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第1403話 生産計画

「ふーん。その練乳ってのをウチの村で作ればいいの?」


 練乳を量産化するにあたり、ネックになりそうなのが殺菌と密閉だろう。

 その解決策として思いついたのが、ケチャップ作りを始めたウルザラ村に丸投げする案だ。

 ただ、あくまで俺が勝手に思いついただけなんで、一応関係者であるクレアやエレさんにも相談はしておく。


「あぁ、この牧場だと殺菌や密閉する設備を作ったり、その為の人を新たに雇ったりする必要があるだろ? その点、ウルザラ村なら設備を流用できるし、人手もあるからな」

「まぁ、確かにこの牧場で用意するのは厳しいだろうね」


 俺の言葉に頷いてみせるエレさんは、チーズを取引するにあたり、牧場内の設備とかも見回っていたらしい。

 そんな彼女の見立てでは、チーズの生産量を増やすのは出来ても、新たな製品を作るほどの余裕は無い、とのこと。

 白髪オッサンもエレさんの言葉に同意するかのように、ウンウンと頷いている。


 まぁたしかに設備にしろ人手にしろ、新たに手配しようとすればそれだけ金がかかる。

 ぶっちゃけ、アイスクリームやチーズのようなそれ単体で売れる商品と違い、練乳はどう頑張っても調味料の一つに過ぎない。


 これまでにない新製品とはいえ、どれほど売れるかは未知数。

 そういった投資を回収できれば万々歳だけど、そう儘ならないのが世の常だろう。

 だったら原材料であるウージィミルクをウルザラ村に収める方を選ぶのも、アリっちゃアリだ。


「それにほら、トマトってこの時期にしか採れないだろ? その点、ウージィミルクなら一年中いつでも手に入るから、時期を問わないだろうし」


 こちらの世界にはハウス栽培なんてないから、トマトが採れる時期は決まっている筈。

 まぁ夏の野菜にしては採れる時期が早い気もするが、そういう品種なんだろう。


 とにかく、採れる期間が限られたトマトでは、採れない時期は折角の設備が遊んでしまうからな。

 それならばトマトの採れない時期に練乳を生産するようになれば、年間を通して利益が見込めるようになる。


「いやいや、ウージィが乳を出すのは春から秋までの間だけだぞ。コイツ等だってエサとなる牧草が無ければ乳は作れねぇ」


 そんな俺の完璧ともいえる販売計画に、待ったをかけたのは白髪オッサンだった。

 なるほど、MPを消費するだけでカップ麺や醤油を生み出せるダンデれもん様と違い、食うモノを食わねば出るモノも出ないのが生き物の常。

 食料となる牧草が乏しくなるであろう冬だと、自身を生かすために乳を出す余裕は無くなるのか。


 ちなみに牛が乳を出すのは自身が産んだ子牛を育てるためだが、ウージィは別に出産せずとも乳が出るらしい。

 では子牛というか子ウージィは何を食べて育つのかといえば、産まれた時から普通にモッシャモッシャ牧草を食って育つのだとか。

 哺乳類のくせに乳で育たないとか、実に謎な生態である。


 ……あ、そもそも哺乳類とは限らないのか。

 もしかしたら乳のように搾れるけど、乳とは別物なのかもしれん。


 一応、殺菌処理されたウージィミルクを飲んでみたけど、味は普通の牛乳と変わりなかった。

 だが変な草を食うとランペーロに進化するし、牛のように見えても全く違う生き物なんだろう。

 世界は不思議で満ちている。



 完璧ともいえる販売計画といえど、自然の摂理には逆らえない。

 冬の間は設備が遊んでしまうが、まぁ仕方ない。

 冬は冬で何か別の製品を作るようになればいいだけの話だ。


 というか、そもそもの話になるが、別に俺がウルザラ村のケチャップおよび練乳生産計画を立てる必要は無い。

 ケチャップ作りの発端だったり、あるいは練乳の作り方を読み解いたせいで、つい量産化の話をしていたけど、よくよく考えたら俺が決めるような事ではない。

 俺は飛空艇の船長兼冒険者であって、経営コンサルタントではないのだ。


 ということで、その辺の計画は牧場主である白髪オッサンと、ケチャップの買い取りと販売を担うフベルトゥス商会のエレさん、それとウルザラ村の村長の娘であるクレアの三者会談で決めてもらう。

 人はソレを丸投げと言うのかもしれんが、そこはマルナゲンの本領発揮ということで。


 そんな事より生乳だよ、生乳。

 ダンデライオン号なら冷蔵保存が出来るんだから、練乳よりもこっちを運んだ方がずっと使い道がある。

 牛乳と変わらないなら、生クリームとかも作れるだろうし。

 夢は広がるぜ!


 ……ま、生クリームの作り方、知らんけど。

 アレク君なら分かるかな? それともシュリ?

 案外、白髪オッサンのほうが分かるのかな?

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