第105話 ロック
「じゃあショータはアレク達の部屋を用意してやってくれ。私は食事を先に済ませるように伝えておこう」
「わかった」
といっても、居室は五部屋とも開放済みだから用意する必要もないけどね。とりあえず部屋の様子を確認してみたけど、特におかしい所はなさそうだし。
あ、そういや操縦室や厨房・機関部等は、この世界ではあり得ないモノじゃないのばかりだな。
いくら魔道具ですと言い張ってるとは言え、不自然なものだってある。まぁ、そんな時はいつものパターンに縋るしかないだろう。
『MP2を消費し「機能:ロック」を開放しますか? MP45/45』
ロック、つまり施錠機能か。確かにこの機能があれば、操縦室や厨房・機関部等に立入れなくなるだろう。
さすがダンデライオン号様だ。的確な機能を提示してくれる。どっかの青いタヌキよりも遥かに有能な気がする。MPも増えたことだし、どんどん機能や区画は開放していこう。
いつものようにムニョっとYESを押す。そういやこのムニョっと感は魔力が使われているって事だよな?
つまり機能の開放も魔法の一種と考えてもいいはずだ。そう、俺は異世界初日からダンジョンアタックに加え、魔法まで使っていたって事になる。俺すげぇな……うん、わかってる。でも、たまには自分を褒めてやらないとね。
思考が逸れたな。さっさとロックしていこう。まずは一番不自然な操縦室をロックするか。
『現在「区画:操縦室」は開放中です。ロックしますか?』
どうやらMPは要求されないようだ。ありがたいと思いながらYES。するとガチャっと重い感じの音が鳴り、操縦室へのドアが開かなくなる。
『現在「区画:操縦室」はロック中です。開放しますか?』
ついでにウィンドウも切り替わった。開放にもMPはいらないようなので、他の区画もロックしていこう。
厨房OK。下層への階段OK。上層への階段……はロックしないでおくか。風呂は見られるとマズい様な気もするが、そこは何とか誤魔化そう。
工房はしなくてもいいな。どうせ作業台しかないし。あとは……そうだ、展望デッキはしておこう。上層へエレベーターで移動する。ってエレベーターもマズいな。ロックできるのか?
『現在「機能:エレベーター」は開放中です。ロックしますか?』
おお、機能までロックできるのか。さすが消費MP2と、ちょっと割高感のあった機能だ。よし、エレベーターもロックっと。
あ、トイレはどうすっか。あれこそ不自然の塊のような気もするけど……いいや、ロックしない。風呂とトイレと寝る所は妥協しない男なのだ。
さて、ロックしないとマズそうなところは、全部見回れたかな? まぁ見つかったら、その時はその時で考えよう。そういえば、アレク君達はどうなったかな?
再び外に出れば、アレク君達は食事の準備中のようだ。どうやらメニューはコッコゥの丸焼きらしい。
アレク君が焚火の前でじっくりと焼いている。クレアちゃんはサラダ代わりに食べられる野草を毟っているし、ベルは食器を並べていた。
シャーロットはどうしてるのかといえば、彼女はアレク君の横でカリカリ揚げを作っているところだけど、アレク君が横で微妙な顔をしているぞ?
あの顔は「この人を師匠にして大丈夫か?」って不安なのと、「いや! ボクには考えが及ばない深ーい理由が有るに違いない」とが鬩ぎ合ってる顔だな。多分ヤツは食い気だけで動いてると思うぞ?
そんなアレク君など気にも留めず、シャーロットは――多分巾着袋から取り出したであろう――フライパンでコッコゥの皮を炒めている。って、あのフライパン、厨房にあったヤツじゃね? いつの間に持ち出したんだ?
シャーロットも俺の視線に気が付いたようだ。が、そのまま明後日の方向に目を逸らした。
まぁいい。今はアレク君達もいるからな。彼らに免じて今のところは勘弁してやろう。
だが、後でキチンと返してもらうからな?




