第2話 いきなり死闘
深い水底から水面に浮きあがるような、あるいはバンジージャンプをしてるような、そんな感覚を覚えながら意識が覚醒していく。
だが、どうも目が開かない。妙に息苦しい。もしや胎児からのスタート? と思い手を動かしてみる。
動く。しかも今までと同じ感覚だ。そのまま顔に手をやる。なんかブヨブヨしたものが顔に貼り付いている。
息がやばいので全力で引っぺがし叩き付けると、目を開いて貼り付いていたものを観察する。
なんだろう? コレ。ぱっと見サッカーボールサイズの青いゼリーっぽい何かが、ウネウネと獲物を探すように動いている。
ひょっとしてファンタジーの定番モンスター「スライム」なのか?
スライム(仮)はしばらくウネウネしていたと思ったら、突如俺に飛びかかってきた。
しゃらくせぇ!とばかりに俺は右拳でカウンターを当てる。
はじけ飛ぶスライム(仮)。と思ったらそのまま右手が包み込まれる。
スライムといえば消化攻撃。とっさに俺は右手を地面に叩き付ける。
だがスライム(仮)の野郎は、地面に当たる直前に俺の右手から離れやがった。
右手に激痛が走る。これではしばらく右手は使えないだろう。
いや、俺にはまだ左手がある。
この手で叩き潰してやろうと一杯に手を開き、これ見よがしに素振りする。
危険を感じたのかジリジリと後退するスライム(仮)。
だが逃がさん。素早く近づき左手を勢いよく叩き付ける。
躱すスライム(仮)。走る激痛。学習しろ俺。
しかも石の尖ったところに叩き付けた為、右手以上に痛い。
まさか誘われたのか? スライム(仮)に? そんな馬鹿な。奴はファンタジーの定番中の定番、雑魚中の雑魚のスライムだぞ?
いや、ひょっとすると俺の考えが甘いのかもしれない。ああしてプルプルしてるのも俺の油断を誘う為の罠だろう。
第一、青といえば某野菜の人でもゴッドになると青かったよな。
やべぇ……やべぇよ……
俺の目の前にいるのは只のスライムではなく、スーパースライムゴッド略してSSGだというのか?
背中に冷たいものが走る。慌てて振り向けば、そこにもSSGが!
ここにきて残〇拳だと!? 奴め、簡単に逃がすつもりはないようだな。
こうなったら逃げるには一か八の正面突破しかあるまい。
そう決意し、一気に走り出す。奴は俺の左に回り込むようだ。
だが覚悟を決めた俺に怖いものなどない。
恐れず奴の頭上?を飛び越えると脱兎のごとく逃げ出す。
「あ~ばよ。とっつぁ~ん」
俺が一生に一度は言いたい台詞第5位である。
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ぷるぷる。ボクはスライム。
今日草原で遊んでたら変なニンゲンに出会ったんだ。
初めは寝てるから、こんなとこで寝てたら風邪ひくよ~って顔に乗って教えてあげたんだ。
しばらく乗ってたらそのニンゲン、ボクを降ろして起き上がったんだ。
あそぼ~ってボクがジャンプしたら、そのニンゲン、グーを出してきたんだ。
あ、ジャンケンだね~、じゃあボクはパーだ~。
ふっふっふ~ボクの勝ち~。後出し? なにそれ? ごはん?
そしたらそのニンゲン、今度はパーを出すそぶりをしだした。
むむむ。ボクはチョキができないんだ。どうしよう。
あ、あそこに尖ったとこある。あれならチョキになるかな。
わわ、ニンゲンがパーを出してきた。
急いでチョキを出さないと。やった~今度もボクの勝ち~。
ありゃニンゲンなんだか悔しそう。でも仕方ないよね。
ショウブノセカイハヒジョウっていうし。でもショウブノセってなんだろ?
あ、ニンゲンの後ろにスラ美ちゃんがいる。お~い。
ニンゲンもスラ美ちゃんに気が付いたみたい。一緒にあそぼ~。
あ、ニンゲンがスラ美ちゃんを飛び越えた!すご~い。
ボクもやってみたくてスラ美ちゃんにジャンプしたら、さっと躱されちゃった。ざんねん~。
その後はスラ美ちゃんと遊んでたけど、いつの間にかニンゲンは居なくなってたよ。
また会えるかなぁ。
17/06/16
ひっそりと改行とか三点リーダーとかを修正。