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第184話 ボーラ

 シャーロットの放ったボーラは、確かにランペーロの足に絡みはしたが、右前足だけだ。ランペーロも走りづらそうではあるが、多少速度が落ちた程度で転倒する様子はない。

 多分ボーラのロープの長さが足りていないせいだろう。元々ボーラは俺がコッコゥ狩りの為に作った武器だ。ロープの長さもコッコゥ用にしていたのだが、皆で作った時もその長さを参考にしたんだっけか。


 ちょっとデカいニワトリ程度のコッコゥに対して、普通の牛かそれ以上のランペーロ。どう頑張っても長さが足りてないな。ちょっと考えれば分かる事なのに、なんで誰も気が付かなかったんだろうか。

 シャーロットも投げた後に(ノ∀`)アチャーな顔してるし、追いかけられているクレアに至っては全力で走ってるたせいで真っ赤だった顔が真っ青になっている。

 だが俺は慌てない。内心焦る気持ちを無理やり押し込みボーラを投擲する。ボーラはランペーロの左前足に絡みつくと、そのまま反対側の足に絡んでいたボーラとも絡んだ。


 よし! 狙い通り! 長さが足りないなら、足せばいいだけだ。足だけに。前足が制限されたランペーロは、その勢いを殺すことが出来ず盛大に転倒する。

 絡みついたボーラを取ろうしてるのか、ジタバタともがくランペーロ。あれだけ勢いよく倒れたのに、ダメージは少ないようだ。

 誰だよ、ワイルド・ボアよりも耐久力低いって言った奴。普通あの勢いでコケたら、良くて首の骨折、下手すりゃそのままご臨終する筈だぞ?

 それともアレか? この世界の牛は前回り受け身まで標準搭載なのか? 衝突被害軽減ブレーキに加え前回り受け身まで付いてるって、もう牛じゃ無くね? あぁウージィ、いやランペーロでしたね。


 ……まぁいい。この世界の牛の安全性が高いのなんかどうでもいい。どうせなら食べた時の安全性も高めであってくれ。

 それよりも、コイツに止めを刺すことが先だ。ブモーブモーと暴れるが、絡まったボーラは取れることもなく、ランペーロは立ち上がることもままならない。


 クレアが戻ってきて止めを刺す。死にそうな思いで走ってたからな。当然の権利だろう。これで彼女たちの依頼も達成か……良かったな。じゃあ同じ手順で俺達の分もやるとしよう。


「よし、じゃあ一休みしたら、もう一回頼むな」

「はぁ? イヤに決まってるでしょ。なんであんな思いも何度もしなくちゃならないのよ」

「いや、だってそうしないと俺達の依頼が達成できないし」

「知らないわよ。アタシ達の分はアタシが釣って達成したんだから、今度はアンタが釣ればいいじゃない」


 クレアのくせに生意気な! だったら伝家の宝刀を出してやる!


「馬車に乗せてやった恩を忘れたのか!」

「その恩は御者や馬の世話をしてたからチャラのはずよ!」


 なんてこった。クレアのヤツ、この展開を見越して馬車のアレコレをやっていたのか。これではもう一度囮をやってもらうのは難しいか。

 今のは彼女達の分を、彼女達主体でやったことになる訳だし、俺達の分まで任せるのはちょっと無理やり過ぎるか。


 ならばどうする? 俺がクレアの弓を借りてやるのは論外だろう。逃げ切れるかどうかも怪しいし、そもそも矢が当たらなければ、逃げる以前の問題だ。

 シャーロットに任せたら、釣るために放った矢でランペーロが絶命しそうだよな。いや、それより彼女に丸投げしたら、スタスタ歩いて行ってそのままグサーで終了のような気がする。

 それでもいいような気もするが、一応俺が活躍できそうな手を考えないと、シャーロットが主人公っぽくなってしまう。俺の物語なのにシャーロットが主人公とか、訳が分からないよ。


 何かないかと足元を見ると、白っぽい小さな花が咲いている。そういえばシャーロットはウージィがこの花を食べることで、ランペーロになるって言ってたっけ。

 一輪毟って眺めてみるが、見た目は只のシロツメクサだ。流石に食べたりはしない。薬草は食べたけどな。


 そういえば、なんであのウージィが進化することに、彼女は気が付けたのだろうか? この花を食べているウージィは結構いたはずなのに、ピンポイントで指摘してたけど、何か見分け方があるのだろうか?


「なんでといわれても、魔力の高まりを見れば分かるとしか……」


 また魔力か。この世界の人間は、魔力が見える能力が標準搭載されてるのか? クレア達を見るが、彼女達は首を振っている。良かった。出来の悪い子は俺だけじゃなかったんだ。

 しかしシャーロットの言葉を信じるなら、彼女は進化しそうなウージィを見分けることが出来る。そしてウージィであれば人を襲ったりはしない。


「うーん……例えばだけど、その魔力とやらが高まってるウージィをここに連れて来て、この花を食べさせたらそいつはランペーロになるってことか?」

「そうなるだろうな」

「ちなみにもうすぐ進化しそうな奴はどれだ?」

「そうだな……アイツだな。次に花を食べれば進化するはずだ」

「そうか……アレク君、ちょっと手を貸してくれ」


 アレク君の手を借りて、シャーロットが指名したウージィを馬車の近くへ連れてくる。ウージィは大人しく、花ではなく草を食んでいる。

 なんとなく撫でたくなるが、情が移ってはいけない。心を鬼にして例の花をウージィの鼻先へ持って行ってみる。


 スンスンと臭いを嗅いだかと思ったら、いきなり花を食べた。急に来られたんでビックリして手を引いてしまったけど、それが幸いした様だ。

 危うく俺の手ごと食われるところだったが、なんとか花を食べさせることに成功した。さて、彼女の見立ては正しかったのかな?

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