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第182話 ロジオノ

 この状況下でのお客さん……当然来ているのは彼だろう。幌から外を覗いてみれば案の定ソイツはいた。


「あ、どうも……」


 ぺこりと頭を下げる彼。パッと見ただけの印象は一言でいえば『普通』二言でいえば『めっちゃフツー』。それぐらいどこにでもいそうな平凡な顔立ちの男だ。

 装備も皮鎧にショートソードと、いかにも一般的な冒険者な出で立ちだ。多分町中で見かけたら、すぐに忘れてしまう、そんな奴だ。


 けど、ここまで平凡過ぎると逆に異常性を感じる。町中の人ごみに紛れていれば彼に気付くことはないだろう。しかし外に出てしまえばその印象の無さが浮いてくるのだ。そのせいであの時いないって分かったわけだしな。


 まぁ何が言いたいかっていうと、とりあえずピンチです。

 さっきまで目の前に居るコイツが怪しいと言ってたのに本人登場とか、なんのドッキリだよ。しかも俺達の馬車のすぐそばに居るってことは、さっきの話も聞かれただろう。めっちゃ気まずい。

 一応ニコニコ顔をしてるけど、その裏じゃ何考えてるか分かったもんじゃないしな。目撃者は皆殺し主義な奴だったら超ヤバい。


 かといって即追い返すのもヤバい。アナタが怪しすぎるので関わりたくないです、って言ってるようなもんだ。何とか穏便にやり過ごさなくては……よし、ここはひとまずクレアに対応してもらおう。怪しいと言ってた俺よりは彼女の方がまだマシだろう。


 そう結論付け、クレアを見る。が、目を逸らされる。おい! さっきの出しゃばりはどうした? こんな時こそお前の出番だろうが。


(あんな話を聞かされて、ハイそうですかって出てくわけないでしょう。言い出したアンタが対応しなさいよ)


 ならばとアレク君、ベルと見ていくが揃って目を逸らされた。ここまで目を逸らされると、例の隈取がされてるのかと疑いたくなるな。

 だが俺には最後の希望がある。期待を込めてシャーロットを見つめる。彼女は目を……逸らさない。いや、これは睨み返して来ている。これは……目を逸らした方が負ける!


「あの……」


 外野がうるさい。ちょっと待っててくれ。今目を逸らしたら、アンタの対応をすることになるんだ。アンタだって俺なんかより、美人なシャーロットの方がいいだろう? だからもう暫くそこで大人しくしててくれ。


 睨みあう俺とシャーロット。このままでは埒が明かない。こうなったら最後の手段だ。


「フンッ!」


 取って置きの変顔を披露する。俺はこの顔を編み出してから、にらめっこに負けた記憶がない。


「ブッ」


 勝った。俺の渾身の変顔に、流石のシャーロットも堪えきれずに吹き出した。ついでに他の連中まで吹き出している。三人はともかくアンタまで吹き出してるなよ……


「……まぁよかろう。面白い顔も見られたしな。で、何の用かな? こちらは見ての通り、にらめっこで大忙しなんだが?」

「えーっとですね……とりあえずお礼をと思いまして」

「さて、礼といわれても何のことやら」

「いやいや、彼らを引き上げさせて頂けたではないですか。おかげで落ち着いてランペーロを狩ることが出来そうなので、そのお礼にと。あ、ワタクシ『ハイド』のロジオノといいます」


 うーん、平凡な容姿に加えこの低姿勢。ものすごく胡散臭い。かなりの隠密スキルの持ち主だろうから実力者ではあるんだろうけど、この低姿勢っぷりが逆に怪しく感じる。

 低姿勢で相手が油断したところでグサッといくのが常套手段っぽいな。俺は騙されないぞ。


「アレは私達の為にやった事だから礼を言われるほどの事でもない。だが、そうだな……私達はハグレを狩る予定なので、出来ればソレ以外を狙って頂けるとありがたいかな」

「そうですか。分かりました。ワタクシ達もあとニ、三頭も狩れれば十分なので、ハグレになりそうなものは狙わないようにします」

「すまないな。用件はそれだけかな? では良い狩りを」

「はい、良い狩りを」


 そのまま何事もなくロジオノは去って行った。あれ? いきなりグサーは? 「な なにをする きさまらー!」は? まさか、ただ礼を言いに来ただけ?


「それとだな、もう一つ残念なお知らせがあるのだが……」


 なんだよ……まさかロジオノが戻って来たとか言うんじゃないだろうな?


「先ほどのショータの話なんだが、あの時ロジオノがウージィの群れの中に居たのを、私は見ていたんだ」

「は?」

「多分彼はダリオ達が釣れないような場所に、ランペーロの位置を調整してたんだろうな」

「はい?」

「ランペーロを群れの中心迄連れて行けば、釣りにくいからな。そうやって自分達が狩りやすい環境を作っていたんだろう」

「……マジで?」

「まぁ私が見たのは、ロジオノが群れの中に居たって事だけだから、ショータの推論が正しい可能性も残ってはいるが……」

「そうよね。無暗に人を疑うのは良くないわよね!」

「そうですよね」

……(コクコク)


 ……いや、惑わされない! 絶対アイツが犯人だ! そうだ! アイツが犯人だって決めつけて捜査すれば、きっと証拠が挙がるはずだ。二時間サスペンスとかじゃ、そうやって解決してるし。


「と、とりあえずランペーロの解体でもしようか。それともシャーロットに仕舞っておいてもらうか」

「そ、そうですね。解体はロジオノさん達と……いえ、やめておきます。師匠にお任せします」

「仕方ないな……」


 渋々といった感じで、シャーロットは巾着袋にランペーロを仕舞っていく。自分で振っておいてなんだが、マジあの巾着袋の限界が分からない。結構な量が入ったはずなのにまだまだ余裕そうだ。

 確保しておいたランペーロを仕舞い終えれば、いよいよランペーロ狩りの始まりとなる。気合を入れて行こう。






~あるパーティーの会話~


「いやー、美人だったなぁ」

「リーダー、お疲れっす」

「あ、ごめんねー。解体手伝うよ」

「大丈夫っす。それより向こうさんはどうだったんすか?」

「あー、その辺は大丈夫そうでしたよ。一人気が付いてたみたいですけどね」

「お? その顔。やっちゃいます? さっきは不発だったっすから、今度はキッチリやりたいっすね」

「うーん、やめておきましょう。一人ヤバいのが居ますからね。今回は大人しくしておきます」

「そうっすかー。まぁリーダーの勘はよく当たるっすからね。それにアイツ等が残した分もあるから稼ぎは十分っす」

「じゃああと二匹ほどやったら引き上げましょう」

「了解っす!」

ショータ君惜しい!

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