第158話 オニギリ弁当
シャーロットが部屋を使っていない理由を勝手に納得したクレアは、「掃除の続きをしなくちゃね」と言って、部屋を出て行った。結局何しに来たんだ?
変に時間を取られたせいで、新しい機能を探す余裕は無くなってしまっか。仕方ない、分かっている機能だけでも解放しておこう。
取りあえずカーゴルームのクレーン(MP1)とジャッキ(MP1)を解放しておく。搬入口/前面はバックドア中のせいか、解放は出来なかった。
探せば機能は出てくるかもしれないけど、時間が微妙なのでパス。次は下層の区画を解放していこう。
倉庫・小(MP2)、金庫室(MP1)を解放するが、スキルアップのアナウンスは無い。そういえば倉庫・小はあるのに倉庫・大が無いな。もしかしたら、倉庫・大を解放すれば下層コンプリートか?
とはいってもそんなスペース無いよな? 機関部の奥もこの前見たけど無かったし。大っていうからにはそれなりの広さがあるはずだ。そう、この部屋みたいに。
ん? この部屋? 今いるこの部屋は例のバックドアの初期位置でもあった倉庫っぽい部屋だ。もしかして、ここが倉庫・大ってこと?
下層への階段(MP1)を解放したらオマケで倉庫・大まで開放されていたでござる。有難いんだけど、何か釈然としない。
それはさておき、そうなると下層の区画は全部解放されたのかな? スキルが上がらなかったのは残念だけど、次の機会に期待するとしよう。
それより、そろそろガロンさんの仕込みも終わる頃だろう。終わってなくても待っていればいいしな。ガロンさんを待たせるよりはずっといいはずだ。
「おう、来たな。もうちょっとで終わるから、そこで待ってろ」
「分かりました」
どうやら丁度いい時間に戻ってこれたみたいだ。串打ちされたトリ肉の山が幾つも出来ており、その横ではアレク君がぐったりしていた。流石にあの量を一人でこなすには量が多すぎたらしい。
で、屋台の仕込みをアレク君に丸投げしたガロンさんはというと、どうやらオニギリを作っているようだ。あのゴツイ手からは想像もつかない位、綺麗な三角形が作られていく。
三十個ほど作っただろうか? 結構な数のオニギリをつくると、次は例の包み用の葉っぱで一つ一つ丁寧に包んでいった。
更に三個一組になるように包んでいくと、全部で十個の包みが完成する。そしてそのうちの一つを俺に手渡す。
「今日の弁当だ。あとで感想を聞かせてくれ」
「あ、ありがとうございます」
「こっちは嬢ちゃんの分だが、お前が預かっておくか?」
「いや、その必要は無い。今日もありがたく頂戴する」
いつの間にか来ていたシャーロットは、ガロンさんから包みを受け取ると、そのまま巾着袋に仕舞った。
ガロンさんは三個の包みをへばっていたアレク君に渡す。あれはベルとクレアの分もかな?
更に残った五個の内、三個をより分けたけど、これはガロンさんとマデリーネさん、マロンちゃんの分だろう。となると残りの二個は誰の分だ?
シャーロットも同じことに気付いたようで、残った包みを見つめる目が真剣なものになっていく。あれは獲物を狙う飢えた獣の目だな。
と、その時、厨房にある裏口から誰かが入って来た。あの顔は……ガロンさんもといパインさんだ。
「おはよー。今日の分を取りに来たわよー」
「おう、そこに出来てるから持って行ってくれ」
「はいよー」
パインさんはアレク君の力作である串打ちしたトリ肉を、持って来た金属製の箱に詰め込んでは外にあるリアカーっぽいモノに載せていく。
うーん……こうしてみるとガロンさんとパインさんの二人、兄妹だけあって雰囲気がそっくりだな。ガロンさんが髭を剃ったらあんな感じの顔になるのかな?
とか考えてるうちに、荷物の積み込みが終わる。「じゃあねー」とリアカーを牽くパインさんに、ガロンさんが残った二つの包みを渡す。
「あら、珍しい。なに? 新作?」
「そんなところだ」
「へー。例の串焼きサンドといい、結構頑張ってるわね」
「まぁな」
「ふーん……あのコのおかげ?」
そういってこっちを見てくるパインさん。あと言い方が微妙すぎる。
「フン。そんな事より、サッサと行った方がいいんじゃないか?」
「あ、クォートも待ってるだろうし、行きますか」
「気を付けてな」
手をヒラヒラさせながらパインさんはリアカーを牽いて去って行った。これから屋台に向かうのだろう。
あと、シャーロットよ。ガッカリしすぎだ。オニギリでよければ、ごはんパックやるから自分で作れ。




