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第111話 事情

「――という訳なんです」


 アレク君?ちゃん? いや、君だな。アレク君の一人語りが終わった。さすがに風呂場で聞く内容じゃなさそうなので場所を移し、現在は工房で話を聞き終えたところだ。


 彼の話によると、彼は森に捨てられた子供だったそうだ。それを村の猟師が見つけたそうだ。子供のいない猟師夫婦は、アレク君を育てることを決意。


 そのままスクスクと成長し、将来は猟師になるのかと思ったら、何故か胸までスクスクと成長しだす。あれ? ボクって女の子? でも男の子の部分もちゃんとあるよね?

 で、疑問に思ったんで両親に相談。両親ビックリ。全員男の子だと思ってたそうだ。その時に実は本当の親子じゃない事も聞いたそうだ。


 重くなる雰囲気。そうだよな……両親だと思ってたら実は赤の他人で、しかも自分の体は両方付いてるとか、何重苦だよって話だもんな。

 でも、さすがのアレク君。「血は繋がってなくてもこんな体でも、ボク達は家族だよ!」と言い切った。両親感激。メデタシメデタシ。


 ……とはいかなかった。そこへ登場したのが幼馴染のクレアだ。「本当の両親を探しに行きましょう!」とか言い出して、アレク君を冒険者の道に連れ出してしまう。


 クレアは元々冒険者志望だったそうだ。丁度同じ時期に成人したベルと一緒に冒険者になるべく準備していたところ、アレク君の事を聞きつけたらしい。


 余談になるが、アレク君とクレアは15歳。ベルは12歳だそうだ。あれで12歳? しかも成人ってどういうこと? と尋ねたら、熊人族(ベルの種族)は成長が速くて、12歳で成人と認められるのだとか。

 余談の余談になるけど、この世界の成人は、子作り出来るようになれば成人となるようだ。命の軽い世界じゃ、そんなものなのかね。


 話を戻すと、クレア達が「もう一人ぐらい欲しいわよね?」「……」とか言ってた矢先に、その情報だ。しかも、アレク君なら猟師見習いとして育てられていたから即戦力だ。これは逃す手はないと行動開始。

 

 彼女の妙な交渉力に、両親も陥落。遂には、涙ながらに送り出される始末だった。なお、猟師の後継者は村の若い奴が担うことになったそうだ。勿論これもクレアの交渉力がさく裂した結果らしい。


 いつの間にか退路の断たれたアレク君は、なし崩し的に彼女のパーティーに入ることになり、現在に至る……ということらしい。


「でも、ステータスに性別載ってるよね?」

「それがですね……」


 なんとアレク君は「両性」で「だんせい」と読むものだと、勘違いしてたそうだ。識字率が低いこの世界じゃ、そういった勘違いも生まれるのかもしれない。

 実際、彼らもわざわざ書いてまで確認することもしなかったらしく、その時まで気にしたこともなかったようだ。




「苦労したんだな……」

「そうですね……一番ツラいのは、周りの目でした。変わらなかったのは両親以外だとクレアとベル位で、村でも結構変な目で見られるようになったんです。あの……ショータさんは平気なんですか?」

「あーまぁ、似たような奴なら見たことあったし」

「そうなんですか……」


 同窓会の時、見慣れない美人がいるなぁと思ってたら、同じ部活だった清水(♂)だった。久しぶりに会ったらニューハーフになってたとか驚いたのなんの。一応本人がOK出したんで、触らせてもらったけど両方付いてたし。

 アイツが養殖モノなら、こっちは天然モノみたいなもんだろ? 大して変わらんよ。


「ボク、こんな体だと分かってからは人付き合いが苦手になっちゃって、同じくらいの男友達とかいなくなっちゃったんです……」

「そうか……俺でよかったら、友達になってやるよ」

「ホントですか? ぜひお願いします!」

「えーっと、アレク『君』でいいの?」

「そうですね。今まで男として育てられてたんで、ボクの中では男の認識なんです」

「そっか。じゃあアレク君、改めてよろしくな」

「はい! よろしくお願いします!」


 そういって握手する俺達だった。その後アレク君と男同士?の話をしていたが、次第にアレク君がウトウトしだすようになったんで、解散ってことになった。

 なんだか足取りが怪しいので彼の部屋まで送り、ベッドに寝かせる。変なイベントが起きることもなく、俺は自分の部屋に戻ってベッドに潜り込んだ。


 おっと、睡眠学習とやらはOFFにしておかないとな。MPは要求されたけど、MP1なら誤差だな。OFFにしたことを確認し、目をつぶる。今度はぐっすり眠れるといいな。




 ところで、風呂とかどうするんだ? 一緒に入っていいのか? お互い気にしなければいいのか?

今度こそ五日目の終わり。

と、同時にアレク君のヒロインルート(たぶん)も終了。


しかし、いつになったら飛空艇は空を飛ぶのやら……。

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