第146話 ジャンケン
シャーロットと操舵士の座を賭けてジャンケンすることになった。尤も、負けたとしても操縦の権限をなくしてしまえば――
「ショータ。負けても私を副船長から解任すればいいやとか、考えてないだろうな?」
「そ、そんなこと、考えたこともねーし」
「そうだな。ショータなら男らしく受けて立ってくれると思ってたぞ」
その割にジト目なのはなぜですかね。
「それより一発勝負でいいのか?」
「あー、そうだな。三回勝負にしよう。二回勝った方が勝者ってことで」
「いいだろう。何回勝負だろうと、私が勝つ事に変わりはないからな」
フフン顔がうぜぇ。チョップしてやろうか? だがリーダー決定戦の時は見事に三連敗したからな……何も言えない。いや、男は黙って結果を出せばいいだけだ。
「よし、ショータよ。操舵士の座を明け渡す覚悟はできたか?」
「ぬかせ。シャーロットこそ俺の操縦テクニックにビビるなよ?」
「よかろう……ジャーン」「ケーン」
「「ポン!」」
俺グー、シャーロットチョキ。よし、一回戦は俺の勝ちだな。一発勝負にしとけばよかったなとか思ってないんだからね?
「まぁ一回位は勝たせてやらないと、ショーちゃんがいじけちゃうだろうしな」
「はん! シャロこそ俺に負けて悔しいくせに」
「そうでちゅねー、ショーちゃんの初勝利でちゅねー」
子供をあやすような口調がうぜぇ。突き出した唇にチューしてやろうか?
「このまま連勝してやる」
「残念だが、ここからは私の時間だ」
「いくぞ! ジャーン」「ケーン」
「「ポン!!」」
俺パー、シャーロットチョキ。くそう、俺の負けか……。だがこれで一対一。次で決まる。
「ふっ、やはり流れは私の方にあるようだな」
「ちげーし。俺の方に流れあるし」
「ショータ……なんなら今からでも私に譲ってもいいんだぞ?」
「はぁ? まだ負けてねーし。むしろ、これからは勝ちだけだし」
「どちらにせよ、これで決着だ。行くぞ!」
「おう! ジャーン」「ケーン」
「「ポン!!!」」
俺チョキ、シャーロットチョキ。アイコか……あれ? シャーロットの奴チョキしか出してないよな。何か戦略でもあるのか?
「気付いたようだな……そうだ、私は次もチョキを出すぞ?」
「なっ!」
ここにきて心理戦だと? どうする?
素直に信じるのは無しだ。いくら何でも、それはあり得ない。
だが、何を出す? 単純に考えるなら、あーなってこーなってだから……チョキか?
いや、その裏をかいてグーを出してくるかもしれない。
いやいや、さらにその裏をかいてくるかも?
「フフン……迷え迷え。どの道ショータの負けは決まってるのだからな」
「……くっ」
シャーロットの囁きがうぜぇ。ワザワザ耳元で囁くな。これが某キャッチャーが使ったという『ささやき戦術』なのか……あぁ……アァ、イイニオイダナァ。ってマズイ! ジャンケンに集中しなくては……
「さぁ……ショータは大人しく座っていればいいのだ……」
そうだ……俺は大人しく……違う! 座って……駄目だ! おとなしく……惑わされるな! すわって……すわる? どこへ? キャプテンシート? 何処だっけ? 躁舵輪の前? シャーロットは躁舵輪を握って操縦? 船視点中は結構無防備?
あれ? 負けるとシャーロットが操縦してる姿を後ろから眺め放題? え? マジ? 勝ったら当然なしだよな?
……勝つ必要無くね?
「さぁ……これで終わりにしよう……ジャーン」「けーん……」
「「ポン」」




