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第23話 包丁

 頑張った。俺は槍を手に入れるため超頑張った。

 現代日本で育った俺だ。お笑いの才能はなかったが、芸人のギャグなら覚えている。異世界なら他人のギャグでも関係ないしな。


 でもダメだった。店主はニコニコしてはいるが、受けてる様には見えなかった。

 ネタのつきた俺は、うなだれてしまう。槍を手に入れることができなかった為であるが、それ以上に全力でやったギャグが受けなかったからである。

 とことんスベり倒すと言うのは、心が削られる。くそう、あの時お笑いチートを手に入れるべきだったか。俺はスベり芸人を心から尊敬する。


 うちひしがれた俺に、店主は相変わらずのニコニコ顔で話しかけてきた。


「いやーギャグ?ってのはよくわからなかったけど、一生懸命頑張ってる姿はなかなか良かったよ」


そういって槍を俺に差し出した。


「え?」


「いや、面白いことしてって言ったじゃない。あそこまで頑張った姿は面白かったよ」


 どうやらギャグは受けなかったが、必死な姿に面白さはあったようだ。微妙に性格悪いな、と思ったが顔には出さない。社会人ならこんなこと、よくあることだし。


 銀貨3枚を支払い、槍を受け取る。おお、なんかテンション上がるな。昔修学旅行で木刀買ってた奴も、こんな気分だったのかもしれないな。


「ところでさ、その腰のヤツ、見せてもらえない?」


 またこのパターン?この人も何かのスキル持ち?つかこっちが本命っぽいな。


「いいですけど、スキルにでも反応しました?」


「? いやそんなスキルはないけど、強いて言えば商人の勘かな?」


「商人の勘ですか」


「いやいや、勘ってのも馬鹿にできないよ。実際この槍だって勘で手に入れたし」


 さいですか。俺はベルトに挿していた出刃包丁を差し出す。


「ふーむ、拵えは平凡だけど、この鋼はどこか違うねぇ。どこで手に入れたの?」


 飛空艇ですとは言えないので、適当にごまかす。あの包丁ステンレスだったっけ。こっちには無いのかな。


「ダンジョン産でもこんな鋼は見たことないし、おーい」


 店主はしばらく考え込んでいたが、突如店の奥に声をかける。


「なんだい?この前仕入れたのは、さっきの槍で全部だよ」


 そういって出てきたのは中学生ぐらいの女の子だった。ツナギっぽい服に、右手にはハンマー、顔は煤でちょっと汚れている。鍛冶師かな?こんなちっちゃいのに大変だねぇ。


「あぁ、フラン。見てよこの包丁。なんか変わった鋼を使ってるよ」


「ほう、どれどれ。ふーむ、確かに普通の鋼とは違うな。見たとこ錆に強そうだ。それに作り方もなんかおかしい。鍛造ではないな。鋳物とも違う。おいお前、これはどこで手に入れた!?」


 すげぇな鍛冶師。材質だけじゃなく、製法の違いまでわかるのか。そういや最近の包丁ってプレスで作られるって聞いたことあったな。なんとか入手先をごまかす。


「そうか・・・よその町の蚤の市で手に入れただけか」


 目に見えてガッカリしてるな。うーん売っちゃうか。厨房にはもう一本あったし。


「あの、その包丁、お売「よし買った!!」りし・・・」


「おい、店にいくら残ってる?有り金全部出すからぜひ売ってくれ!」


「ねぇフラン、前もそんなこと言ってボーキサイトとかいうのを買ってたじゃない。あの時は結局加工できなかったでしょ?よく考えてよ」


 ボーキサイトってアルミの原料だっけ?。


「いいからお前は黙って金を出せばいいんだ!」

「いや店主としてそれはできない!」

「い・い・か・ら、さっさと出せ!!」

「い・や・だ!」


 おいおい、痴話喧嘩なら他所でやってくれよ。あ、俺の方がヨソモンだった。


「あのー、さすがに有り金全部は申し訳ないんで、何かと交換ってのはどうでしょう?」

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