第177話 マナー
素直に狩りが始まると見せかけて、まだ狩りは始まらんのじゃ。
ってなんで俺が狩り方を決めようとしてんだ? ランペーロなんて初めて見た人間が、その倒し方を決める必要は無いよな?
リーダーだからといって、なんでもかんでも自分でやる必要はない。そのためのパーティーだしな。リーダーってのは意見をまとめる立場なのだ。
とりあえずクレアと相談してみるか。アイツ等なら俺達抜きでもランペーロを倒す算段があるはずだ。無ければワザワザ依頼を受けてまで、こんな所まで来るはずないし。
「なぁ、クレア達はどうやって倒すつもりだったんだ?」
「え? アタシ達はフツーにハグレが出る迄待つつもりだったわよ? あんなやり方出来る訳ないし」
「なるほど。それも手だよな」
時間はかかるが、それが確実か……ただ問題は逸れる様子が無いって事だよな。『釣り』パーティーが狩る度に群れが動くので、中々ランペーロだけが逸れた状態にならないのだ。
一応ハグレっぽいのが出たかなーって事もあったけど、クレアがソイツに近づいて弓を構えようとしたら、『釣り』パーティーが群れを動かして駄目されたんだよな。
こういった複数のパーティーが居る狩場では、獲物の取り合いとかよくある事らしいけど、もうちょっと何とかならんもんかね。
シャーロットも「普通、狩場を荒らすような事は、もう少し遠慮するのだがな」とぼやいている。彼女から見ても『釣り』パーティーのやり方は褒められたものではないようだ。
かといって禁止されているわけでもないので注意することも出来ない。いわゆるグレーゾーンの狩り方は、本人たちの良識でやるやらないを決めるんだけど、どうやら『釣り』の連中はこんな状況でも、気にせずヤル派なようだ。
しかも色んな意味で調子に乗って来たのか、釣り役を二人にして狩り始めやがった。例の失敗した奴と見本を見せた奴、この二人が交互に、しかも間を置かずに釣るもんだから、ウージィがあっちに行ったりこっちに行ったりと大忙しだ。
俺達のいる丘を半包囲するように群れがいるから、反対側同士で釣ってくれば群れに戻るウージィが重なることもない。いいやり方かもしれんが、群れが落ち着くのを待つ俺達にとっちゃいい迷惑だ。
こんな状態では隠密も使いにくいのだろう。『暗殺』パーティーの姿が彼らの馬車に現れ、彼らも『釣り』パーティーの様子を眺め始めた。
『暗殺』パーティーの一人がこちらを向くと、ヤレヤレ┐('д')┌ ってな感じで手を上げる。こっちも┐(´-`)┌ と返す。会話はないが、通じ合えた気がした。
「なぁ……どうする?」
「そうね……ここまでだとは思わなかったわ」
『釣り』の連中は俺達の事なんか考えずに、バンバンランペーロを狩っている。俺達二パーティーがヤレヤレ勘弁してくれよ状態で様子見してるのも、全く気にするそぶりもない。
何よりムカつくのは、狩ったランペーロを角と魔石を獲るだけで、肉とかは全部廃棄していることだ。アイツ等バカじゃねぇの?
狩った肉を食べもせず売りもせず、ただ廃棄している。あれでは狩られたランペーロも浮かばれないだろう。ガロンさんが見たらブチ切れるかもしれん。アレク君は既にブチ切れている。クレアとベルに止められているが、今にもアイツ等に掴みかかりそうだ。
アレク君の場合、食材を扱う料理人ってこともあるが、なにより狩人として「獲物に対して敬意を持て」と育てられてきたので、ああいった行為は許せないらしい。
シャーロットは「獲物をどうするかは本人達の自由だ」と言う。その通りかもしれないが、アイツ等を擁護するようでムカついた。
だが、彼女もギュッと拳を握っているのを見て、俺達にではなく自分自身に言い聞かせているように感じた。
しばらく眺めてたが奴らがやめる様子はなく、今日は狩りになりそうもないな。諦めてちょっと離れたところで野営の準備でもするかと仕度を始めた時、その事故は起きた。




