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第129話 とんかつのしんか

 俺とシャーロット、ガロンさん一家にアレク君パーティーの総勢八人での夕食会が始まった。

 今夜のメニューは、メインとなるフリュトンのトンカツにウコッコゥの唐揚げ。あとはパンにご飯にスープ、そしてサラダ代わりのキャベツの千切りだ。

 どっかのコロッケの作り方の歌を思い出したとき、キャベツの千切りの存在も思い出したのでガロンさんにトンカツの作り方と共に伝えておいたのだ。


 それはさておき、先ずはメインのトンカツから頂くとしようかね。早速ソースを掛けてっと……ってソースはどこだ? あぁ、シャーロットが使ってるのか。まぁ、使い終わったら貰えばいいか。

 とりあえず、そのままで一口。うーん、ワイルド・ボアのに比べると臭みが無いのが分かるな。むしろ生姜焼きの時には気が付かなかったいい香りまでする。なんでだ?


「肉は何日か置いておくと味や香りが良くなる時もあるからな。そのせいだろ」

「なるほど、言われてみれば仄かに感じるな。あぁ、これはフリューのものに近い香りだ」

「肉の香りは食べたものに影響されると聞いたことがあります」


 料理に関して一家言のある三人からのコメントを聞き流す。その間にソースはシャーロットからベルへ手渡されてしまった。さらにベルからアレク君、クレアと回っていってしまう。

 仕方ないので今度は唐揚げに手を伸ばす。柔らかくジューシーなモモ肉に醤油の香りとニンニクが効いてて、有り体に言って美味い。

 さらにレモンを絞ればさっぱり感も加わって食が進む。ご飯が美味いです。トンカツ(塩)→ご飯→唐揚げ→ご飯→トンカツ(レモン)のループに入る。


 その間にソースはマデリーネさんからマロンちゃんへを渡り、現在ガロンさんが使っている。って、ガロンさんの様子がおかしいぞ?


「おっといかんな。ソースの売れ行きが良すぎて、使い切ったみたいだ。すぐに取ってくるんで、ちょっと待っててくれ」


 そういって厨房へ向かうガロンさん。ソース待ちの間に塩むすびを皆に配ってみた。反応はボチボチといったところか。まぁ、みんな既にご飯を食べてるからか、感動が薄いのかもしれない。どうやら完全にタイミングを外したようだ。残念。


 だが、そんな塩むすびを、ガロンさんは「形を変えるだけでも、味が変わるもんだな」と評価してくれた。

 その評価は嬉しいが、それよりもソースだ。やっぱトンカツにはソースがないとね、と手を伸ばす。が、そこへ横から声が。


「おぉ、ソースのお代わりとは有り難い。なかなか癖になる味でな。どら……」


 そう言ってシャーロットはガロンさんからソースを受け取ると、トンカツをあろうことかそのままソースをドボンさせた。

 あまりの仕業に、渡したガロンさんもビックリだ。そりゃそうだろう。掛けるために渡したソースなのに、まさかの串カツをソースに付けるかの如くトンカツを入れられたら、誰だって呆気にとられる。


 だが、そんな俺達を気にすることなくシャーロットはソースに浸したトンカツをご飯の上にパイルダーオンしやがった。


「なっ!」

「なんだショータ? いきなり声を上げて」


 思わず声が出るのも仕方ないだろう。なんせ今日初めて食べたはずのトンカツを、その日のうちにソースカツ丼に進化させる猛者がいるとは微塵も予想しなかったからな。

 というか、よく思いついたよな。もしかしたらシャーロットも転移者なのか?


 卵とじのカツ丼が俺の頭にあったせいか、彼女の行動を見て「あぁその手があったか」と、転移者の俺が感心してしまったほどだ。

 ガロンさんやアレク君の驚きはどれ程だろうか……。


 二人はしばし固まっていたようだが、シャーロットがソースカツ丼を豪快に掻っ込む様をみて我に返ったようだ。自分の皿の残ったトンカツをシャーロット同様ソースに漬け込むと、ご飯の上に載せ一緒に掻き込む。


「コイツは……」

「ご飯とソースとトンカツの相性がこれほどいいとは……」


 とか言いながら、モリモリ食べていく二人。それに触発されたのか、傍観していた女性陣も真似をし出す。


「こっちの方が食べやすいわね」

……(コクコク)

「別々に食べるよりも、食が進むわ」

「ごはんにソースだけでも、おいしーね」


 みんな好評価だ。あとマロンちゃんや、うっかりソース掛けご飯(新しい料理)を作らないでね? 確かに美味しいけど、ちょっと見っともないからね? あれ? 異世界なら関係ないのか?

 って、みんなで使ったら俺の分のソースが……。


 気が付いた時には手遅れだった。さっきのマロンちゃんのソース掛けご飯で使い切ってしまったらしい。

 結局、俺はソースを使うことが出来なかった。まさかアレク君のガロンさんへの手伝い(弟子入り)を伝え忘れたバツだというのだろうか。




 あ、ソースの二度漬け禁止は、ちゃんと伝えておきました。

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