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第106話 アレク君の得意技

 結局アレク君達のメニューはコッコゥの丸焼き・その辺の野草・硬そうなパンのようだ。カリカリ揚げは遠慮したようで、シャーロットが独り占めしている。後でフライパン使用料と称して分けてもらおう。

 彼らが食べる前に、ちょっと丸焼きの味見させてもらったけど、マジ美味かった。シャーロットもその味を絶賛している。


 アレク君は謙遜しているが、ガロンさんといい勝負かもしれない。特にアレク君オリジナルブレンドのハーブが絶妙だった。

 ガロンさんもブレンドハーブを使って味付けをしているが、俺的にはアレク君の方が好みかもしれない。


「そうですか? ボクとしてはガロンさんの串焼きの味を再現したくて、頑張ってるんですけどね」

「へぇー。俺達ガロンさんの宿に泊まってるんだけど、確かに料理は最高だったよ」


 もっとも俺の中のガロンさんは「バカヤロウ! 料理()最高だったに訂正しとけ!」と叫んでいる。だけど飛空艇の設備と比べちゃうとねぇ……せめて風呂が有ればなぁ。


「本当ですか?! ボク達も泊まりたかったんですけど、今は大事な時期だって断られたんですよ」

「あー、そういやそんなこと言ってたな」

「でもその代わり、泊まらなくてもガロンさんの料理が味わえるようになったから、逆によかったかもです」


 聞けばアレク君は元々料理好きで、ガロンさんの串焼きの味に近づくべく試行錯誤しているらしい。

 その結果が、この丸焼きに使われたブレンドハーブなのだから、ひょっとしたら彼は金の卵なのかもしれない。ガロンさんに紹介したらどんな反応するかな。


「ダメよ。アレクはウチのパーティーのかなめなんだから。引き抜こうとしたら承知しないわよ?」

「……」

「クレア……ベル……嬉しいけど、その手にあるモモ肉が無ければ、もっと良かったと思うよ?」

「それは無理ね」

「……」


 ベルもモモ肉を咥えたまま頷いている。もしかしてアレク君がかなめとは、料理番的なのかもしれない。


「そんなことないわ! 事前の準備だって大事な役目よ!」

「……」

「そうね。戦闘は私達二人に任せておけば万全よ!」

「クレア……ベル……。ボク、パーティー辞めていい?」

「そんなのダメに決まってるでしょう? いいからサッサと食べないと、大事なシショーが待ってるわよ」

「あっ、師匠。スミマセン、スグ食べます」


 いや、アイツが今考えてるのは、サッサと風呂入りたいなぁ、だと思うぞ? 昨日もそんな顔してたし。




 食事と片付けが終わったので、彼らを船内に招き入れる。先に俺とシャーロットが入って、彼らが後から入る形だ。

 もし彼らがこの船に対してよこしまな感情をいだいていれば、侵入者警告が発せられるはずだ。


 まぁそんなことは杞憂だったけどね。彼らは終始恐縮しているだけだった。風呂場を見せてもスゴイとか入らせてくれどころか、何ですかコレ程度だった。風呂の文化が無いのか?


「ところで、なんであんなに恐縮しまくってたの?」

「だって勇者様の逸話に出てくるマジックルームですよ? それをボク達が使わせてもらえるなんて恐れ多くて」

「そ……そうなんだ。彼女は凄いものを持ってるんだな」

「ショータさんも、もっと師匠に感謝するべきです」

「そうだね、プロテインだね」

「プロテ?」

「いや、なんでもない」


 現在、俺はアレク君の二人っきりの状態だ。まぁ他の三人は風呂を堪能しているところなんだけどね。


 風呂に入ったことのない三人のうち、クレアとベルは「何事も経験よね」「……」と言って初挑戦中だ。まぁ何かあってもシャーロットが付き添っているから大丈夫だろう。

 アレク君は遠慮したので、男二人で工房に籠っているところだ。シャーロット達が戻って来るまで暇なんで、防具の手入れを済ませておくことにした。


 ちなみに風呂の文化の話だけど、便利魔法の洗浄のせいで風呂という発想が無いようだ。ただ温かいお湯に浸かることはないけど、水浴び位はする時もあるそうだ。魔法も善し悪しなんだな。


「ホントに風呂はいらないのか?」

「えぇ、大丈夫です。それよりも手入れを終わらせちゃいましょう」

「そうか……まぁ入りたくなったらいつでも言ってくれ。俺が入り方を教えてやるからな」

「だ、大丈夫です。クレアやベルもいますし」


 むぅ残念。まぁいいや。風呂は一人静かに入りたい派かもしれないし。

 それより手入れだな。皮鎧の方は慣れたもんだけど、槍がねぇ。アレク君なら知ってるかな?


「ちょっと聞いてもいい? 槍の手入れって分かる?」

「槍ですか? スミマセン、ちょっと分からないです。あ、でも剣の手入れなら分かりますよ。それと同じようにやってみては?」

「おー、さっそく教えてもらえるかな?」

「えーっとですね、まずは……」


 剣の手入れだと、砥石で研いだあと油を付けておけばいいようだ。油は植物性がいいらしい。アレク君が砥石を貸してくれたので、やってみる。


「そうですね。もうっちょっと力を入れた方がよさそうですね……そう、そんな感じです」


 シャーコシャーコと無心で槍を研ぐ。コイツには世話になりっぱなしだからな。念入りに研いでおいてやろう。しばらく研いでいたら、何となく切れ味が最大になったような気がする。


 あとは、これまたアレク君から借りた油を塗りこみ布で拭く。俺の方の手入れが完了した辺りで、シャーロット達が戻って来た。

 三人ともホコホコのツヤツヤだ。初体験の二人もしっかり堪能できたようでなによりだ。


 風呂があいたようなので、俺も入ることにする……ふぅ今日はゆったりと堪能したな。

 俺の入浴シーンなんて誰得だろうから、省略できるところは省略していくぜ。

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