第17話 町へ
「良縁ありか。町でいい人に出会えるといいな」
眼下に広がる森を眺めながら、飛空艇は南南東へと進んでいく。
ステータスに従って北に行ったらいい景色には出会えたが、街にはたどり着けなかった。
でも、無駄遣いに注意は当たってたしなぁ……お御籤程度に考えておくか。
ところでファンタジーな世界の割に、今まで空飛ぶ魔物に出会ってないな。
認識阻害がいい仕事してるのだろうか?
あ、いかん。襲撃フラグになりそうだから、この話題は無しで。
幸いフラグは成立しなかったらしく、無事出発地点に帰ってこれた。
だが町の姿が見えない。
マーカーによればあの辺に見えそうなんだけどなぁ。
ま、いっか。街までは歩きで1時間ぐらい。
これ以上近付くと目立ちそうなので、ここで飛空艇を降りることにする。
おっと、降りる前にやることがあったんだった。
『MP1を消費し「区画:脱衣所」を解放しますか? MP5/10』
これはもちろんYES。
脱衣所には洗面台が2面とドライヤー(MP1)にドラム式洗濯機(MP2)、ついでにマッサージチェア(MP2)まであった。
うーむ、増々ホテルっぽい。
そして洗面台の下にはボディソープ、シャンプー、リンス、トリートメント、ハンドソープ、洗剤の詰め替え用が見つかった。
固形石鹸も五個程予備があったので、一つ持っていくことにする。
『MP3を消費し「区画:大浴場」を解放しますか?MP4/10』
く、解放しようと思えばできるところが嫌らしい。
うーむ、解放するか……そして朝風呂としゃれこもう。
ムニョっとYES。
残念ながらスキルは上がらなかったようだ。
もしかして、風呂関連では上がらないのか?
ガラガラガラと扉を開ける。
おお、広い。さすが大浴場だ。
しかも外が見えるから、露天風呂っぽい感じがする。
ただ、風が入り込んでいないから、透明度の高いガラスかな?
空も見えるから、夜の星を眺めながら入るのも良さそうだ。
しかも船体の曲面に沿ったガラスのようだ。
こんなガラス、現代でも作れたっけ? すげえな異世界。
レイアウト的には右舷側の脱衣所から入ってきて、船尾側というか窓側にデカい浴槽(手前)と小さい浴槽(奥)がある。
船首側というか壁側が洗い場だな。
洗い場は4つあり、木の桶と木の椅子もそれぞれある。
奥(左舷側か)には扉が。
その扉に窓があったので覗いてみると中はサウナ(MP2)のようだ。
だが、最大の問題は浴槽だ……なんと、お湯が張ってない。
左舷側の壁のライオンもお湯を吐き出していない。
お湯位張っとけよ!
『MP4でお湯張りしますか? MP1/10』
お湯張りにもMPが必要なのかよ……しかも、機能がついてないってことは毎回必要なのか。
やっぱMPチートもらっとけばよかった。無念。
朝風呂は諦めて街に向かおう。
忘れ物は無いかな?
出刃包丁よし! 塩よし! 銀貨よし! 石鹸よし!
指さし確認は大事だよね。
そういや送還したら厨房の塩とか大丈夫かな?
きっと大丈夫だと信じたい。
光の階段を降り草原に降り立つ。
念のためにと、舳先を街に向けといたから、町はあっちか。
うーむ……地上からでも町の姿は見えない。
飛空艇を送還する。
魔法陣が現れ、召喚した時を逆再生するかのように、飛空艇は魔法陣に吸い込まれていった。
幸いな事に、厨房の塩は落ちてこなかった。
俺は出刃包丁を腰のベルトに挿し、地図を信じて歩き始めた。
よくよく考えたら送還時に包丁とか消える可能性もあったんだな。
それとも船外に出せば消えないのか?
いつか機会があったら検証してみよう。
18/01/14
色々修正。




