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第117話 命の価値は

「よくやったな。MP切れを狙う作戦は、中々よかったぞ」


 シャーロットが労ってくれる。何かのゲームにあった戦法だったけど、ハマってくれてよかった。


「だが、相手に助けられた点もあった作戦だな。ウコッコゥのMPがもっと多かったり、殺傷力の高い魔法を使って来たら、負けていたのはお前達だったろう」

「あー、そうか。MPはともかく、エアハンマー以外も使ってくる可能性があったのか」


 エアハンマーも当たる面積がデカい分、威力が低めだった。おそらく習得したてで使い方をマスターしてなかっただろうし、もしかしたら今回初めて使ったのかもしれない。


「あぁ、風系魔法にはエアハンマーのような空気を押し出す以外にも、つむじ風を起こしたりするものもある」

「カマイタチとかもあるのか?」

「かまいたち?」

「えーっと、魔法で真空を作り出して、相手を切り付ける……みたいな?」

「聞いたことないな。第一シンクウとはなんだ?」


 マジか。魔法といえど、何でもありって訳じゃないのか。いや、真空の概念が無いのか。なまじっか魔法があるだけに科学技術とか未発達なのかな。


「真空ってのは空気が無い状態の事だな」

「あぁ、時々坑道内で息が苦しくなって、坑夫が死ぬことがあるらしいな。あれは真空というのになったからなのか」

「いや、それは酸欠だと思うぞ」

「真空とは違うのか」


 科学知識の無い人に説明するのは手間なので、「あとで説明するよ」と誤魔化す。いつとは言ってないからな。そのうち忘れてくれる事を期待しよう。


 なお、例のごとくウコッコゥはシャーロットの巾着袋の中だ。マジあの中、入りすぎだろ。一回限界まで入れてみたい。いや、破裂でもしたら取り返しがつかないから、止めておこう。

 ちなみにウコッコゥだが、魔石と羽毛はギルドに売って、シャーロット以外の四人で山分け。肉はガロンさんへの持ち込み食材となった。




「いい? 魔石は必ず回収するのよ? あと集団戦は連携が重要になってくるわ。特に指揮者は重要なポジションになるのよ? 仲間の力量もわかってないのに勝手に指示を出したりしないでよね」

「そうだな、気を付けるよ」


 北門に向かいつつクレアからのレクチャーを聞いている。シャーロットから受ける予定だったけど、なぜかクレアが――ちょっと偉そうにしつつ――教えてくれている。

 彼女のレクチャーを聞いてはいるけど、どうも例の金髪ドリルが気になって仕方ない。アレってどうやって作ってるのかなぁ。コテとか無いだろうしなぁ。


「……という事よ。分かった?」

「……あ、あぁよく分かった」

「本当に分かったんでしょうね?」

「アァ、モチロンダ」


 とか、やり取りしてるうちに北門に辿り着くと、いつも通りギルド証を提示し門をくぐる。ガロンさんは今日も串焼き屋だろうか。

 でも先にギルドで清算しないとだな。今回は薬草の他にトロールとワイルド・ボア、あとウコッコゥの買取もある。俺もいよいよ「こ、これは……」デビューだな。異世界に来たんだから、是非やっときたい。

 それが終わればアレク君達とは一旦別れることになる。まぁ、ウコッコゥの料理を一緒に食べる約束はしてるから、直ぐに会えるだろうけどね。




「この依頼の清算を頼む。あと素材の買取もお願いしたんだが」

「はい、『パレシャード』様、薬草採取ですね……はい、薬草三十束確認できました。報酬は清算窓口でお受け取り下さい」

「はいよ」

「あと、素材の買取もあるとのことですが……」


 あぁ、薬草以外は持ってなかったからな。受付嬢が戸惑うのも仕方ないか。


「シャーロット、頼む」

「あぁ」


 俺の代わりにシャーロットが前に出る。


「ふーむ、このテーブルには載せられそうにないのだが?」

「あ、マジックバッグをお持ちでしたか。では、奥の部屋でお願いします」

「分かった」


 シャーロットは受付嬢について奥の部屋に行く。何となく取り残された俺。あれ? これってアイツが「こ、これは……」を言われるパターン? イカン! 俺もついて行かないと!


「あら、ショータだけ置いてけぼり?」

「そうならないように、俺も行くところだよ」

「あらそう。あたしたちは先に戻ることにするわ。じゃあ、夕方にね」

「あぁ、ガロンさんの宿でな。おっちゃんには、俺からお願いしておく」

「よろしくね」


 先に清算を済ませたクレアと別れ、俺も奥の部屋へと向かう。が……


「「「こ、これは……」」」


 遅かった……既にトロールやワイルド・ボアは披露され、担当の人達の視線はシャーロットに注がれている。

 彼らの呟きが聞こえる。


「ウコッコゥにワイルド・ボア、トロールまであるぞ」

「ウコッコゥは丁寧にシメられているな」

「ワイルド・ボアは一撃だぞ? このサイズで一撃とは……」

「トロールの魔石は無しか……」

「残念だな。魔石が有れば買い取り額は銀十にはなったろうに……」

「魔石無しだと銀四か?」

「傷は少ないが、生まれたてのようだしな……銀三位じゃないのか?」

「トロールは魔石以外だと、骨と皮ぐらいしか使い道が無いのにな」

「生まれたてから皮が柔らかいしな……」


 なんかトロールの評価がイマイチだ。死にそうになって倒したのに……。


 結局買い取り額はワイルド・ボアが金貨一枚と銀貨五枚、トロール銀貨三枚、ウコッコゥ銀貨五枚。これに薬草採取の報酬、銀貨五枚を加えて、合計金額は金貨一枚と銀貨十八枚。


 ワイルド・ボアが高いようだが、ほぼ肉の金額だな。銀貨五枚は毛皮の分らしい。ウコッコゥは肉込みなら大銀貨一枚だったそうだ。

 ウコッコゥが高いのか、トロールが安いのか。命懸けの報酬が銀貨三枚とか安すぎる。槍と同額だ。ヤツに壊された盾が銀貨四枚だったから、大赤字だ。


 もう二度とトロールとはやりたくないと思いつつ、解体したウコッコゥの肉と報酬を受け取る。さて、次はガロンさんの屋台へ向かうかね。

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