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第179話 落とし前

 アレク君の生還を皆で喜んでいると、丘の上から『釣り』パーティーの連中全員がこちらに降りて来た。ぱっと見武器は持っていないし両手も上げているので、即戦闘って事はなさそうだ。

 おっといかんいかん。アレク君があんな目にあわされたせいか、考え方が短絡的になってるな。一応向こうさんは話し合いに来たんだし、もっとCOOLにならないと。


(俺はCOOL。俺はCOOL……)


 ふぅ、落ち着いたぜ。唱え過ぎたせいで逆にCOOLって何だっけって思ったけど、そのおかげで落ち着けたんだから良しとしよう。


 さて、多少は冷静になれたところでもう一度観察だ。連中は狩っていた六人全員が来ている。一人いないとかだったら不意打ちを警戒するけど、それはなさそうだ。

 だが全員というのも変な気がする。ただの話し合いで終わるならば全員で来る必要は無い筈だ。代表者一人でも十分だろうし、お供が必要だとしてもせいぜい一人だろう。そう考えると安易に警戒は解けない。


 やがて俺達がいる場所から少し離れたところで立ち止まると、代表者であろう金髪ボブのイケメン風が歩み出て来た。アイツは確か見本役をやってた奴だな。狩りのマナーは守らなかったが、話し合いのマナーは守るようだ。


「僕が『ヘーリウェル』のリーダー、ダリオだ。そちらのリーダーと話がしたい」

「俺が――」

「アタシがこのパーティーのリーダーよ。で、話ってのは何なのかしら?」


 俺が名乗ろうとしたら、クレアが出しゃばってきたでござる。いや、アレク君は彼女達のパーティーのメンバーなんだから、クレアが出るのは当然か。


「げぇ……クレアまでいるのか……」


 例のアレク君を突き飛ばした野郎が呟く。もしかして知り合いなのか? こっそりアレク君に聞いてみる。


(知り合い?)

(はい、同じ村の者です。一年ぐらい前に冒険者になるって言って村を出たんです。たしか……ギオルギだったかな?)

(へぇー、世間は狭いね)

(そうですね……ボクもこんな所で会うとは思いませんでした)


 そういってアレク君はどこか不安そうに自分の腕をさすっている。もしかしたら村で拒絶されたことを思い出したのかもしれない。

 そんなアレク君の肩を叩くベル。行き所を失った俺の右手。とりあえずポリポリと頬をかく。


「……」

「そうだね。ありがとう」


 流石幼馴染。あれだけで分かりあっている。俺もあんな仲間が欲しい。

 チラッとシャーロットを見ると、ヒマそうにクレアとダリオのやり取りを眺めている。そうだった、ちゃんと話を聞いておかなくては。


「ふーん……それで?」

「いや、だからこの通り謝罪する。済まなかった」

「アンタの謝罪なんかどうでもいいのよ。それよりソイツからの謝罪がまだのようだけど?」


 そういってギオルギを指さす。確かにさっきから謝っているのはダリオだけで、他の連中は謝る様子もない。中には不満げな顔さえ浮かべている奴もいる。

 流石にゲオルギは済まなそうな顔をしているが、ありゃ上っ面だけだな。しょっちゅうミスしてた新入社員と同じ顔だ。

 ソイツも済まなそうな顔してれば、どんなミスだってやり過ごせるとかほざいてたな。結局とんでもないミス出して会社からはクビにされた上、裁判沙汰にまでなったらしいけど結局どうなったっけか。


「そうだったな。ギオルギ、さぁ彼に謝罪を」

「うぇ? いや、頼んでねーし。なんでアイツに謝んなきゃならないんだ?」


 フラれるとは思ってなかったようで、つい本音が出たんだろう。だが助けてもらっておいてその言い草は無いだろう。おもわず槍に手が伸びてしまう。犬死したかったんなら、今からでも遅くは無いだろうし、なんなら手伝おうか?

 おっといかんいかん。クールクールクール……。


「ギオルギ!」


 ダリオが奴の頭を掴んで無理やり下げさせる。いいぞ、もっとやれ。なんなら地面にめり込ませろ。


「ダメね。ソイツ全然反省してないじゃない。そんなんじゃ謝罪にならないわ」


 なるほど、ここは焼き土下座の出番だな。よし準備しよう。まずは人が焼けるサイズの鉄板の用意から……


「そうか……ならばギオルギをパーティーから除名する。これで彼と僕達は無関係だ。あとは彼を煮るなり焼くなり好きにすればいい」


 Oh、元飼い主からもOKが出たぜ。今日は焼き土下座祭りだな。鉄板はないからシャーロットに溶岩石プレートを作ってもらえばいいか。


「な! ダリオさん。そりゃねぇだろ。なんでそんな事でクビにされなきゃならないんだ!」

「正直キミの素行の悪さにはうんざりしてたんだよね。いい機会だからクビにしたんだ」


 いきなりの解雇通告に、ギオルギは残りのメンバーに助けを求める。だが奴に救いの手は差し伸べられないようだ。

 呆気なくギオルギをクビにしたダリオに他の連中は驚いていたが、反対の声が無かったところを見ると奴のクビは前々から話し合ってたのかもしれない。


「ふん……まぁいいわ。だったら後の話し合いはソイツとすればいいのね?」

「あぁ、そうだね。ただ……話し合えればだけどね」

「え?」


 ダリオの含みのある言い方に緊張感が走る。まさかここから戦闘開始か?

 いや違う。ギオルギだ。ギオルギが逃げやがった。ランペーロすら振り切れる自慢の逃げ足で、あっという間に姿が見えなくなった。


「やっぱり逃げたか……」

「アンタ、分かってたんだったら、ちゃんと捕まえておきなさいよ!」

「いや、彼とはもう無関係だからね。捕まえておきたかったら、君達でやっておくべきだったんじゃないかな?」

「……仕方ないわね。あとで見かけたら絶対売り飛ばしてやるわ」

「それはご自由に。じゃあ僕達はこれで……」

「あら? なにすっとぼけて逃げようとしてるの? アンタ達にはアレクが使ったポーション代を出してもらうのよ?」

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