第12話 天井……?
「知らないてんじょ……天丼?」
それはまごうことなき天丼だった。
すきっ腹に堪える、実に美味そうな上手い天丼の天井画だった。
しかも無駄に凝っていて、別の角度から眺めると普通の天井に見える。
だが丁度真下、つまり寝た時に頭があるとこから見ると天丼が見えるようになっていた。
更によく見れば、2つ並んでいる。
昔流行った立体視か?
やってみたが立体的には見えなかった。
ただ二つ並んでいるだけで、無駄に腹が減るだけだった。
ぐぬぬ、と睨んでいるとウィンドウが現れた。
『MP1を消費し「機能:今日のラッキーアイテム」を非表示にしますか? MP10/10』
非表示にするのにもMPが必要って……というより、天丼2つが今日のラッキーアイテムって何なんだ?
あれか? 今日、昼飯食べるとき「天丼2つで」とでもいえばいいのか?
つかこの世界に天丼あるのか? 米も? 過去に召喚された人とかが伝えたのか?
そもそも今朝の飯の心配が先だよ!
こっち来てから水と氷しか口にしてないよ!
いい加減味のあるもの食べたいよ! ……あ、塩食ってた!
よくよく眺めてみたら「野菜のかき揚げ丼」と「小海老のかき揚げ丼」だった。
小海老のかき揚げ丼じゃなくて普通の海老天丼が良かったよ。
いつか非表示にしてやると心に決めNOを押す。
ちなみにNOボタンはプルンと感だ。ゼリーっぽい。
おしいな……NOもムニョっと感なら延々と押し続けられるのに……たぶん1日中押してられるな。
朝から疲れることをしたと思いながら、窓の外を眺める。
ちなみに窓は付いている……船にあるような丸窓だけど。
トイレにも似たような窓があったな。
ついでに言えば、操縦室は前面がガラスになっていた。
外から眺めた時はガラスがあるように見えなかったから、マジックミラー的なものかもしれない。
まあいい、外の話だ。
まだ薄暗いし、夜明け前なのかもしれない。
あるいは丸一日寝過ごしてまた日没なのかもしれない。
時計がないから時間も分からん。
操縦席ならあるか?
仕方なくベッドから起きだす。
万が一、現時刻が日没後なら、もう一度寝直すかね。
次、起きた時も日没だったらどうしよう……
等としょうもないことを考えるのは半分寝ているせいか。
操縦室に到着する。
シートに座り時刻を確認するが、どうやら夜明け前らしい。
丁度いい、飛空艇と一体化した視点――長いな……『船視点』でいいか――船視点で夜明けを見る。
これは凄い。
自分の目で見るよりもよく見える。
夜の黒から早朝の赤、そして朝の青に変わっていく。
それらの色の変わりゆくさまが鮮明に感じられる。
早起きは三文の得というが三文どころの価値じゃない。
これは金がとれる。
ここまで来て一泊するツアーを組めば、満員御礼間違いなしだろう。
おお、これはいいアイディアかもしれない。
飛空艇なら時間もかからないだろうし、空を飛べば道中の険しさも関係ない。
居室もあるから五人ぐらいは乗せられるし、問題は食料ぐらいだろう。
と、ここまで皮算用したが船長がLV1の俺であることに気が付く。
確実に乗っ取られるな。
確率的には、出走馬1頭の競馬の単勝を当てるようなもんだ。
やはり俺が強くなるか裏切らない護衛を雇うかしないとだな。
18/01/05
諸々修正。