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第189話 押し合い

多分読み飛ばしても問題ない気がする。

「ふおぉぉぉぉ!!」


 鳥白湯スープを作るため、厨房まで野菜を取りに行ったけど、うっかり再ロックし忘れたせいで、アレク君達に厨房の存在がバレてしまった件について。

 クレアが厨房の事をアレク君に話してる間に、俺もシャーロットから見つかってしまった経緯を聞いた。


「ふおぉぉぉぉ!!」


 といっても大した経緯でもない。風呂から上がった三人がそれぞれの部屋に戻ろうとしたら、今まで只の壁だったところに何故か扉が出来ていて、しかも開いている。

 これは何だろうとクレアが入ってみた結果、厨房の存在がバレたようだ。一応シャーロットは止めたらしいが、おかしなことがあってはいけないと、クレアが強行したらしい。


「ふおぉぉぉぉ!!」


 シャーロットは止められなくて済まないと謝っているが、元々は俺が再ロックし忘れたせいなんで、あまり気にしないように言っておいた。

 ただちょっと気になったのは、今まで何もなかった壁に扉が出来たって話だ。俺がロックしても扉は消えることなく存在してたのだけど、どうやら他の人からは扉自体も無くなっているようだ。道理でクレアが明かない扉について騒がなかった訳だ。


「ふおぉぉぉぉ!!」

「いい加減、正気に戻りなさいよ!!」


 あ、クレアのチョップがアレク君に炸裂した。こっちでも『正気を取り戻せチョップ』はあるようだ。ただ角度が甘いな。あれじゃきっと――


「は! ボクは?! そうだ! クレアにスゴイ厨房があるって聞かされて……ふおぉぉぉぉ!!」

「くっ、興奮しすぎて効果がイマイチだったわ」


 一瞬正気を取り戻したように見えたアレク君だが、厨房を見た途端、再び正気を失ってしまったようだ。

 こうなったら仕方ない、ここは俺の出番だろう。シャーロットの正気を何度となく取り戻した伝家の宝(手)刀の見せどころか。


 俺はアレク君の背後に立つと斜め45度……いや、彼の場合はもう少し深い角度の方がいい。そうだな……47度が丁度いいだろう。あとは気合だけだ。

 クレアのは只の力任せだったから、効果がイマイチだったのだ。真の『正気を取り戻せチョップ』に腕力は要らない。左手は添えるだけでいい。祖母の細腕が教えてくれた真理だ。


「テイッ!」

「はっ! あまりの厨房の凄さにトリップしてました」

「そうか。正気に戻れてよかったな」

「ショータさん、ありがとうございました」


 うん、よかったよかった。じゃあ引き上げようか。そろそろお子様はおねむの時間ですよ?


「あ、ちょ、ショータさん押さないで下さいよ。ボクはもっとこの厨房を見たいんですから」


 いやいや、見るものなんてこの厨房にはありませんよ。それよりさっさと寝るべきです。


「ショータさん、無言で押さないで下さい。あとなんか目が怖いです」


 ちっ、アレク君のくせに生意気な。だがここで引いては飛空艇の秘密がバレてしまう。なんとか押し切らなくては。

 アレク君のマワシ、もといベルトを掴み某エビ反り力士張り(誇張表現)の寄り切りを披露する。俺の怒涛の寄り切りに、たまらず入口まで寄り切られるアレク君。だがそこで勝負は決まらなかった。

 ボクが土俵際の魔術師だ! といわんばかりに、逆に俺のマワシ(ベルト)を掴むと一気に仕切り線(ありません)まで押し返される。バカな! アレク君にこんなパワーが隠されてたなんて!


 ってよく見たらクレアとベルがアレク君の背中を押している。


「おい! それは反則だぞ!」

「何よ! 別にいいでしょ?! 一対一だなんて誰が決めたの? それに私だって見たいのよ!」

……(コクコク)


 そうだった。俺達は相撲をしてたのではなかった。マズイ……三対一、しかも向こうにはベルまでいる。一気に不利になってしまった。

 だが、向こうが助っ人を頼むなら、俺だって助っ人を投入してやる! 暇そうに観戦してたシャーロットに目で訴える。声に出すと、クレア辺りが邪魔してきそうだからだ。


(タ・ス・ケ・テ・ク・レ)

(夕・ヌ・ヶ・〒・久・し? 何が言いたいのだ?)


 どうやったらそんな風に読み取れるんだよ! 『た』だよ! 『ゆう』じゃねぇよ! あと何で『て』が『(ゆうびん)』になるんだよ! つーか良く知ってたな!


(いいから背中を押せ!)

(分かった!)


 シャーロットとのやり取りしてるうちに、こっちが土俵際(ないです)まで追い込まれてしまう。だが彼らの猛チャージはここまでだ。

 これからは俺の、いや俺達のターンだ! シャーロットが俺の背後に回る。そうだ、押し……


 ――ムニョ!


 ふにょわぁぁぁ!! いま背中に当たってるのって……思わず声を上げなかったさっきの俺を褒めてあげたい。あれで声をあげてたら、シャーロットに気付かれただろうからな。

 でも何で? あ、そうだった。彼女達は湯上りなんで防具とかは身に付けず、寝巻代わりの服だけしか身に着けてなかったんだ。


 背中に感じる幸せな感触。そして正面にはアレク・クレア・ベルの三人の美少女。そのうちの一人とはがっぷり四つに組んでいる。そうか、楽園はここにあったのか。


(どうした? 押し負けてるぞ? もっと押した方がいいのか?)


 ちょっ、シャーロットさん、耳元で囁かないで。あとそんなにグイグイ押されると、幸せの感触がもっと感じられて……あっ。




 ただ今の取り組み。寄り切って『麗しき暁の旅団』の勝ち。決まり手は『耳元フゥー』。

 そんなアナウンスが流れたような気がした。

17/08/08

フリガナになってた所を修正

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