのだろう。
黙っていた方が良さそ……もとい説明するのが面倒なんで黙っているけどな。
ちなみに全員湯浴み着を着用している。
脱衣所で着替えようとしたとき、
「ねぇ、あんたの世界じゃ混浴って普通なの?」
「あぁ、勿論だ」
「……嘘ね。混浴が当たり前なら、そんなにソワソワする訳ないし」
「なんだよ……だったら別々に入るとでも言うのか? だったら風呂の使用自体無しにするぞ?」
「……まぁ混浴自体は諦めるわ。ただし、何か入浴時に身に付ける衣類みたいなのがあるんじゃないの?」
「……そ、そんなの無いぞ」
「その動揺でバレバレよ」
「ちっ。確かに混浴だと水着か湯浴み着を着る場合もあった」
「やっぱりね。ならその湯浴み着とやらを出しなさいよ。あるんでしょ?」
「いや無い。……待て、一応探しはしたんだぞ?」
と、そんな問答をして湯浴み着の存在を教えてしまったのがマズかったのだろう。
『MP2を消費し「機能:バスタオル」の機能拡張しますか? MP42/55』
とウィンドウが出やがった。
無論、速攻でバレた。
しかもMP4でバスタオルのアップグレードが可能な事までバレた。
おかげで手触り抜群のタオルで身体を洗えたけどな。
スーパー風呂人のシャーロットも大満足な品質らしい。
後で石鹸と一緒に、メルタさんへの袖の下にしよう。
で、冒頭に戻るって訳だ。
「……金額次第だって言っただろ? 大体それを聞いてどうするんだ? あの場所は簡単には辿り着けないぞ?」
「分かってるわよ。どうせ飛空艇でしか行けないような場所でしょ?」
「だったら何で……」
あのね……とクレアが声をひそめる。
内緒話をしたいのは分かるが近すぎる。
シャーロットの美女っぷりとは違った系統である美少女に近付かれると、それだけで平常心が一杯一杯になってしまいそうだ。
(アレクも、あの塩が欲しいみたいなの)
(なら余分に採ってくればいいのか?)
(アタシもそうに言ったんだけど、アレクのヤツ、それじゃショータさんに申し訳ないですって聞かないのよ)
(……まさか申し訳ないと思えるぐらいの量が欲しいのか?)
(多分ね……そんなにあっても使い切れないでしょって説得しても聞かないのよ)
チラッとクレアはアレク君を見る。
洗い場の都合で半々に分かれてた為、彼は身体を洗っている最中である。
身体を洗う事に集中しているのか、こちらの内緒話には気が付いていない。
だからこそ、このタイミングで聞いてきたのだろう。
(で、どうしたいんだ?)
(アタシの提案としては、ショータの手伝いがしたいのよ)
(手伝い?)
(えぇ。塩の採掘なら人手があった方がいいでしょ? その人手にアタシ達がなるわ。その代わり、余分に採掘するのを許可してほしいの)
どうやら、クレアも洞窟の奥で岩塩を採掘するとでも勘違いしているようだ。
マジックバッグがあるとはいえ、そんな洞窟の奥で採掘するには手間暇がかかる。
その人手を彼女達が担おうというのか。
で、そのついでにアレク君が必要な分も採取しようと。
多分、自分達で採取すれば、塩の代金も格安に出来るとか考えてるのかもな。
(場所は秘密だぞ?)
(勿論、その辺は分かってるわ。移動の間は窓の無い部屋にいる。それならいいでしょ? あ、でもトイレぐらいは行かせてよね?)
(……まぁ人手があった方が楽なのは確かだな。分かった、それでいいなら連れて行ってやる)
「本当? ありがとう!」
ちょ、急に立ち上がるな。
湯浴み着を着ているとはいえ、肌に貼り付けば丸見えに近いんだぞ?!
ツルーンストーンのタマちゃん体型に近いとはいえ、一応成人。
多少は出っ張っているのだ。
シャーロットが褐色スライムさんなら、クレアは……バブルスライムさんかな?
トップ
ベル>シャーロット>アレク>クレア
カップ
シャーロット>ベル>アレク>クレア




