第135話 フラッシュ
「お兄ちゃん、おきてー」
誰かがペチペチと顔を叩いている。それにお腹の辺りに微妙な重さを感じる。薄っすらと目を開けてみれば、マロンちゃんが布団に乗っかって俺の顔を叩いている所だった。
幼女がお腹の上に乗って起こしてくれるって、一部の嗜好の奴らにしたら天国だろうな。生憎俺は違うけど。
「あ、おきたー。おはよー」
「おはよう、マロンちゃん。起こしてくれてありがとうね」
マロンちゃんの頭を撫でつつベッドから起きる。うっかり撫でちゃったけど、事案とか発生しないよな?
「どういたしましてー。あ、そうだ。お父さんがね、ちょっとききたいことがあるって、お兄ちゃんをよんでたよ」
「ガロンさんが? なんだろ? まぁとりあえず着替えてから行くよ」
「りょうかいー」
マロンちゃんがベッドから降りるのに合わせて、俺もベッドから抜け出す。鎧戸を開ければ、太陽が昇り始める所だった。今日もいい天気になりそうだな。
ガロンさんが待っているとのことなので、手早く着替えて階段を降りようとする。が、見えない壁に阻まれて、進むことが出来ない。あ、そういえばシャーロットの部屋にバックドアを出したままだったな。
一旦引き返し、シャーロットの部屋をノックする……返事は無い。宿のベッドで寝ているのか、あるいは未だ飛空艇の方か。まぁ壁に阻まれたんだから、飛空艇だろうな。
ドアノブを回してみると、あっさり開く。不用心だなと思ったが、逆にカギがかかっていた場合、彼女が出てくるまでずっと待たなくてはならなかったので、好都合ともいえるな。
部屋の中は昨日もチラッと見たので割愛。そもそも宿の部屋なんだから、各部屋の作りなんて似たようなもんだしな。
一応ベッドを見たけど、彼女が寝ている様子もない。というか使った様子が無い。どうやら結局飛空艇で一泊した様だ。
部屋を取った意味が薄いなぁとか思いながらバックドアをくぐる。さて、シャーロットはっと……まぁ予想通り光点は大浴場に一つだけだ。
普段なら待っててもいいんだが、今はガロンさんを待たせている。ここは実に心苦しいが強硬手段をとらざるを得ない。あぁ心苦しいなぁ(棒)。
脱衣所から「おーい」と顔だけ覗かせると、湯船で泳いでいるシャーロットと目が合った。
「…………」
「…………ちょ、朝食の時間か? わかった。すぐに向かう」
彼女は何事もなかったかのように湯船から上がると、そのプロポーションを惜しげもなくさらけ出したままスタスタと俺の横を通り過ぎ、バスタオルで体を拭きだした。
そのまま巾着袋から着替えを取り出すと、その場で着始める。ほう、今日は赤ですか。褐色の肌に映えててよく似合ってますな。
「……目付きがイヤらしいぞ」
「健全な男子が、美人の生着替えを見ていれば同然だろう」
「そこは大人しく、後ろを向いているべきだと思うのだが?」
「だが、断る!」
「そうか……ならば!」
ピカッ!
「ぎゃー! 目がー! 目がー!」
突然目の前に太陽を直視したほどの眩しさを持つ『ライトボール』が生み出された。彼女の着替えシーンをガン見していた俺は真面に喰らってしまい、何も見えなくなる。
これはまさか『フラッシュグレネード』か? 昨日の風呂での話の中で、例の夢の中の対戦の事を話したんだが、ついでにフラッシュグレネードのことも話した覚えはある。
けれど、まさか彼女に喰らわされるとは……悔しいから、あとで教えてもらおう。
どこぞの大佐よろしくのたうち回ってる俺を放置して、サッサと出て行くシャーロット。せめて介抱位してくれてもいいのに。
何とか視界が回復したのは彼女が飛空艇から立ち去って暫くした後だった。
今回のタイトル、バ〇ス!にするか迷いました。




