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第1405話 遠心分離機

 バックドアを呼び出すのにあたり、白髪オッサンを部屋から追い出すのは割と簡単だった。

 というのも手に入れたばかりの生乳約20Lを、どこぞのちびっこ真龍種様がついうっかり全て生クリームと脱脂乳にしてしまったため、再度乳搾りをお願いしたのだ。

 ハンドルをグルグルと回すと白くてドロドロした液が出てくるのが、大層お気に召したらしい。


 そもそもの話、俺達がこのチーズ牧場に来たのは、ガロンさんの依頼でチーズをゲットするためだ。

 だが残念な事にチーズはエレさんに買い占められてしまった。

 そこで次なる手として、チーズの原料である生乳を手に入れた次第。


 なのに、『チーズにするためにゲットした生乳を、うっかり生クリームに加工してしまいました』では本末転倒である。

 もっとも、コレ(生クリーム)コレ(生クリーム)でガロンさんは大歓迎だろうから、問題ないっちゃないんだけどね。


 でも一応は会社勤めだった俺としては、任された仕事ぐらいはキチンと達成したい。

 ま、そんな事を言いだしたら、『それならば生乳ではなく、チーズを手に入れて帰ればいいのでは?』ってツッコまれそうだけど。


「なぁ、ショータ。それならば生乳ではなく、チーズを手に入れて帰ればいいのではないか?」


 ツッコまれた。

 うん、そうだね。俺もその通りだと思うよ。

 でもチーズを買い占めた奴が売ってくれないんだよ。

 あれだけ買い込んだんだから、一ホールぐらい売ってくれてもいいのにね。


「さすがに仕入れ値以下で売るのはねぇ……」


 と実にケチ臭く渋ちんな返事を返すエレさん。

 王都でも指折りの大商会といわれるフベルトゥス商会、その見習いとはいえ立派な従業員である手代として、赤字価格で売るのはプライドが許さないようだ。

 彼女には是非とも『損して得取れ』の精神を学んでほしい。


 え? だったら正規の価格で買えばいいって?

 いや、せっかく生産地……つまり流通に乗る前の、要は輸送コストやら中間マージンが発生しないこの牧場に来たんだから、少しでも安く買いたいじゃん。

 ……まぁさすがに仕入れ値以下はやり過ぎだったか。


 とはいえ、一度は仕入れ値以下を要求したくせに、すぐさま手の平を返し「やっぱり正規の価格で買います!」と言うのもカッコ悪い。

 ここは一先ず、もう一度生乳を買う方向で話を進め、白髪オッサンにはご苦労だが再度乳搾りをしてもらえるようお願いしたのだ。


 もちろん、その分の代金は支払ったし、更には人手も出した。

 本人も「乳搾り体験がしたいっス!」と騒いでいたし、まさにwinーwinといったところだろうか。


 さて、だいぶ前置きが長くなったが、とにかく白髪オッサンの排除には成功した。

 残っているのはシュリを除いたいつものメンバーに、マロンちゃんとエレさんがいるだけ。

 これで心置きなく、バックドアを呼び出すことが出来る。


「んじゃ、バックドア召喚!! と」


 応接室っぽい部屋の壁の棚とかが無い部分にバックドアが出現する。

 別に声に出さずとも呼び出せるけど、そこはまぁ気分ってことで。

 呼び出したバックドアのノブに手をかけ、中に入る。


「さて、遠心分離機がありそうなのはどこだろう?」

「そんな時のためのタンポポであろう?」

「だな」


 シャーロットの提案に頷く俺。

 ゾロゾロと入ってきた俺達を歓迎するかのように飛び回ってるタンポポだが、こう見えても立派なガイドフェアリー。

 どこにどんな機能が潜んでいるか全く分からないダンデライオン号内において、俺の求める機能の在処を教えてくれる存在なのだ。


「タンポポ、この船に『遠心分離機』ってあるか?」

「エンシンブンリキ……アル!」


 ダンデれもん様のことだから絶対あるよなぁ、と思ってたら案の定だった。

 早速案内を頼むと「久方ぶりのお仕事だ!」と文字通り飛び上がって喜びを見せるタンポポ。

 その喜びっぷりに、機能解放をかまけていた後ろめたさが募る。

 冒険やら食材集めもいいが、もう少し機能の解放もしないとだな。


 心の中で反省しつつ、タンポポの案内で工房に向かう。

 ん? あぁはいはい、工房の解放が必要なのね。

 製薬工房(MP1)とやらを解放し中に入る。


「これは……なんの工房なのだ?」

「なんのって……製薬用の工房だな」

「製薬用だと? セーレの屋敷にも製薬用の工房はあったが、こんな真っ白な部屋でもなければ、こんな見たことも無い不思議な道具もなかったぞ?」


 あー……この工房って製薬は製薬でも、バイオハザードマークが必要そうな工房だもんな。

 彼女が思い描くような製薬工房とは似ても似つかないだろう。

 ただ俺もこんなバイオ系の設備なんかチンプンカンプンなんで、機械の使い方を聞かれても答えられない。

 多分、機能を解放すれば『医療カプセル』みたいに、頭の中に使い方が流れ込んでくるんだろうけどな。


 物珍しそうに機械を眺めるシャーロットを他所に、俺はタンポポの後をついていく。

 といっても部屋の広さは工房の中身が変わっても一緒なので、さほど歩かずに目的地へと辿り着く。


「コレ! エンシンブンリキ!」

「あー、これかぁ」


 このバイオハザード感バリバリの工房をみた時点でなんとなくそんな気はしてたけど、やっぱりそっちの遠心分離機だったか。

 目の前にあるのは化学の実験とかで使いそうな、あるいは科学捜査班とか医療系ドラマに出てきそうな、そんな遠心分離機だった。

 うん、確かにこれも遠心分離機には違いないんだけど、俺が求めている遠心分離機とはちょっと違うんだよな。

 俺が求めていた遠心分離機は、ついさっき使ってたようなタイプだったんだよ。


 一応、せっかくタンポポが教えてくれたんだし、機能は解放するけどね。

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