第152話 明日の予定
「指名依頼か……」
「あらー、それはよかったわね」
夕食後の飲み会で早速ガロンさんにお願いしてみた。ちなみに今日の夕食は炒飯と油淋鶏モドキだった。ガロンさんが大量に炊いてしまったご飯の活用法を聞かれたので炒飯を提案してみたのだ。
俺のいい加減な説明――特に油淋鶏なんて、唐揚げにネギと甘酸っぱいタレをかけたのってだけ――で、それっぽいものを作り上げてくれた。そろそろガロンさんの有能さが天元突破しそうだ。
どちらも醤油を使うので売り物には出来ないが、俺達だけで楽しむ分には十分だったな。アレク君は醤油に気が付いたようだけど、ガロンさんが入手先を口外しなかったので結局諦めたみたいだ。
アレク君達ぐらいなら教えてもいいんだけど、蟻の穴から堤も崩れるとも言うし、なるべくなら秘密にしておきたい。
「流石師匠です」
「なによ……もう追い付かれたっていうの?」
「……」
そして今日から飲み会にも付き合えることになったアレク君達が一緒に話を聞いている。まぁ彼らはマデリーネさんと同じくオレンジジュースだけどね。
そう、彼らも今日からガロンさんの宿に泊まることになったのだ。なんでも今日の引っ越しの時、ついでに自分達も借りていた部屋を引き払ったそうだ。
どうやら例の引っ越しの手伝いを終わらせた後、そのまま自分たちの荷物を馬車に積んで、この宿に泊めてくれと押し掛けたらしい。
ガロンさんも、俺達を泊めてしまってる手前断り切れず、結局条件付きで彼らを泊める事にしたんだとか。
尤も彼らの場合、宿の手伝いをする代わりに宿代を割り引いてもらうので、客というよりは住み込みのアルバイトだな。お金の無い新人冒険者にはよくある事らしい。
俺達もそうしようかと提案したけど、ガロンさんは俺達を一瞥した後、「気持ちだけ受け取っとくよ」とやんわり断られた。シャーロットは兎も角、俺まで戦力外通告されるとは解せぬ……。
「まぁ、いいだろう。明日の朝、仕込みが終わったらギルドに行ってくる」
「ありがとうございます。あ、なんなら俺達も一緒の方がいいのかな?」
「そうですね。シャーロット師匠達も一緒に行けば、その場で受注できると思います」
となると明日の朝はゆっくり目でいいのか。一週間も働きっぱなしだし、なんなら午前中はオフにしてもいいかもな。いや、いっそ一日オフにするか?
おお、それがいいな。休日返上なんて向こうの世界だけで十分だ。冒険者《自由業》になったんだから、好きな時に休まないとな。ガロンさんにはコッコゥ辺りの依頼にしてもらえば楽勝だろうし。
「うーん、この時期ならランペーロもいいか……いやどうせなら暴れ熊のほうが……」
明日の半休を夢見て浮かれる俺は、ガロンさんの呟きを聞き逃してしまい、後日その事に後悔するのだった。
飲み会は例によってツマミが切れたところで解散となり、それぞれが自分の部屋へと戻って行った。当然俺の部屋にはシャーロットが付いてきた。
いい加減問答するのも飽きたので、黙ってクローゼットにバックドアを呼び出す。シャーロットはいつも通り風呂場へ。俺は工房で皮鎧の手入れだ。
今日は薬草採取だけだったので傷みとかはないが、手入れは毎日やっておかないとイザという時、後悔するからな。
やる度に手慣れて来たのか、今日は十分程度で終わってしまった。あぁ、手入れしたら疲れたなー。仕方ないので、俺も風呂に入るとしよう。
ナニ? 混浴の為に全速力で手入れしたんだろうって? HAHAHA。俺が混浴の為に一生懸命仕事をするような奴だと思うかね?
答えはYESだ。混浴の為なら、神だろうが仏だろうが切り捨てる覚悟でござる。いざ湯かん、混浴のパラダイスへ!




