第19話 串焼き
無事? 町に入った俺は両替の礼を言うために、先程の女性を探す。あ、いた。でも凄い勢いで大通りを駆けてしまい、直ぐに見失ってしまった。残念。
まぁ、同じ町にいるのだから、どっかで会えるといいな~と思いながら、俺も大通りを歩く。
町並みは石造りの家と木造の家が半々ぐらい、窓は鎧戸ばかりだ。ガラスは普及していないのかな? まぁいい、まずは腹ごしらえだ。とにかく腹に入れないと、歩けなくなりそうだ。
キョロキョロとお上りさんよろしく通りを歩く。あ、八百屋さんだ。野菜っぽいのを軒先に並べているから八百屋さんだろう。でも値札がないな。
店の主人っぽいおっちゃんと、客っぽいのおばちゃんがお話し中だ。どうやら値段交渉中らしい。あ、おばちゃんの値切り攻撃が決まったようだ。泣くようなしぐさをするおっちゃんと、勝ち誇った顔のおばちゃんが対照的だ。
でもおばちゃんが帰った後、おっちゃんは笑顔に戻った。どうやら負けたように見せかけたおっちゃんの勝利らしい。
おっと、おっちゃんがこっちを見た。野菜もいいけど、出来ればガッツリ系が食べたい。さっさと退散しよう。
なおも通りを歩くと、いい香りが漂ってくる。どこだろう? 匂いに惹かれ、路地に入る。あった。串焼き屋さんだ。飲食店の軒先で串焼きを焼いている。肉の焼ける香りが暴力的だ。たまらず俺は注文する。
「すみません、串焼き5本ください」
「はいよ。5本だと大銅貨5枚だね」
支払いを済ませ、その場で齧り付く。うまい。空腹は最高の調味料というがそれだけじゃない。脂がうまいんだ。
何の肉だろう? 鳥のような牛のような。まぁ美味ければいいや。あっという間に5本食べつくした。
「イイ食いっぷりだねぇ。ところでニィチャン、懐になんかいいもの入れてるだろ? 俺の調理スキルがビンビン反応してるぜ」
まさか、こんなところでカツアゲか? と思ったが懐に入れておいた岩塩のことを思い出す。まぁ隠すようなものでもないので取り出してみる。
串焼きは美味かったが、5本目ではもうちょっと塩味が欲しいなぁと思ってたので、もう一本買って今度は塩をかけてみるか。
「おお、それだそれ。ニィチャン、イイ塩持ってるな」
いい塩なのか? 塩の平原で拾っただけなんだが。だが、おっちゃんの話によると、この辺じゃ塩が採れないらしく、わざわざ遠いところから運んできてるそうだ。
どうやら塩の平原の存在は知られていないらしい。しかも質が悪いわりにバカ高いらしく、この串焼きにはちょっとしか使えていないらしい。
おっちゃんは拳大のこの塩に銀貨一枚出すという。これは金稼ぎのチャンスか? いや、飛空艇がバレると不味いことに変わりない。
今回はたまたま持ってたことに出来るが、定期的に持ってくれば絶対に怪しまれる。とりあえず、困ったときの金策として覚えておこう。
塩を売ったおまけでもらった串焼きは、さっきの5本よりも美味しかった。
17/08/13
指摘があった脱字の修正。
ついでに表現の修正をチョコチョコと。




